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臓器移植について

腎不全と透析

腎臓移植と透析療法-それぞれのメリット・デメリット

腎臓移植の長所と問題点

まず、腎臓移植について特徴を簡単にまとめてみましょう。

[長所]

  • 透析から解放される。
  • 腎臓機能が正常に回復。免疫抑制剤を飲む以外はほぼ普通の生活ができる。
  • 実際にかかる医療費(自己負担ではない)は手術時と直後に多いが、安定期の費用は透析より安い。

[問題点]

  • ドナーが必要、希望してもだれでも受けられるわけではない。
    ‐死体腎移植は臓器提供が少なく、受けられる可能性は非常に低い。
    ‐生体腎移植の場合、家族の提供が必要。
  • 移植手術を受けるリスクや負担が大きい。
  • 移植後は免疫抑制剤を飲み続ける必要がある。
  • 移植後の合併症が起きる。
  • 移植した腎臓がだめになることがあり、その場合は透析に戻らなければならない。

移植と透析の比較

末期腎不全に対する治療法として透析と移植という2つの医療がありますが、日本では移植を受ける人が非常に少なく、透析を受ける人が圧倒的に多くなっています。透析と移植はまったく性格の違う医療ですが、比較を試みるために、現に透析を受けている患者と、腎臓移植を受けた元透析患者がどう感じているのか、以下に見ていきます。

〔透析患者の透析と移植に対する意識〕

2001年度血液透析患者実態調査報告書(社団法人全国腎臓病協議会)より(調査は2001年10月実施/有効回答:8,549)

表1.透析患者の腎臓移植希望の有無(%)
  希望 医師の勧めで希望 医師の勧めで考える 希望しない 分からない 無回答
29歳以下 45.1 5.6 11.3 23.9 12.7 1.4
30歳代 38.1 5.1 7.1 31.6 17.4 0.8
40歳代 29 4.6 9.2 42 14.4 0.8
50歳代 16.2 4.5 8.7 57.9 11.5 1.2
60歳代 6.8 5.3 10.3 64.8 10.8 2
70歳代 3.6 5.3 5.9 73.5 8.9 2.8
80歳以上 2.6 5.1 6.273.8 9.7 2.6

透析患者で腎臓移植を希望する人の割合は年齢によって非常に違います。20歳代以下で45%、30歳代で38%の人が希望しているのに対して、40歳代では希望しない人の割合が42%と、希望する人を超え、50歳代になると希望しない人が60%近くに増えています。

表2.腎臓移植を希望しない理由(複数回答)
  1986年 1991年 1996年 2001年
透析療法がうまくいっている 39.5% 43.3% 51.1% 50.6%
移植の成績があまりよくない 28.6 23.9 23.8 21.9
年齢的に無理 53.4 49.2 54.1 52.4
費用が心配 11.4 7.9 10.7 11.6
他人の臓器提供を受けたくない 8 9.2 9.4
移植の機会が少ない 17
登録料と更新料がかかる 4.1
その他 11.3 9.6 14.9 13
無回答 2 1.2 0 0

移植を希望しない理由として、もっとも多くの人が挙げているのは年齢ですが、ついで約半分の人が「透析がうまくいっているから」という理由を挙げています。「透析がうまくいっているから」という人の割合は1986年に40%弱だったのが、2001年では50%を超えていますから、透析医療の進歩を反映しているものと考えられます。
他に、移植の成績があまりよくない、という理由が約20%、移植の機会が少ないという理由(※前回までの調査では回答項目になかった)は17%の人が挙げています。

表3.透析患者の体調(%)
  男性 女性
よい 18.3% 15%
まあふつう 26.1 26.7
ふつう 37.8 38.3
あまりよくない 14.5 16.2
よくない 1.8 2
表4.現在受けている透析方法への満足度
  かなり満足 どちらかといえば満足 どちらかといえば不満 かなり不満 無回答
29歳以下 23.9% 52.1 19.7 2.8 1.4
30~39 29 56.8 12.1 1.3 0.8
40~49 28.1 58.5 10.6 1.5 1.3
50~59 34.8 54.4 8.2 0.9 1.7
60~69 46 45.5 6.4 0.5 1.6
70~79 57.3 37.2 2.9 0.3 2.3
80歳以上 63.6 32.8 2.1 0.5 1
全体 40.5 49.6 7.4 0.8 1.6

体調については「普通」ないし「よい」という人が80%を超えています。
「現在受けている透析方法への満足度」という質問は、透析を受けている現状への満足度を意味しているといえます。その結果は「かなり満足している」人と「どちらかといえば満足している」人の合計が全体で90%を超えるという、非常に高い満足度を示しています。

しかし年代別に見ると、年齢が若いほど不満を持つ人が多く、高齢になるほど満足している人が多くなるという傾向があります。これは、若い層ほど移植希望者の割合が多い、という事実とも合致しています。
日本の透析医療の水準は世界一といわれているだけに、体調も比較的よく維持され、透析に伴う不自由も、特に高齢になるほど意識しなくなっているものと思われます。全体として透析を受ける現状に満足している人が大多数となっています。

〔腎臓移植を受けた人の意識〕

では、透析患者の中から腎臓移植に踏み切った人たちは、どう感じているでしょうか。
日本移植者協議会による移植者実態調査より(2002年8月実施:回答者のうち腎臓移植者458人)

表1.腎臓移植を受けた人の移植に対する気持ち(回答425)
移植を受けてよかった 97.2%
移植を受けないほうがよかった 0.2
どちらともいえない 2.6
表2.腎臓移植を受けた人の受けてよかった理由(回答412、複数回答)
透析を受けなくてもよい 71.4%
食事・水分の制限がない 68.9
健常者と同じ生活ができる 63.6
時間の制約がない 60.7
移植後体調がよい 57
生きていることに感謝できる 51.7
生きる喜びがある 49.3
社会復帰ができた 36.9

腎臓移植を受けてよかったという人は97%に達しています。その理由としては、「透析を受けなくてもよい」がもっとも多く、腎臓移植の効果はここに集約されます。「食事・水分の制限がない」、「時間の制約がない」も透析から解放されることに伴います。

表3.腎臓移植後の健康状態(回答418)
まったく健康 50人 11.8%
ほぼ健康 256 61.3
どちらともいえない 72 17.3
体調が悪い 35 8.4
体調が非常に悪い 5 1.2
表4.腎臓移植を受けた人の透析中の体調(回答422)
よかった 83人 19.7%
普通 200 47.4
悪かった 116 27.5
非常に悪かった 23 5.5
表5.移植後の社会復帰の状態(回答416)
健常者とほとんど変わらない 161 38.6%
健常者には劣るがほぼ普通の生活 215 51.6%
どちらともいえない 12 2.9
あまり社会復帰しているとはいえない 20 4.8
ほとんど家もしくは病院にいる 9 2.2

移植を受けた後の健康状態は、「まったく健康」、「ほぼ健康」の人が計73%、「体調が悪い」と「体調が非常に悪い」という人は合わせて9.6 %です。同じ人たちの透析中の体調は、「悪かった」と「非常に悪かった」の合計が33%となっています。

移植後に「体調が悪い」「非常に悪い」と答えた40人の理由として、合併症、合併症以外の病気、拒絶反応があげられ、うち透析に戻った人が2人、まもなく透析に戻るという人が5人いました。

移植は100%の人で成功するわけではありませんが、大多数の人は体調もよく、普通の生活に戻っていることが分かります。
末期腎不全の治療法として、本来、透析と腎臓移植は2つの選択肢です。クオリティ・オブ・ライフの点では透析より移植のほうがすぐれており、欧米先進国では腎臓移植は通常の医療として位置づけられています。しかし、日本では死体腎移植を受ける機会があまりに少ないため、多くの人にとって腎臓移植を治療の選択肢と考えられない状況になっています。

1995年の日本腎臓移植ネットワーク発足、1997年の臓器移植法施行による脳死臓器移植の解禁、日本臓器移植ネットワークの発足と一連の法制度整備を経て、日本での移植医療の発展が期待されましたが、現実には臓器提供は非常に少ないままです。

社会に臓器移植への理解が浸透して臓器提供が増え、腎臓移植がより普通の医療になることが望まれますが、それまで待てない人にとっては、生体腎移植がひとつの解決となっているのが現実です。

透析の医療費、移植の医療費

<透析の医療費>

健康保険が適用されますが、自己負担分について患者の負担を軽くする特別の制度があります。
「長期特定疾病療養」(公費負担制度、人工透析など指定された病気治療が対象)制度によって、本人から保険者に申請して「特定疾病療養受領証」を取得すると、自己負担分が月1万円まで軽減されます。

さらに、その自己負担分1万円に対して、次のような制度があります。
身体障害者手帳を取得(透析患者はおおむね身体障害者1級)することによって、身体障害者に対する公費医療負担、医療費助成が受けられます。更生医療は23%の人が、自治体の重度障害者医療費助成制度は約80%の人が受けています(2001年度血液透析患者実態調査報告書)。結果として、自己負担はほとんどありません。

なお、18歳未満の子供に対しては、更生医療に代わる育成医療、あるいは小児慢性特定疾病治療研究事業などの制度によって、同様に自己負担分への助成があります。ちなみに、実際に1人の患者にかかる透析の総医療費は年間500 万~600 万円といわれます。

<腎臓移植の医療費>

腎臓移植に関する医療費は健康保険の対象となっていますから、患者が支払うのは一定の割合の自己負担分のみです。その自己負担分も、以下のようなさまざまな制度によって大幅に軽減されます。

移植手術・入院
特定疾病療養費制度(人工透析患者を対象とする)によって、移植手術費用の自己負担分が月1万円まで軽減されます。また入院費用もこの制度、または次に述べる身体障害者への医療費助成によってほとんどカバーされます。

退院後の通院・免疫抑制剤の費用
透析患者が腎臓移植を受けた後も、身体障害者1級の資格は継続されます。
したがって身体障害者に対する更生医療、または重度身体障害者医療費助成制度の対象となり、自己負担分はかなり軽減され、無料になる場合もあります。自治体によって助成を受ける資格、助成の割合などは差があります。
移植者協議会の調査では、腎臓移植者の約70%が自己負担分なし(最近半年間の医療費について)と答えています。

なお、18歳未満の子供に対しては、更生医療に代わる育成医療、あるいは小児慢性特定疾病治療研究事業などの制度によって、自己負担分への助成があるのは、透析の場合と同じです。
ちなみに、実際にかかる医療費総額は医療機関や患者の状態によって異なりますが、一般的な例を挙げると、移植手術を含む最初の1年で400万円、2年目で年間150万円です。移植後、時間がたつほど減っていきます。

表.透析と移植の比較
  透析(主に血液透析の場合) 腎臓移植
医療を受ける機会、条件
  • 無条件
  • だれでも受けられる
  • いつでもすぐに受けられる
  • ドナーがいなければできない
    ‐死体腎移植ドナーは非常に少ない
    ‐生体腎移植はドナーに負担をかける
    (死体腎移植の場合)
  • 希望者の1%しか受けられない
  • いつ受けられるか分からない
医療を受けている人の数
  • 年間約3万人が新たに透析開始
  • 現在の透析患者計:約23万人
  • 年間計600件前後の腎移植数
  • 累計で15,000件あまり(2002年まで)
医療を受ける際の意識・負担
  • 導入は医師の指示による
    (自分の意思で決められない)
  • 開始後は日常的な医療となる
  • 自分の意思で決定
  • 大きな決断を要する非日常的医療
  • 入院・手術のリスク、肉体的精神的負担
    (レシピエント、ドナーとも)
継続性
  • 最長35年以上
  • 20年以上透析者も多数いるが10年生存率は約40%
  • 移植された腎臓がだめになる可能性あり。その場合透析に戻る。
腎臓機能(代替機能)
  • 腎臓の機能を完全に代替できない
  • 腎臓の機能は正常に戻る
生活する上での不自由、拘束
  • 頻繁な通院の負担
  • 時間の拘束大きい
  • 通常週3回×4~5時間の透析
  • 毎回、腕に針を刺す
  • 通院は月1回
  • 日常は拘束なく自由な行動が可能
  • 感染症に注意する
  • 免疫抑制剤の服用を続ける
水分・食事制限
  • 水分制限あり
  • 食事制限あり
  • 水分制限なし
  • 食事制限なし(健康的な食事)
合併症
  • 長期透析合併症
  • 透析時合併症
  • 拒絶反応
  • 感染症
  • 免疫抑制剤の副作用
旅行
  • 透析施設を予約、旅行中透析を受ける
  • 免疫抑制剤を持参
災害時
  • 透析を受ける機会、交通手段等を確保する
  • 免疫抑制剤を確保する
医療費、保険制度
  • 健康保険適用
  • 「長期特定疾病療養」制度でほとんど自己負担なし
  • さらに身体障害者への医療費助成で自己負担はほとんどなし
  • 身体障害者1級
  • 健康保険適用
  • 移植手術費用は「長期特定疾病療養」制度などで、自己負担は月1万まで
  • 退院後の通院、免疫抑制剤の費用は障害者医療費助成制度により自己負担分が補助される。無料になる場合も多い
  • 身体障害者1級(透析時から継続)
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