エビデンス:Val-PREST

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

Valsartan for Prevention of Restenosis after Stenting of Type B2/C Lesions
角田等、小川久雄(熊本大学医学部循環器内科)

ステント導入により複雑病変に冠動脈インターベンションの適応が拡大したが、複雑病変での再狭窄率は高く、未解決の問題であった。ARBバルサルタンはこれを減少させ得る可能性を示した。

目的と背景

冠動脈ステント留置術は、バルーン冠動脈形成術に比し、急性冠閉塞や急性心筋梗塞発症などの急性期合併症を減少させ、慢性期の再狭窄を減少させること(BENESTENT、STRESS試験)が明らかになり、冠動脈ステントを用いた冠動脈インターベンション(PCI)は急速に普及した。さらに、冠動脈ステントは、複雑な病変(type B2/C病変)へのPCI適応を拡大したが、複雑病変におけるステント再狭窄率は高く、病変の長い例や慢性完全閉塞病変・再狭窄例を含めると33〜50%と報告されている。
ステント再狭窄は内膜増殖がその主たる原因であることが明らかになっている。アンジオテンシンIIは血管収縮作用や内膜増殖作用を有しており、アンジオテンシンIIを阻害すると血管平滑筋の増殖が抑制作用される。したがって、レニン-アンジオテンシン系抑制薬にPCI後の再狭窄抑制効果が期待されたが、ACE阻害薬(シラザプリル)を用いた臨床試験(MERCATOR試験やMARCATOR試験)では再狭窄は減少しなかった。Val-PREST研究において、ARBバルサルタンの複雑病変(AHA/ACC分類によるtype B2/C病変)へのステント再狭窄予防効果について検討した。

対象症例

筆者の単施設臨床試験で、type B2/C複雑病変に冠動脈ステント留置術を施行された250例を対象とした。背景因子を表に示すが、年齢・性別・狭窄のタイプ・冠動脈インターベンション(PCI)の適応については有意差を認めなかったが、再狭窄の危険因子でもある糖尿病はバルサルタン投与群に有意に多かった。

患者背景

表 患者背景

評価項目(エンドポイント)

ステント留置術後6カ月後に定量的冠動脈造影を施行し、狭窄前後の平均血管径と狭窄部の血管径を測定した。再狭窄を狭窄率が50%以上の場合と定義し、両群の再狭窄率を評価した。ステント内での内皮増殖、ステント内のlate loss(急性期と遠隔期の血管径の差)を算出した。再狭窄症例のうち、明らかな狭心症症状がみられた場合や虚血所見が明らかな場合には再PCIを施行した。

プロトコール

アスピリン100mg/日の長期投与と4週間のチクロピジン250mg/日投与に加えてバルサルタン80mg/日投与群とプラセボ群(68%がACE阻害薬を使用)に割り付けた。β遮断薬は各群とも使用可とした(バルサルタン群の86%、プラセボ群の83%で使用)。

結果(表)

バルサルタン投与群はプラセボ群に比し、有意にステント再狭窄が少なかった(19.8%vs 38.6%、P<0.005)。再PCI率もバルサルタン群が有意に少なかった(12.1%vs 28.7%、P<0.005)。ステント留置6カ月における対照血管径は両群とも同等であり、ステント内径はバルサルタン群で2.17±0.27mm、プラセボ群で1.60±0.20mmであった。late lossはバルサルタン群で0.52±0.16mm、プラセボ群で1.08±0.55mmで、ステント内の新生内膜増殖はバルサルタン群で有意に少なかった(P<0.000001)。両群とも再狭窄の発生部位は前下行枝が大部分を占め、バルサルタン投与により前下行枝の再狭窄率は、プラセボ群の36%から22%に低下した(有意差なし)。糖尿病患者の再狭窄率はバルサルタン投与群で25%、プラセボ群で44%であったが、糖尿病例が少数であることもあり有意差はみられなかった。

結果

表 結果

考察

これまで、ACE阻害薬をはじめ、コルヒチン、アンギオペプチン、Ca拮抗薬、魚油、低分子ヘパリン、スタチン、プロスタサイクリンアナログ、セロトニン阻害薬、トロンボキサン阻害薬などの再狭窄抑制効果が検討されたが、多くは効果を認めなかった。ARBはアテローム硬化症予防効果や抗炎症作用を有しており、これらがステント留置後の内膜増殖抑制に関与したと考えられる。
薬剤溶出性ステント(DES)により、再狭窄は激減したが、DESでは遅発性血栓症や長期抗血小板療法が必要であるなどの問題があり、バルサルタンにより再狭窄が減少したことは、従来ステントと薬剤の組み合わせにより再狭窄を予防し得る可能性を示唆したもので意義が大きく、大規模試験での検証が待たれる。

用語解説

ステント再狭窄:ステントによる狭窄拡張部位の再狭窄で、平滑筋細胞の増殖が主たる原因とされる。ステント留置後3〜6カ月をピークにみられる。

略語

PCI:percutaneous coronary intervention

DES:drug eluting stent

BENESTENT:Belgium Netherlands Stent Study

STRESS:Stent Restenosis Study

Recommended Readings

  1. Stone GW et al:N Engl J Med 356:998-1008, 2007
  2. Fliser D et al:Circulation 110:1103-1107, 2004

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