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臓器移植について

腎不全と透析

腎不全の治療法-原因疾患と腎不全に至る経過・状態

腎不全治療の考え方

慢性腎不全は治療によって治る(根治して元の状態に戻る)ということはありません。腎不全が進行していくと最終的には腎臓の機能が極度に低下して、透析が必要になります。
腎不全の進行をできるだけくい止め、透析に至らないよう、あるいは透析開始をできるだけ遅らせるようにすることが治療の第一の目的です。そのために有効なのが食事療法です。
また、腎不全を起こす原因となる病気の治療、腎臓機能の低下で起きるさまざまな症状を改善するため、薬による治療もあわせて行います。

〔食事療法〕
 腎臓病の食事療法の基本は、たんぱく質と塩分を制限し、エネルギーは不足しないよう確保することです。
 食事療法は医師、栄養士の指導を受けながら、家庭で患者、およびその家族が主体となって行います。たんぱく質の量、エネルギー量はその人の病状、体格や生活に応じて1日当たりの量が決まります。食塩の量は人による差はありません。

たんぱく質の制限

たんぱく質が代謝されてできる老廃物は、腎臓で濾過されて尿になります。腎臓の機能が落ちると、老廃物がうまく濾過されなくなります。このため、糸球体に負担がかかって、糸球体の破壊が進行します。また、体内に老廃物がたまるとさまざまな問題が起きます。腎臓病の治療のためには、まずたんぱく質の摂取を減らすことがもっとも重要になります。

  • 日本人の成人のたんぱく質所要量は1日あたり男性で65~70g、女性で55gです。
  • 摂取量は日本人の平均で1日約80gになっています。
  • たんぱく質を制限する食事療法では、1日25g~70gの範囲に制限します。
  • 日本腎臓学会の慢性腎不全患者のたんぱく質摂取量基準は、以下の通りです。
    1日あたり標準体重1kgについて 0.6g以上0.7g未満
    ただし、クレアチニンクリアランス 50ml/分以上で尿たんぱく1g/日以下の場合は 0.9gで開始してもよい。
  • 標準体重は身長から計算されます。
    例:身長160センチの場合
    標準体重=身長(m)の2乗×22=56.3kg
    1日のたんぱく質摂取量は
    0.6gの場合 56.3×0.6=33.8g
    比較的軽度では
    0.9gの場合 56.3×0.9=50.7g

たんぱく質を制限するには、肉や魚を減らせばよい、という単純な話ではありません。たんぱく質は肉や魚、卵、乳製品に含まれているだけではなく、大豆製品はもちろん、ごはんやパン、野菜、果物にも含まれています。たんぱく質をまったく含まない食品は砂糖と油脂のみです。
普通の食生活をしていると、主食となる米を中心とした穀物のたんぱく質の量が4分の1から5分の1と、かなりの割合を占めています。しかしたんぱく質の量が1日40gなどと低く制限された場合、穀物を同じだけ取っていると、肉、魚、卵などの良質のたんぱく質に回す分が減ってしまいます。
しかしながら、穀物の量を制限すると、エネルギーが不足してしまいます。たんぱく質を抑えて、なおかつ必要なエネルギーを取る方法として、たんぱく質の含有量を低くした特殊な治療用食品がつくられています。エネルギー量はほぼ同じで、たんぱく質の量が低く抑えられています。
食事療法ではたんぱく質の制限が厳しい場合、主食の全部または一部をこうした食品にかえることが基本となっています。それによって、たんぱく質のやりくりが楽になり、多様な食品をとることができます。

たんぱく質調整食品

低たんぱくごはん(レトルトなど調理済みのごはん)は、たんぱく質の量が通常の3分の1や5分の1に抑えられているもので、数種類の製品があります。たんぱく質の制限がそれほど厳しくない人に向いています。他にうどん、そば、ラーメンなどがあります。

でんぷん製品

小麦やとうもろこしのでんぷん粉から人工的に作ったものです。たんぱく質はごく微量しか含まれないので、たんぱく質の制限が特に厳しい人に向いています。います。米は「でんぷん米」といいますが、本物の米ではありません。他にうどん、もち、スパゲティがあります。

表1.通常の穀物と治療用食品のたんぱく質の比較(100gあたり)
  たんぱく質 エネルギー
ごはん 通常のごはん 2.6g 168kcal
低たんぱくごはんA 0.1 162
低たんぱくごはんB 0.5 162
低たんぱくごはんC 0.8 157
通常の白米 6.1 356
でんぷん米 0.3 346

※「ごはん」は炊飯済みのもの、「米」は炊飯前の状態を指す

エネルギー量

たんぱく質を抑えた食事をしているとき、エネルギー量が不足すると、体をつくっているたんぱく質がエネルギーとして使われてしまい、老廃物が増えることになります。したがってエネルギーが不足しないよう注意する必要があります。
日本腎臓学会の基準では「標準体重1kgあたり35kcal、ただし年齢、運動量によって28~40kcalの範囲」となっており、体重60kgの人を例にあげると、基準量は2,100kcalとなり、年齢・運動量を加味して、低い場合は1,680kcal、高ければ2,400kcalとなります。
たんぱく質のところで見たように、たんぱく質を抑えた食事をすると、エネルギーが不足しがちです。そのため、主食には低たんぱくの食品を使用しますが、それでもエネルギーが不足するときはMCT(中鎖脂肪酸)製品などの治療用食品で補充します。

食塩の制限

食塩の量は1日あたり7g以下とされています。これには調味料として加える塩、しょうゆ、みそなどの他に、食品中に含まれている食塩も含みます。
塩やしょうゆをなるべく使わないためには、香辛料を利用したり、酸味で味つけするなどの工夫をします。減塩しょうゆ、減塩みそ、減塩ソースなどの調味料もあります。

※一般の人の食塩の量は、高血圧予防の観点から1日10グラム未満が望ましいとされています。

リン、カリウム

低たんぱく質食を行っていれば、リン、カリウムの摂取量も減るので通常は制限しません。ただし、血中のリン、カリウムの量が増加した場合は制限します。

糖尿病性腎症の食事療法

糖尿病性腎症の場合は、糖尿病に対する食事療法に腎臓病に対する食事療法を病期に応じて段階的に追加していくので、栄養基準は別に定められています。糖尿病では血糖値のコントロールのため、エネルギー量を制限しますが、腎臓病ではたんぱく質を制限してエネルギー量は確保するのが基本ですから、対応は一層難しくなります。

表1.通常の穀物と治療用食品のたんぱく質の比較(100gあたり)
病期 総エネルギー たんぱく質 食塩 カリウム
第1期(腎症前期) 25~30kcal/kg 制限せず 制限せず  
第2期(早期腎症) 25~30 1.0~1.2g/kg 制限せず 制限せず
第3期A(顕性腎症前期) 25~30 0.8~1.0 7~8 制限せず
第3期B(顕性腎症後期) 30~35 0.8~1.0 7~8 軽度制限
第4期(腎不全期) 30~35 0.6~0.8 5~7 1.5

食品の量の計算

食事療法を行うには、エネルギー、たんぱく質、食塩の基準の量を守りながら、4つの食品群からバランスよく食品を取ることが大切です。最初に病院の管理栄養士から、基準量にしたがって、主食、魚・肉・卵、野菜、いも、果物などの食品を何グラムくらい取ったらよいか、目安が示されます。

食品成分表

理想的には食品成分表(食品100gあたりのエネルギー、たんぱく質、他あらゆる栄養素の含有量が記載されています)を使って、計算するのがもっとも正確です。使う食材や調味料の重量を正確に計り、含まれているエネルギー、たんぱく質、食塩を計算します。そして、1日に摂取する食品の合計が基準量におさまるよう調整します。

腎臓病食品交換表

食事療法で使用する食品の計算をするのに、「腎臓病食品交換表」を使う人もいます。これはたんぱく質3gを1単位とし、いろいろな食品の1単位(たんぱく質3gを含む)が何グラムに当たるかを表したものです。また食品を6つの群に分け、それぞれの群で1単位の平均エネルギー量が示されています。食品ごとにたんぱく質とエネルギーの両方を簡便に計算できるようにしたものですが、誤差もあります。

継続することが重要

食事療法をきちんと実行すれば、腎不全の進行を遅らせることができるという事実が明らかになっています。しかし実際には毎日、計量、計算をして、たんぱく質やエネルギーの基準量に合わせた食事を作ることは、かなり大変な作業です。家庭で行うことはなかなか難しく、諦めてしまったり、うまく行かない人も多いようです。
食事づくりを担当するのは患者本人の場合も家族の場合もありますが、病院の医師、栄養士の指導を継続的に受けながら、自分/家族の腎臓を守るという強い意志をもって、自分に合った方法を工夫していくことが必要でしょう。慣れればどんな食品をどのくらいの量使うのが適当か、自然と把握できるようにもなることも可能です。
また、腎臓病用のレトルト食品、食事の宅配などを利用する方法もあります。あまり負担にならないようにしながら、着実に続けていくことが大切です。

薬物療法

薬物療法では、腎不全の進行を遅らせるため、また腎臓の機能が衰えたため起こる症状を改善するために、いろいろな薬が使われます。

  • 血圧を下げる薬
    腎臓が悪くなると高血圧になりやすく、高血圧によって腎臓の細動脈が硬化し、腎臓の働きがさらに悪くなるという悪循環に陥ります。血圧を下げるため、塩分の制限とともに降圧薬を使用します。降圧薬にはカルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、降圧利尿薬など、いろいろな種類があります。
  • 糸球体の硬化を防ぐ
    降圧薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬には、糸球体の硬化を防ぐ作用もあります。また抗血小板薬、抗体凝固薬は糸球体内の血液の凝固を抑制し、硬化を防ぎます。
  • 貧血を改善する
    腎臓が分泌するエリスロポエチンというホルモンは赤血球をつくるのに役立っていますが、腎臓機能が低下すると分泌が減り、貧血になります。このためエリスロポエチン製剤を使用します。鉄剤もあわせて使用します。
  • 骨の障害を防ぐ
    腎不全ではビタミンDの活性化が阻害される結果、骨がもろくなります。これを防ぐために活性型ビタミンD剤を使用します。カルシウム製剤も同様に使われます。
  • 血液が酸性に傾くのを防ぐ
    腎臓が悪くなると体液が酸性に傾き、問題を起こします。アルカリ化薬を使用してpHを正常に戻します。
  • カリウムを除去する
    腎臓が悪くなるとカリウムの排泄が低下し、血中のカリウム値が高くなって心臓に障害を起こします。このため高カリウム治療薬を使用してカリウムを排泄します。
ノバルティスダイレクト

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