エビデンス:CASE-J

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

Candesartan Antihypertensive Survival in Japan
荻原俊男(大阪大学名誉教授/大阪府立急性期・総合医療センター)

わが国初の研究者主導型の降圧薬に関する介入試験であり、第一次薬でも最も汎用されているCa拮抗薬アムロジピンとARBカンデサルタンのハイリスク患者における直接比較で注目され、結果は第21回国際高血圧学会(ISH2006 Fukuoka)で発表された。

目的と背景

Ca拮抗薬とARBの比較についてはVALUE試験がある1)。わが国では高血圧患者層の高齢化、高血圧合併症として脳卒中が多い。近年肥満、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)などメタボリックシンドローム関連合併例の増加などの背景から、わが国独自のEBM(evidence based medicine)が必要であり、とくにわが国で汎用されているアムロジピンとカンデサルタンに関する成績が必要とされていた。そこで計画されたのがハイリスク高血圧患者を対象としたCASE-J試験である2、3)

対象症例

ハイリスク高血圧患者、年齢20〜84歳、血圧値:既治療、未治療にかかわらず70歳未満では≧140and/or90mmHg、70歳以上では≧160and/or90mmHg。ハイリスクとは(1)重症高血圧(≧180/110mmHg)、(2)2型糖尿病、(3)脳イベント既往(6カ月以内除く)、(4)心イベント既往(6カ月以内除く)または左室肥大、(5)腎障害(蛋白尿または血清クレアチニン≧1.3mg/dL)など1項目以上を有する場合とした。結果的にカンデサルタン群2,364例、アムロジピン群2,364例の計4,728例を対象とした。

評価項目(エンドポイント)

一次エンドポイント:致死性、非致死性心血管事故の複合エンドポイント[突然死、脳卒中、TIA、心筋梗塞、心不全、狭心症(いずれも再発を含む)、腎障害(血清クレアチニン2mg/dL以上で倍増または4mg/dL以上の上昇、透析移行)、解離性大動脈瘤などのうち最も早期に発症したもの]。判定は独立したイベント評価委員によりPROBE法で行われた4)
二次エンドポイント:全死亡、心肥大の退縮(エコー検査)、脱落率。
事前に解析が予定された評価項目:糖尿病の新規発症、症例背景因子別のイベント発現率など。

プロトコール・治療法

登録症例はコンピュータにより背景因子が均等化されるよう2群にランダム化された。
カンデサルタン4〜12mg/日、アムロジピン2.5〜10mg/日投与、降圧不十分であれば利尿薬、β遮断薬、α遮断薬の併用は可とした。両群平均で1.5剤の投薬剤数であった。
降圧目標:JSH2000に従い、年代別に130〜160/85〜90mmHg未満としたが、結果的には各年代とも140/80mmHg未満が達成された。経過観察期間は3〜4.3年で平均3.2年、症例追跡率97.1%であった。

結果

両群とも140/80mmHg未満の降圧が得られた。カンデサルタン群163/90→134/76mmHg、アムロジピン群163/90→133/76mmHg(4年後)であり、経過中アムロジピン群は2/1mmHgのより有意な降圧が得られたものの、アウトカムにはこの差は影響せず、140/80mmHg未満に低下したことの意義が大きい。一次エンドポイント、二次エンドポイントのイベントでは両群で差がみられず()、全く同等であった。
背景因子による解析の結果、肥満者(BMI≧27.5)において、カンデサルタンはアムロジピンに比し49%のリスク低下がみられた。腎障害を有する(GFR<60mL/min/1.73m2)患者の腎イベントをカンデサルタンは有意に抑制した。心肥大退縮率については左室肥大例(登録時平均158g/m2)でカンデサルタン群は有意に心肥大を退縮させた。
糖尿病の新規発症:カンデサルタン群はアムロジピン群に比し36%の抑制を示した。さらにBMI別に検討すると肥満者ほどその抑制率は大であり、BMI≧27.5では62%の抑制がみられた。

CASE-J試験の主要エンドポイント(脳・心・腎・血管イベント)

図 CASE-J試験の主要エンドポイント(脳・心・腎・血管イベント)
(京都大学EBM共同研究センターNews Letter10.18,2006より引用改変)

結論

カンデサルタンとアムロジピンはともに、ハイリスク高血圧患者の血圧を厳格にコントロールでき、心血管事故を同等に抑制した。
肥満やCKDを伴う高血圧、メタボリックシンドロームを背景にした高血圧では、カンデサルタンの積極的適応が示唆された。

用語解説

研究者主導型臨床試験:主に薬剤そのものの有効性・安全性を検討する従来の製薬会社主導型治験とは異なり、主に多剤併用を含め臨床に即したさまざまな治療法の有効性を検討する。研究者・医師が主体となって実施する臨床試験。

Recommended Readings

  1. Julius S et al : Lancet 363 : 2022-2031, 2004
  2. Elliot WJ et al : Lancet 369 : 201-207, 2007

References

  1. Julius S et al : Lancet 363 : 2022-2031, 2004
  2. Fukui T et al : Hypertens Res 26 : 979-990, 2003
  3. Ogihara T et al : Hypertension(in submission)
  4. Hansson L et al : Blood Press 1 : 113-119, 2004

ページの先頭へ戻る