腎不全と透析
血液透析、CAPDについて-透析の種類・方法とQ&A
透析
腎臓は体に不可欠の働きをしていますから、末期腎不全になって腎臓がほとんど働かなくなったら生きていくことはできません。体の血液を浄化する働きを腎臓に代わって行う人工的な方法が透析です。透析によって生命を維持することができ、ある程度までは普通に生活することが可能になります。しかし、透析によって腎臓の機能が回復するわけではなく、生涯透析をやめることはできません。透析から解放されるのは、腎臓移植が成功する場合だけです。
透析では腎臓の機能を完全に代替することはできません。透析を長く続けるほど合併症としてさまざまな問題点が生じてきますが、20年以上も透析を続けている人が約12,000人、最長の人は35年を超えています。
透析の2つの方法
透析の方法は大きく分けて、血液透析と腹膜透析の2つがあります。血液透析は機械に血液を通して濾過するもので、腹膜透析は自分のおなかの膜を濾過装置として使います。血液透析を行っている人が圧倒的に多く、慢性透析患者約22万人のうち、腹膜透析を受けている人は9,000人未満にすぎません(2001年12月末現在)。
血液透析の実際(図)
- 透析を行う機械に血液を循環させます。腕の血管に針を刺し、チューブを通して体の外に血液を取り出し、ポンプを使ってダイアライザー(透析器)に循環させた後、体に戻します。ダイアライザーは透析膜の細い管(直径0.2~0.3ミリ)を約1万本束ねたもので、管の中を血液が流れ、周囲には透析液が流れています。この多数の管の細かい穴を通して老廃物や水分、食塩、電解質などが透析液の側に移動します。こうして不要なものがこし出され、血液は浄化されます。浄化された血液は体に戻ります。
- 血液透析は週3回程度、透析を行う医療機関に通院し、専門のスタッフによって1回4~5時間かけて行います。
- 仕事と両立できるよう夜間に行う医療機関もあり、約2割の人は夜間に透析をしています。
- 自宅に機械を置いて、自分や家族の手で家庭透析を行う人も少数ながら(約100人)います。
内シャントとブラッドアクセス(図)
血液透析を行うには1分間に約200ミリットルの血液をダイアライザーに循環させる必要があります。これだけの血液量を確保するため、手首近くの腕の動脈と静脈を手術でつなぎ合わせることによって、血管を太くします。これを内シャントといい、血液の取り出し口をブラッドアクセスといいます。内シャントは手術後2週間ぐらいたってから使用することが望ましいので、計画的に手術を行います。
内シャントを長期間使用していると、血管がつまったり細くなって使えなくなることがあります(シャント障害)。日常、内シャントを圧迫したり衝撃を与えないよう、注意する必要があります。
内シャントがつくれない人や、つまった人には動脈直接穿刺や足の付け根の静脈にカテーテルを入れて、ブラッドアクセスにする方法が使われます。
ドライウェイト(透析時基本体重)と体重の変動
透析を受ける患者さんは尿がほとんど、あるいはまったく出ない状態なので、摂取した水分は体にたまり続け、その分体重が増加します。透析を受けると体にたまった余分な水分を除くので、その分体重が減りますが、水分の除去が過剰になっても不足してもいけません。体の中の水分が適正な状態をドライウェイトといい、この体重を基本にして水分を除去します。
透析の間の体重の変動は、中1日で体重の3%以内、中2日で体重の5%以内にすることが原則です。
長期透析の合併症
日本の透析医療は大変進歩していますが、腎臓の機能を完全に代替することはできないので、さまざまな合併症が出てきます。個人差がありますが、一般に次のようなものが知られています。
- 骨の障害
腎不全のためビタミンDの活性化が障害され、カルシウムが吸収されにくくなる。また血液中にリンがたまり、透析では除去しにくい。このため、骨がもろくなる。
- 透析アミロイドーシス
透析で十分に取り除けない物質(たんぱく質の一種)がアミロイドという物質に変化し、骨や関節に沈着する。痛み、しびれ、関節が曲がりにくいなどの症状を起こす。代表的なものが手根管症候群。
- 動脈硬化
透析患者は動脈硬化が進みやすい。
- 心不全
体の水分量が透析毎に大きく変動するため、心臓に大きな負担をかけ、働きが悪くなる。
- 感染症
免疫力が低下し、感染症にかかりやすい。
- 悪性腫瘍
悪性腫瘍の発生率が一般より高い。
血液透析の問題点
- 週3回通院し、1回4~5時間拘束される。
- 針を刺すので痛い、針の跡ができる。
- 透析中、血圧の下降、筋肉のけいれん、頭痛、吐き気などが起きることがある
- 透析前後で体調の変動が大きい。
- 食事制限が厳しい。
特にカリウムの多い果物、生野菜を制限する必要がある。
- 抗凝固剤(血液を体外に出すので、凝固を防ぐため)を使うので、透析中、および透析後しばらく出血しやすい。
- かゆみが起きる人が多い。
- 長く透析を続けているとさまざまな合併症が起きる。
腹膜透析の原理(図)
透析の装置として、機械ではなく自分の体の中にある腹膜を使う方法です。腹膜はおなかの内面にあって、胃や腸などの臓器を覆っている薄い膜です。その面積は成人で20,000平方センチ以上あり、毛細血管が表面に網の目のように分布しています。この膜を透析膜として使用し、おなかの中に管(カテーテル)を通して透析液を入れておくと、血液中の老廃物や不要な水分、電解質などが透析液の中ににじみ出てきます。一定時間たつとこの液を体外に排出し、新しい透析液を入れます。
カテーテル手術
透析液を出し入れするため、最初にカテーテルというチューブ(直径約5ミリ)をおなかの中に埋め込む手術をします。感染を予防するため、毎日カテーテルケアをして、出口の部分とカテーテルを常に清潔に保っておく必要があります。
CAPD
- 腹膜透析ではCAPD(持続携帯式腹膜透析)という方法が一般的に行われています。
- CAPDを行う上で必要なことは透析液の交換ですが、自宅や外出先で自分で行います。交換は6~8時間ごと、1日4回程度(通常は朝、昼、夕方、寝る前)です。
- 透析液は1回毎に必要な分量(2リットル)ずつ、袋に入っています。まず、おなかの中に入っていた透析液をカテーテルから空の袋に排出し、その後、新しい透析液の入った袋からカテーテルを通しておなかの中に入れます。交換には30分くらいかかります。
- 透析液の交換は清潔に注意します。自宅、勤務先などの清潔な場所で、手洗いを十分に行い、決められた手順をきちんと守ることが重要です。
- 1日1回、夜寝ている間に機械(自動腹膜透析装置)を使って自動的に腹膜透析を行うAPDという方法もあります。
- CAPDを行うには、まずカテーテルを入れる手術を受け、2週間ぐらい入院している間にバッグ交換などの操作の指導を受け、習得してから退院後は自分自身の手で行います。
CAPDの長所(血液透析との比較)
- 血液透析に比較して通院して時間的に拘束されることが少なく、職場や学校と両立させたい人に向いている。
- 透析液交換は1日4回だが、自宅や勤務先で自分のスケジュールでできる。
- 通院は月1回程度。
- 血液透析に比べ、食事制限がゆるい。
- 透析液を交換する時以外は連続的に透析が行われているので、体調が変動しない。心臓、血管への負担が少ない。
- 自分の尿が出る期間が血液透析より長い。尿が出ることで、透析では十分排泄されない物質が排泄できる。
CAPDの問題点(血液透析との比較)
- 手術してカテーテルを体内に入れて置かなければならない。
- カテーテルの先端部がおなかから出ているためわずらわしさ、外見上問題がある。
- カテーテルが原因で腹膜炎になることがある。
- 透析液の交換、カテーテルのケアなどの操作に手間がかかる。
- おなかに透析液を入れるため、重い感じやおなかがふくれる感じがある。
- 交換用の透析液は定期的に自宅へ届けられるので、保管場所を整備し、きちんと管理する必要がある。
- 腹膜透析は腹膜の機能が衰えればできなくなる。この場合、血液透析に移行しなければならない。
- 血液透析に比べて普及度が低い。実施している医療機関が血液透析に比べると少ない。
血液透析とCAPDの栄養基準(1日量)(日本腎臓学会)
| |
血液透析 |
CAPD |
| エネルギー |
標準体重*1kgあたり
30~35kcal |
標準体重*1kgあたり
29~34kcal
透析液から吸収されるブドウ糖のエネルギー量を含む |
| たんぱく質 |
標準体重1kgあたり
1.0~1.2g |
標準体重1kgあたり
1.1~1.3g |
| 食塩 |
現体重1kgあたり
0.15g |
CAPD除水量(1)×7.5
出た尿の量100mLあたり0.5g追加 |
| カリウム |
1.5g |
2.0~2.5g |
食事外の水分
(食事時のスープ、お茶などを含む) |
現体重1kgあたり
15mL
尿が出る場合は、出た分の水分を追加できる |
CAPD除水量と同じ出た尿の量を追加 |
| リン |
700mg |
700mg |
| カルシウム |
600mg |
600mg |
※標準体重(kg)=身長(m)の2乗×22
Q&A
- 血液透析をしていて入浴するときはどうしますか。
透析当日は針を刺しているのでひかえるか、その部分を保護して入ります。
- 腹膜透析の人が入浴するときはどうしますか
カテーテルの部分を保護する処置をして入ります。必要な保護パックが市販されています。
- 腹膜透析で出る廃液と袋はどうするのですか
液はトイレに流します。袋はゴミとして出しますが、自治体によって扱いが違うので注意が必要です。
- 血液透析中はじっと寝ていなければいけないのですか
安静を保ちますが、音楽を聞いたり、本を読むことはできます。食事をする人もいます。
- 就寝中の自動腹膜透析では、動いても大丈夫ですか
機械につながれていますが、かなり動いても問題はありません。
- 透析をしていると旅行に行けないのですか
血液透析の場合、旅行中透析が必要になる日程の場合は、現地で透析を受けられるよう手配する必要があります。透析の時間をスケジュールに入れ、行き先の透析施設に予約しておきます。
腹膜透析の場合は、必要な量の透析液バッグ、その他の器材を持参するか、旅行先に送っておけば、透析を行うことができます。
どちらの場合も、旅行会社の透析者向けツアーもあり、また個人で海外旅行をする人もいます
- 家庭で血液透析ができるのですか
透析の機械を家庭に設置して行います。機械の操作や針を腕に刺す処置は自分か、あるいは介助する人が行います。そのために病院で1~3カ月、十分な訓練を受ける必要があります。透析施設への通院が大変な人には有利ですが、指導管理をしている医療機関が少なく、2001年末現在、全国で約100人しか実施していません。費用は機械のリース料を含め、一般の血液透析と同様、自己負担はありません。