エビデンス:VALIANT

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。
※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。
Valsartan in Acute Myocardial Infarction
松岡秀洋(久留米大学医学部心臓・血管内科)
バルサルタンは、カプトプリルで確立された心筋梗塞後ハイリスク患者の総死亡と心血管事故を減少させる。
対象疾患
うっ血性心不全または左室機能低下を合併した急性心筋梗塞。
目的
急性心筋梗塞後の心不全患者に対するARBバルサルタン投与の予後改善効果を、すでに効果が確立したACE阻害薬カプトプリルとの非劣性解析を通じて検討する。あわせてバルサルタンとカプトプリル併用効果も検討する。
評価項目(エンドポイント)
一次エンドポイントは総死亡1)。サブ解析として、心機能2)、動脈硬化性イベント3)、年齢別効果4)に関する解析や、登録集団における新規糖尿病発症5)、腎機能の予後に与える影響6)などが報告されている。
試験デザイン
国際的、二重盲検、ランダム割付、プラセボ対照並行試験である。1998年12月〜2001年6月までに世界24カ国931施設から14,703例が登録された。
治療法
急性心筋梗塞発症後12時間以上10日未満のハイリスク心不全患者(放射線医学的肺うっ血・臨床的肺浮腫・頻脈を伴う3音のいずれかの所見を有するか、左室駆出分画低下例、すなわち核医学検査で40%以下または心エコーにて35%以下)に対し、従来の確立した至適治療(β遮断薬・アスピリン・再潅流療法・脂質低下療法)を行ったうえで、対照群(n=4,909)としてカプトプリル50mg・1日3回(1回量を6.25→12.5→25→50mgと漸増)、治療群としてバルサルタン160mg・1日2回(1回量を20→40→80→160mgと漸増)の単独群(n=4,909)とバルサルタン80mg・1日2回(1回量を20→40→80mgと漸増)+カプトプリル50mg・1日3回(1回量を6.25→12.5→25→50mgと漸増)の併用群(n=4,885)の3群にランダム割付した。
結果
登録症例14,703例中、77例でプロトコール違反、139例が追跡不能であった。一次エンドポイントである総死亡は、バルサルタン群979例(19.9%)、バルサルタン+カプトプリル群941例(19.3%)、カプトプリル群958例(19.5%)であり、バルサルタン群vsカプトプリル群のハザード比は1.0010(97.82%信頼区間[CI]、0.9019〜1.1110)、P=0.9824、バルサルタン+カプトプリル群vsカプトプリル群のハザード比は0.9840(97.82%CI、0.8857〜1.0933)、P=0.7260とともに有意差を認めなかった(図)(1)。同様に心血管死・再梗塞・心不全入院に関するサブ解析においても有意差はみられなかった。非劣性解析に関しては、intention-to-treat解析でバルサルタンのカプトプリルに対する非劣性は片側97.47%CIの上限がハザード比1.0940(P=0.0038)であり、per-protocol解析で非劣性は片側97.47%CIの上限がハザード比1.0806(P=0.0023)と、カプトプリルに対するバルサルタンの非劣性が証明された。なお、副作用による中止例はバルサルタン群で有意に少なかった。

図 一次エンドポイントである総死亡は群間で有意差はみられなかった(文献 1 より引用)
解説
SAVE、TRACE、AIREなど大規模臨床試験によりACE阻害薬は心筋梗塞後の心不全患者の予後を約20%改善することが明らかとなり、この疾患に対する第一選択薬として早期からの投与が推奨されている。VALIANTは、本来米国FDAに対するバルサルタンの心筋梗塞後心不全への適応申請のため計画された試験で、対照として同適応が認められたカプトプリルが用いられ非劣性解析が行われた。その結果、総死亡や心血管事故発症はカプトプリルと同等であり、副作用による中止例が少なかったことから、より良いコンプライアンスでハイリスクな心筋梗塞後心不全患者に対する治療がバルサルタンによって可能となることが明らかとなった。欧米では唯一適応が認められている。
同様の大規模臨床試験として、非劣性デザインではないが、急性心筋梗塞発症10日以内の心不全患者5,004例を対象にARBロサルタンまたはカプトプリルのいずれかを2年間投与し総死亡をエンドポイントとしたOPTIMAALが報告されている。しかし、カプトプリルとロサルタンの間に有意差は認められていない。VALIANTのもう一つの特徴はバルサルタンとカプトプリルの併用群の設定であるが、結果において併用群とカプトプリル単独群との間に有意差が認められず、むしろ併用により副作用と服薬中止の頻度は増加した。ハイリスク症例に対するARBとACE阻害薬の相加または相乗的な予後改善効果については、今後のさらなるエビデンスの蓄積を待ちたい。
用語解説
腎機能の予後に与える影響:VALIANT登録例で血清クレアチニン値が測定されている14,527例を解析した。死亡のリスク、または心血管系の原因による死亡、再梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、心停止後の蘇生をあわせた複合エンドポイントのリスクは、推定GFRの低下に伴い上昇したことから、軽度の腎機能障害が心筋梗塞後の心血管病予後と関連することが明らかとなった。
略語
VALIANT:Valsartan in Acute Myocardial Infarction
OPTIMAAL:Optimal Therapy in Myocardial Infarction with the AngiotensinII Antagonist Losartan
References
- Pfeffer MA et al:N Engl J Med 349:1893-1906, 2003
- Solomon SD et al:Circulation 111:3411-3419, 2005
- McMurray J et al:J Am Coll Cardiol 47:726-733, 2006
- White HD et al:Circulation 112:3391-3399, 2005
- Aguilar D et al:Circulation 110:1572-1578, 2004
- Anavekar NS et al:N Engl J Med 351:1285-1295, 2004

