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臓器移植について

腎不全と透析

腎臓移植とは-腎臓移植の種類と現状

腎臓移植は、末期腎不全で腎臓が機能しなくなった患者に他人の腎臓を移植し、その人の腎臓として働くようにさせる医療です。移植が成功すれば腎臓は正常に機能し、免疫抑制剤を飲む以外は普通の人と同じように生活することができます。
腎臓移植を行うには腎臓が提供されることが前提です。だれから腎臓を提供されるかによって、死体腎移植と生体腎移植に分けられます。

死体腎移植とは

本来臓器移植は、事故や脳血管の病気などで脳に損傷を受けた結果、脳死となったけれども臓器は無事であるという人から、臓器の提供を受けて移植するものです。これは「脳死は人の死である」という考え方を前提としています。この場合のドナー(臓器提供する人)を死体ドナーといいます。

死体ドナーから腎臓提供を受ける移植を死体腎移植といいます。死体腎移植には、脳死となっても人工的に心臓を動かし続けている状態で腎臓を摘出し、移植する「脳死下腎臓移植」と、脳死を経て心臓が停止してから腎臓を摘出し移植する「心停止下腎臓移植」があります(※心停止下の腎臓提供は、本人がドナーカードを持っていなくても、生前反対していなければ家族の承諾で可能です)。ひとりのドナーから腎臓が2個とも提供されれば、ふたりの人が腎臓移植を受けることができます。

少ない臓器提供

死体腎移植は臓器移植法の下で(社)日本臓器移植ネットワークが厳密に管理しています。臓器の提供、移植をネットワークの枠外で個人的に行うことはできません。
死体腎移植を希望する人は、移植を実施する病院を通じて(社)日本臓器移植ネットワークに登録し、移植の機会を待つことになります。臓器の提供があった場合、登録者の中から、血液型一致などの条件を満たした上で、主にHLA型(白血球の型、型が合っていると移植成績がよい)の適合度と、待機期間(ネットワークに登録してからの期間)の長さをポイント化し、ポイントの高い人が選ばれます。
しかし、登録者が約12,000人いるのに対して、実際に行われている死体腎移植は2002年で122件とわずか1%にすぎません。臓器の提供があまりにも少ないので、残念ながら移植を希望しても実現する可能性は非常に低いのが現状です。

生体腎移植とは

生体腎移植は親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者から腎臓の提供を受けて移植します。腎臓はひとりに2個あり、ひとつになっても腎臓の機能に問題がないため、1個を取り出してレシピエント(移植を受ける人)の体に移植します。
生体腎移植は臓器を提供したい人、移植を受けたい人、それぞれの意思があり、医学的に問題がなければ、自由に医療機関で行うことができます。
日本では死体腎移植を受ける機会が非常に少ないため、確実に移植を受ける手段としては生体腎移植を選択するしかありません。しかし家族による腎臓提供は、あくまでも自発的な善意に基づくものであり、強制や圧力が働くことは望ましくありません。一方、移植を受けた側にも、提供してくれた相手に負担をかけたという負い目の感情が生ずる場合があります。健康な人の体から腎臓を取り出すという特殊な医療ですから、よく考えて慎重に決断する必要があるでしょう。

生体腎移植の実際

〔ドナー、レシピエントの条件〕

  • レシピエントが、移植手術に耐えられる体力があること。
  • ドナーが健康で、腎臓機能に問題がないこと。
  • 生体腎移植の場合、ドナー、レシピエントの年齢についての制限はありませんが、高齢になるほど条件は悪くなるので、一般には70歳ぐらいまでが目安とされます。
  • 双方に悪性腫瘍、感染症などの病気がないこと。
  • ドナーとレシピエントの血液型は、従来は適合していることが条件でしたが、医療技術の進歩で、不適合の場合でも移植が可能になっています。
  • HLA型も、死体腎移植では適合度の高い組み合わせが選ばれますが、生体腎移植の場合は適合しなくても行われます。
  • ただし、家族に提供希望者が複数いる場合は、血液型、HLA型の条件がよい人に提供してもらうことになります。

〔プロセス〕

移植手術前

  • レシピエント(候補)とドナー(候補)が、腎臓移植を実施している病院を受診します。その際、透析を受けている病院からの紹介状を持参します。
  • 医師やコーディネーターから移植について十分な説明を受けてから、移植を行う意思を確認します。
  • 意思が明確なら、ドナーとレシピエント双方に必要な検査、診察を行います。検査のため入院が必要になる場合と、数回の外来で検査する場合があります。
  • 検査の結果、医学的な問題がなければ、移植の実施が確定します。
  • 移植手術のスケジュールを決定します。

移植手術(図)

移植手術(図)

  • ドナーの片側の腎臓を摘出します。通常は機能のよいほうの腎臓を残します。
  • 摘出手術に内視鏡を使用している病院もあります。高度な技術を要しますが、従来よりはるかに小さい傷(5~7cm)ですみ、入院期間も短縮されます。
  • ドナーから摘出した腎臓はレシピエントの下腹部に据えられ、血管と尿管を縫いつけられます。レシピエント自身の腎臓は通常、そのままにしておきます。
  • 生体腎移植では、手術中か手術直後から腎臓が働いて尿が出始めます。

手術後の入院と通院

  • 病院によって違いますが、ドナーは約2週間入院し、レシピエントは問題がなければ約4~8週間入院します。
  • 退院後は、特に問題がなければ当初週1回の通院、その後、2週間に1回の通院となり、最終的には月1回の通院となります。

移植後の免疫抑制剤

  • 移植医療とは、臓器を移植する手術だけで終わるのではありません。人間の体には、体内に入ってきた異物を排除しようとする働きが備わっているので、そのままでは他人からもらった臓器に対して拒絶反応を起こし、臓器をだめにしてしまいます。拒絶反応を防ぐため、移植を受けた人は免疫抑制剤を服用しなければなりません。
  • 免疫抑制剤には多くの種類がありますが、通常、複数の薬を併せて使います。免疫抑制剤は免疫反応を抑える働きをしますから、逆に感染症にかかりやすくなる危険があり、特に肺炎が問題になります。また免疫抑制剤自体の副作用もあるので、使用量が多すぎてもいけません。このバランスを取ることが非常に大切で、高度に専門的な知識経験を必要とする医療です。
  • 移植後、3カ月をすぎると安定期に入り、免疫抑制剤の使用量は減少します。さらに年月がたつと、より少量ですむようになります。
  • 免疫抑制剤は1980年代に新しい強力な薬剤が普及したことにより、移植の成績が大幅に改善され、世界的に移植医療が発展しました。近年は、さらに新しい薬剤が開発されており、薬剤の使い方の進歩、他の医療技術の進歩とあいまって、経験豊かな医療施設での移植成績は飛躍的に向上しています。

生体腎移植におけるドナー、レシピエントの拡大

死体腎移植において提供される腎臓は大変貴重なものですから、最大限生かすために移植を希望する膨大な数の候補者の中から、もっとも適した条件、もっとも優先すべき人が選ばれます。
生体腎移植では、移植を受けたい人と、臓器を提供できる人が最初から決まっているわけですから、条件がよい組み合わせばかりではありません。
腎臓移植の水準は近年非常に向上し、血液型不適合、高年齢など、従来は移植の障害となっていた要因もかなりの程度克服されるようになり、ドナー、レシピエントの幅が広がっています。

腎臓移植の数(日本とアメリカ)

日本では移植が始まって以来2002年までに、生体腎移植11,551件、死体腎移植4,107 件、合計15,658件が実施されました。ここ数年は死体腎移植の数が低迷している情勢を反映して、生体腎移植の数は増える傾向にあり、2002年の634 件は過去最高を記録しました。また、この年の生体腎移植の比率84%も過去最高です。(死体腎移植が本格化した1981年以降)
アメリカでは2002年に14,776件と、日本の約20倍の数の腎臓移植が行われています(人口は約2倍)。そのアメリカでも近年、生体腎移植の数が急増しており、1994年には約3,000件(全体の28%)だったのが、2002年には約6,200件と倍増し、全体の42%に達しました。

図(移植数)(臓器移植ファクトブック2003年)

図(移植数)(臓器移植ファクトブック2003年)

成績、生着率(臓器移植ファクトブック2003年)

腎臓移植の成績は「生着率」で表します。これは移植後一定期間たった時点で、どのくらいの腎臓がレシピエントの体内で機能し続けているか、という割合です。

下の表では上の段が、1997年までに行われたすべての移植のうち、調査可能なもののデータです。下の段は比較的新しい1983年以降のデータです。最近のほうが成績が向上していることが分かります。

表.腎移植の正着率

生体腎移植の生着率
  1年 5年 10年 15年
~97年 89% 73 54 41
83~97年 93% 77 56 40
死体腎移植の生着率
  1年 5年 10年 15年
~97年 78% 59 43 31
83~97年 82% 63 46 35
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