エビデンス:LIFE

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension
植田真一郎(琉球大学大学院医学研究科薬物作用制御学)

LIFE試験は従来の β 遮断薬をベースに、利尿薬を多くの患者で併用した降圧療法と、AIIAロサルタンにやはり多くの患者で低用量の利尿薬を組み合わせた治療の比較試験である。

目的と背景

これまでの高血圧臨床試験ではβ遮断薬と利尿薬の組み合わせが用いられ、プラセボとの比較において予後を改善することが報告されてきた。左室肥大は高血圧患者の臓器障害の一つであり、将来の心血管事故予測因子の一つである。この研究では左室肥大の発生、進展に関与するとされるアンジオテンシンIIの受容体拮抗薬がこれまでの降圧治療と比較してより予後を改善できるかを検討した。

対象症例

9,193名(年齢55〜80歳まで)の左室肥大(心電図による診断)を有する高血圧患者(座位血圧160〜200/95〜115mmHg)。糖尿病患者や高齢者収縮期高血圧での解析も発表されている。発生したイベントから考察すると、患者のリスクは中等度で、VALUE試験ALLHAT試験よりはリスクが低いが、CAPPP試験やINSIGHT試験と比較すると高リスクである。比較的一般外来でも遭遇する機会の多い患者が対象であるといえる。

評価項目(エンドポイント)

一次エンドポイントは心血管死亡、脳卒中、心筋梗塞をあわせたものである。二次エンドポイントは全死亡、脳卒中、心筋梗塞、心不全による入院、狭心症による入院、新規糖尿病発症、血行再建などで、心房細動の発生も評価している。

試験デザイン

患者をランダム化割付によりアテノロール群、ロサルタン群に分け、二重盲検法による並行群間比較を行った。

試験治療プロトコール

アテノロール群では50mg/日から開始し、降圧不十分ならば利尿薬ヒドロクロロチアジドを12.5mg/日追加した。さらに降圧不十分ならアテノロールを100mg/日に増量した。ロサルタン群も同様に50mg/日から開始し、降圧不十分ならば利尿薬ヒドロクロロチアジドを12.5mg/日追加した。さらに降圧不十分ならロサルタンを100mg/日に増量した。

試験治療プロトコールの臨床的意義

結果として利尿薬の併用は約8割の患者で必要であり、単なるロサルタンとアテノロールの比較ではなく、ロサルタン+低用量の利尿薬とアテノロール+利尿薬の比較となっている。このほうが単剤同士の比較よりも臨床的な意義が大きい。また臨床薬理試験ではARB単独で十分な降圧が得られない場合、ARBの増量よりも利尿薬の追加が降圧には有効という結果が出ており、本試験のプロトコールはこの結果に沿ったものといえる。

結果

  1. 血圧:血圧の下降はロサルタン群30.2/16.6mmHg(SD:18.5/10.1)、アテノロール群29.1/16.8mmHg(SD:19.2/10.1)であった。
  2. 心血管イベント:一次エンドポイント発生リスクはロサルタン群で13%低く(P=0.021)、とくに脳卒中リスクは25%低下(P=0.001)した。しかしながら心筋梗塞リスクは群間に差は認められなかった()。また新規心房細動の発生はロサルタン群で少なかった。
  3. 新規糖尿病発生:本試験では糖尿病発生をはじめから二次エンドポイントとして設定し、二重盲検法を用いているため、Kaplan-Meier曲線 を構成でき、信頼度はエンドポイントに設定していなかった試験と比較すると高い。結果としてロサルタン群では新規糖尿病発生リスクが有意に25%低かった (P=0.001)。

複合一次エンドポイント

表 複合一次エンドポイント

  • ※1 心血管死亡、脳卒中。心筋梗塞(最初の一次エンドポイント発症数)。
  • ※2 ランダム化割付時の非糖尿病患者での数(ロサルタン群4,019例、アテノロール群3,979例)。
  • ※3 /1,000人・年。
  • ※4 ランダム化割付時の左室肥大およびFraminghamスコアによる。

結論

左室肥大を有する高血圧患者においてロサルタンと低用量利尿薬の併用はこれまでのβ遮断薬+利尿薬併用による降圧と比較すると、脳卒中リスクを減少させる。また利尿薬の糖尿病発生リスクが危惧されているが、β遮断薬ではなく、ロサルタンとの併用によりそのリスクを減少させることが可能である。尿酸値、低カリウム血症発生頻度もロサルタン+利尿薬群で低く、この点からも、2剤は優れた組み合わせといえる。しかし心筋梗塞リスクに関してはロサルタンを用いることの有益性が証明されず、今後の課題である。

用語解説

VALUE試験:高リスク高血圧患者を対象に、バルサルタンとアムロジピンの比較を行った研究。

ALLHAT試験:高リスク高血圧患者を対象に、利尿薬とACE阻害薬、Ca拮抗薬、α遮断薬の比較を行った研究。

Recommended Readings

  1. Dahlf B et al : Lancet 359 : 995-1003, 2002
    (全患者対象の解析;本稿は本論文の解説)
  2. Lindholm LH et al : Lancet 359:1004-1010, 2002
    (糖尿病患者でのサブ解析;低カリウム血症リスクの低下はここに記載)
  3. Wachtell K et al : J Am Coll Cardiol 45 : 712-719, 2005
    (新規心房細動発生に関する解析)

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