エビデンス:ALLHAT

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。
※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。
Antihypertensive and Lipid Lowering Therapy to Prevent Heart Attack Trial
高橋敦彦(日本大学医学部総合健診センター)
久代登志男(駿河台日本大学病院循環器/日本大学医学部総合健診センター)
高リスク高血圧例の降圧療法において利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬の3群間に致死性冠動脈疾患あるいは非致死性心筋梗塞発症の差はなかった。利尿薬は経済的であり、降圧治療の第一選択薬とするべきである。
目的
利尿薬(クロルタリドン)と比較し、Ca拮抗薬(アムロジピン)またはACE阻害薬(リシノプリル)による降圧治療が、冠動脈疾患(CHD)あるいはその他の心臓血管疾患(CVD)の発生率を減少させるかを明らかにする。
対象疾患、対象症例
冠動脈疾患危険因子(6カ月よりも前の心筋梗塞または脳卒中、心電図または心臓超音波検査での左室肥大、2型糖尿病、喫煙者、HDLコレステロール35mg/dL未満)を一つ以上もつ55歳以上のステージ1または2の高血圧患者33,357例(北米623施設:米国、カナダ、プエルトリコ、米国領ヴァージン諸島)。除外基準は、症候性心不全の治療または入院歴がある場合、左室駆出率35%未満。
平均年齢67歳、女性47%、黒人35%、ヒスパニック19%、糖尿病36%。ランダム化時の血圧146/84mmHg、降圧薬服用率90%。
評価項目(エンドポイント)
一次エンドポイント:致死性CHDあるいは非致死性心筋梗塞。
二次エンドポイント:全死亡、致死性および非致死性脳卒中、複合CHD(一次エンドポイント、冠血行再建術、狭心症による入院)、複合CVD[複合CHD、脳卒中、その他の狭心症治療、心不全(致死的、入院あるいは外来治療)、末梢動脈疾患]、癌、左室肥大、末期腎不全(透析、腎移植、または死亡)、血清クレアチニン値の逆数、推定糸球体濾過量(後解析)。
治療法
降圧目標は140/90mmHg未満。非薬物療法はJNCガイドラインに準拠。第1段階は、クロルタリドン群(15,255例):12.5〜25mg/日、アムロジピン群(9,048例):2.5〜10mg/日、リシノプリル群(9,054例):10〜40mg/日。第2段階は、アテノロール:25〜100mg/日、クロニジン:0.1〜0.3mg×2/日、レセルピン:0.05〜0.2mg/日(オープンラベル、主治医の自由裁量による)。第3段階は、ヒドララジン:25〜100mg×2/日。
追跡期間
平均追跡期間4.9年(1994年2月〜2002年3月)。
結果
一次エンドポイントは2,956例に発生し、各治療薬群間に有意差はなく、クロルタリドン群(6年発生率、11.5%)と比較し、アムロジピン群0.89(95%CI、0.90〜1.07)(6年発生率、11.3%)、リシノプリル群0.99(95%CI、0.91〜1.08)(6年発生率、11.4%)であった。同様に全死亡も各群間に差を認めなかった。血圧の推移は、クロルタリドン群がベースライン146.2/84.0mmHg→5年後133.9/75.4mmHg、5年後の目標血圧達成率68.2%。アムロジピン群が146.2/83.9mmHg→134.7/74.6mmHg、66.3%、リシノプリル群が146.4/84.1mmHg→135.9/75.4mmHg、61.2%であった。5年間の収縮期血圧はクロルタリドン群と比較し、アムロジピン群(0.8mmHg、P<0.03)、リシノプリル群(2mmHg、P<0.001)が有意に高く、拡張期血圧はアムロジピン群(0.8mmHg、P<0.001)が有意に低かった。クロルタリドン群と比較しアムロジピン群の6年間の心不全発症率が高かった(10.2%vs5.6%;RR、1.15;95%CI、1.02〜1.30)が、その他の二次エンドポイントに差はなかった。クロルタリドン群と比較し、リシノプリル群の複合心臓血管疾患(33.3%vs30.9%;RR、1.10;95%CI、1.05〜1.16)、脳卒中(6.3%vs5.6%;RR、1.15;95%CI、1.02〜1.30)、心不全(8.7%vs7.7%;RR、1.19;95%CI、1.07〜1.31)の6年発生率が有意に高かった(図)。

図 治療群別の全死亡、脳卒中、複合冠動脈疾患、複合心臓血管疾患、心不全、および入院+致死性心不全の累積イベント率
結論
サイアザイド系利尿薬は一つ以上の重大な心臓血管系疾患予防効果に優れ、経済的である。利尿薬を降圧治療の第一選択薬とするべきである。
コメント
ALLHATは試験規模が大きく、厳格な降圧(135/75mmHg)が行われ、高血圧治療では何よりも降圧が重要であることを示した。しかし、4薬(ドキサゾジン群は心不全増加により試験中止)を比較するため、第2段階として実地臨床では処方頻度の低いレセルピン、クロニジンが使われた。人種的な背景がわが国と異なり、日本で多い脳卒中が一次エンドポイントに含まれていない。利尿薬群の収縮期血圧が最も低かったことが結果に影響した可能性がある。高血圧治療は生涯にわたるが、利尿薬群は、他の2群と比較し、糖代謝の悪化や低カリウム血症が有意に高率であり、これらが長期予後に及ぼす影響はわからない。有用性、経済性から利尿薬を第一選択薬とするべく結論しているが、至適降圧を得るために通常複数の降圧薬が使われるなど、結果の解釈、適応の点でいくつかの課題が残されたと考えられる。
ALLHATと同時にプラバスタチンを用いて行われたALLHAT-LLTは、プラバスタチン群と通常治療群との間で、全死亡を含めたイベント発生に有意差がみられなかった。
Recommended Readings
- ALLHAT Collaborative Research Group:JAMA 288:2981-2997, 2002
- ALLHAT Collaborative Research Group:JAMA 283:1967-1975, 2000
- ALLHAT Collaborative Research Group:JAMA 288:2998-3007, 2002

