エビデンス:VALUEとREAL VALUE

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

VALUE and REAL VALUE
熊谷裕生、鈴木重伸、尾田高志、兵頭俊武、東桂史、櫛山武俊(防衛医科大学校腎臓内科)

VALUE本試験は50歳以上の高血圧患者で危険因子が複数ある者に、バルサルタンとアムロジピンをランダムに投与した二重盲検試験である。REAL VALUE試験では6カ月の時点で単剤投与であった症例について解析した。心不全の新規の発症についてはバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に優れていた。

VALUE本試験

VALUE本試験1)は、The Valsartan Antihypertensive Long-term Use Evaluation trialの略で、ARBバルサルタンとCa拮抗薬アムロジピンが心血管事故に及ぼす影響を4年間比較した。

1.対象

50歳以上の高血圧(160〜210/95〜115mmHg)患者で、心血管系の危険因子のいくつかと少なくとも一つの疾患因子をもっている1万5,245人。

2.評価項目(エンドポイント)

一次エンドポイントは、心臓疾患による突然死、致死性急性心筋梗塞、PTCAおよび冠動脈バイパス手術の最中や術後の死亡、うっ血性心不全による死亡などの複合。二次エンドポイントは、致死性/非致死性心筋梗塞、致死性/非致死性脳卒中、致死性/非致死性心不全。事前に設定された解析として、総死亡と糖尿病の新規発症。

3.試験デザインと治療法

前向き、二重盲検、2アームの、ランダム化試験である。VALUEではハイリスク高血圧患者を対象としたため、ウォッシュアウト期間なしにバルサルタン1日80mgまたはアムロジピン1日5mgに切替えた。さらに140/90mmHg未満を目標としてそれぞれの倍量まで増量し、必要に応じてサイアザイド系利尿薬などが追加された。

4.結果

アムロジピン群のほうがバルサルタン群よりも降圧が大きく、最初の6カ月で4/2mmHgもの血圧の差がついた。アムロジピン群のほうがバルサルタン群よりも血圧が低かったが、しかしながら複合一次エンドポイントには全く差がなかった。
致死性および非致死性の脳卒中の発症はアムロジピン群がバルサルタン群よりも低い傾向が認められたが有意差はなかった。致死性および非致死性の心筋梗塞の発症は、アムロジピン群がバルサルタン群よりも有意に低かった。心不全による入院および死亡は、バルサルタン群で低い傾向にあったが有意差はなかった。
4年間における糖尿病新規発症はバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に低かった。VALUE本試験のサブ解析において2)、この4年間の降圧薬治療中に新しく糖尿病になった患者がうっ血性心不全を発症するハザード比は、糖尿病にならなかった患者と比較すると1.43(95%CI、1.16〜1.77)と有意に高かった。このように糖尿病患者では心疾患を発症する可能性が高いので、糖尿病を発症させる危険性が少ないバルサルタンで降圧することは意義が深いと考えられる。

REAL VALUE試験

1.目的

VALUE本試験は、早期にバルサルタン群とアムロジピン群の血圧の差が生じてしまい、また他の降圧薬を併用したことなどが心血管事故の発症に影響を及ぼした可能性があるため、解釈が難しかった。そこでREAL VALUE試験では、このバイアスを排除し純粋に両薬剤が単独で予後に及ぼす影響を検討する目的で、6カ月の時点で単剤投与であった症例について解析した3)

2.対象

VALUE本試験において薬剤調整期間が終了した試験開始から6カ月の時点で、バルサルタン単独またはアムロジピン単独にて治療が維持されていた7,080例(VALUE本試験の46%の症例数)。

3.試験方法

バルサルタン80mg/日、アムロジピン5mg/日から開始。140/90mmHg未満に到達しない場合は倍量まで増量した。

4.統計解析の手法

Censored,intention-to-treat.

5.評価項目(エンドポイント)

VALUE本試験と同。

6.結果

投与期間中の平均血圧は両群で同等であった。試験開始前の収縮期血圧約150mmHgから3カ月後に135mmHgまで低下し、最終的に133/77mmHgとなった。単独投与の平均期間は3.2年であった。
一次エンドポイントである複合イベントおよび二次エンドポイントである心筋梗塞、脳卒中、すべての原因による死亡の発症率は、バルサルタン群とアムロジピン群との間に有意差がなかった()。一次エンドポイントは4年から5年と追跡するうちにバルサルタン群において発症率が低くなる傾向がみられた。
一方、心不全の新規の発症率はバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に優れていた(ハザード比0.63)。しかも図のように、追跡期間が長くなるほど、バルサルタン群の心不全の新規発症はアムロジピン群と比較して低くなった。すなわち長期に服用するほどバルサルタンの臓器保護作用が強調されることが示された。糖尿病の新規発症についてもバルサルタン群がアムロジピン群よりも有意に低く(オッズ比0.78)、VALUE本試験と同様の結果であった。
心筋梗塞の発症について、VALUE本試験ではバルサルタン群のほうが高かったが、REAL VALUE試験では両群間に差が認められず、やはり血圧管理の程度が心筋梗塞の発症頻度に影響を及ぼすと考えられた。
脳卒中については、VALUE本試験と同様に、REAL VALUEでもバルサルタンはアムロジピンと同等であり、脳卒中発症の頻度が高いわが国において、臨床的価値が非常に高いと考えられる。

二次エンドポイントの比較

図 REAL VALUEの結果(文献3より引用)

References

  1. Julius S et al : Lancet 363 : 2022-2031, 2004
  2. Aksnes TA et al : Hypertension 50 : 467-473, 2007
  3. Julius S et al : Hypertension 48 : 385-391, 2006

ページの先頭へ戻る