エビデンス:RENAAL

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

Reduction of Endpoints in NIDDM with Angiotensin II Antagonist Losartan
木村玄次郎(名古屋市立大学大学院医学研究科)

2型糖尿病に基づいた顕性腎症から末期腎不全への進行をAIIAロサルタンが抑制できることを示した初めての大規模研究。日本人のサブ解析でも著明な腎保護作用が証明された。

目的と背景

糖尿病性腎症は、末期腎不全の最大の原疾患である。レニン-アンジオテンシン(RA)系の阻害によって1型糖尿病患者での腎症を抑制できることは知られているが、糖尿病の大部分を占める2型糖尿病患者での同様の研究が欠如していた。そこで、2型糖尿病で腎症を合併する患者を対象にAIIAロサルタンの効果を検討した1)

対象症例

28カ国、250センターから2型糖尿病で腎症を有する患者1,513例を登録した。顕性腎症はアルブミン尿が300mg/g・Cr(蛋白尿では0.5g/g・Cr)以上であり、血清クレアチニン値は1.3〜3.0mg/dLと定義した。

評価項目(エンドポイント)

一次エンドポイントは、血清クレアチニン値の2倍化、末期腎不全、死亡の総和である。二次エンドポイントは、心血管疾患、それに伴う死亡、蛋白尿、腎症の進行速度である。

プロトコール

ロサルタン(50〜100mg/日1回投与)とプラセボを比較するランダム化、二重盲検試験。平均3.4年間(42カ月)追跡された。

治療法

降圧目標を140/90mmHg未満に設定し、降圧目標が達成されていなければ、4週後にロサルタンを100mgに増量した。さらに8週以降は両群ともCa拮抗薬、利尿薬、α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経抑制薬を用いた通常の降圧療法を追加した。

結果

一次エンドポイントに達したのはロサルタン群で327例に対してプラセボ群で359例であった(リスク低下16%、P<0.02)。ロサルタンは、血清クレアチニン値の2倍化を25%(P=0.006)、末期腎不全を28%(P=0.002)低下させた()1)。これらの効果は、血圧低下で説明できる以上であった。二次エンドポイントのうち心血管事故は両群同等であったが、心不全による初回入院のみロサルタン群で少なかった(リスク低下32%、P=0.005)。蛋白尿はロサルタン群で35%(P<0.001)低下した。

Kaplan-Meier曲線でみた累積発症率

図 Kaplan-Meier曲線でみた累積発症率
A:複合一次エンドポイント、B:血清クレアチニン値2倍化、C:末期腎不全、D:末期腎不全または死亡。平均追跡期間は3.4年(42カ月)である。

結論

ロサルタンは、2型糖尿病でも明らかな腎保護作用を発揮した。概して、副作用は問題にならなかった。

注目点

RENAAL研究は、製薬メーカー主導の大規模トライアルでありながら、Brenner BMや黒川 清博士を中心とする腎臓病専門領域に卓越した研究者の意図が明確に伝わるきわめて優れた臨床研究である。この点で、疫学専門家主導の単なる統計解析とは全くインパクトが異なると筆者は考えている。
ロサルタン群とプラセボ群で血圧に差異が生じないように苦心されたことは有名な話で、研究協力者の末端まで彼らの意向が伝達されたからこそ、降圧を超えたRA系抑制薬の腎保護作用が初めて証明し得たと考えられる。
RENAAL研究では、研究者の斬新なアイデアが生かされ、サブ解析として次々と報告されていることも他のトライアルと際だった違いを鮮明にしている。その中でも、ロサルタン投与によって達成された「蛋白尿が少ないほど、末期腎不全に至るリスクが減少することのみならず、心不全をはじめとする心血管事故抑制をも予測し得ること」を示したことは特筆すべきである2、3)。大規模研究としても、蛋白尿の臨床的な重要性を、腎不全へのリスクとしてと同時に、心・腎連関の視点からも明らかにした意義は大きい。
RENAAL研究には、アジア人としては日本人が最も多く96名がエントリーされ、しかもこの集団でロサルタンの腎保護作用が最大に獲得されたことも興味深い点である4、5)

用語解説

糖尿病性腎症の病期分類:微量アルブミン尿(30mg/g・Cr以上で300mg/g Cr未満)が出現すれば早期腎症、顕性蛋白尿(300mg/g・Cr以上)が出現すれば顕性腎症と定義される。RENAALは顕性腎症から末期腎不全への進行抑制を明らかにしたが、RA系抑制による早期腎症から顕性腎症への進行抑制はIRMA2研究で確認されている。

血清クレアチニン値の2倍化:腎症進行のエンドポイントとして、血清クレアチニン値がベースラインの2倍に達した時点までの累積率を比較する方法。およそ糸球体濾過量が半分に低下したとみなせる。

References

  1. Brenner BM et al:N Engl J Med 345:861-869, 2001
  2. de Zeeuw D et al:Kidney Int 65:2309-2320, 2004
  3. de Zeeuw D et al:Circulation 110:921-927, 2004
  4. Kurokawa K et al:Clin Exp Nephrol 10:193-200, 2006
  5. Kimura G:Clin Exp Nephrol 10:226-227, 2006

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