エビデンス:IRMA

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

The Effect of Irbesartan on the Development of Diabetic Nephropathy in Patients with Type 2 Diabetes
猿田享男(慶應義塾大学名誉教授)

IRMA研究は、ARBイルベサルタンの糖尿病性腎症の発症抑制効果を多施設で検討した研究である。イルベサルタン150mg/日および300mg/日の投与はプラセボ群より有意に糖尿病性腎症の発症を抑制し、300mg/日がより効果的であった。

目的

2型糖尿病患者において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が糖尿病性腎症の発症を阻止することが明らかにされている1、2)。レニン-アンジオテンシン(RA)系抑制薬であるARBにも同様の効果がある3、4)と考えられているが、大規模な臨床研究成績が乏しいため、ARBのイルベサルタンを用いて糖尿病性腎症の発症抑制効果を検討した5)

対象症例

IRMA研究は、2型糖尿病患者においてARBイルベサルタンの糖尿病性腎症の発症抑制効果を検討した多施設共同研究である。ドイツ、デンマーク、スペイン、スウェーデンといったヨーロッパ諸国の医師が組織する2型糖尿病と微量アルブミン尿を有する患者におけるイルベサルタンの効果を検討する研究グループの報告である。

プロトコール

欧州諸国の共同研究で、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験で、96施設が参加して行われた。試験期間は2年間で、2型糖尿病を有する高血圧患者590名をプラセボ群201名、イルベサルタン150mg/日群195名およびイルベサルタン300mg/日群194名に割り付けた。

評価項目(エンドポイント)

一次評価項目は、尿中アルブミン排泄率が200μg/minを超えるか、2回連続して尿中アルブミン排泄率が試験開始前に比し少なくとも30%以上増加した場合と定義した顕性糖尿病性腎症の発症までの期間とした。
二次評価項目はアルブミン尿の程度の変化、クレアチニン・クリアランスの変化および試験の最終受診日までの正常アルブミン尿(尿中アルブミン排泄率が20μg/min未満)への改善の頻度とした。

治療法

3週間の観察期間中にすべての降圧薬を中止した後、プラセボ投与群、イルベサルタン150mg/日投与群、イルベサルタン300mg/日投与群を設定した。治療開始後3カ月の降圧目標を135/85mmHg未満とし、降圧不十分な場合に利尿薬、β遮断薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、α遮断薬を追加薬とした。試験期間中、蛋白質および食塩制限は行わなかった。

結果

プラセボ投与群201名のうち、1名死亡、17名が副作用のため、8名が同意撤回、4名が血圧コントロール不十分なために試験中止となり、171名が試験を完了した。イルベサルタン150mg/日群の195名では、18名が副作用のため、1名が追跡不能、7名が同意撤回、1名が血圧コントロール不十分なために試験中止となり、168名が試験を完了した。イルベサルタン300mg/日群の194名では、8名が副作用のため、2名が追跡不能、6名が同意撤回、1名が血圧コントロール不能のため試験中止となり、174名が試験を完了した。
一次評価項目に関して、プラセボ群の30名が糖尿病性腎症を発症したのに対し、イルベサルタン150mg/日群では19名、300mg/日群では10名で発症し、明らかにイルベサルタンが糖尿病性腎症の発症を抑制した。各群の糖尿病性腎症の発症に関するハザード比は、プラセボ群0.61、イルベサルタン15mg/日群0.34、300mg/日群0.14であった()。
二次評価項目に関しては、クレアチニン・クリアランスの低下度は試験開始から3カ月間と3〜24カ月間では異なり、最初の3カ月はプラセボ群0.9mL/min/1.73m(2)、150mg/日群1.0、300mg/日群1.9に対し、3〜24カ月の期間は0.1、0.2および0.2であり、その低下度に3群間では差がみられなかった。
血圧の低下度には3群間で差がなく、尿中アルブミン排泄率は前値に比しプラセボ群で2%の減少であったのに対し、150mg/日群で24%、300mg/日投与群で24%、300mg/日投与群で38%であり、イルベサルタン群で有意に減少した。その効果は150mg/日群に比し300mg/日群で有意に優れていた。

2型糖尿病と持続性微量アルブミン尿を有する高血圧患者における糖尿病性腎症の発症頻度

図 2型糖尿病と持続性微量アルブミン尿を有する高血圧患者における糖尿病性腎症の発症頻度

考察

糖尿病性腎症の発症阻止にRA系抑制薬が効果的であることが明らかにされており、ACE阻害薬に関しては多くの大規模臨床試験でその効果が証明されている。ARBに関してはいまだ大規模な検討成績が少なく、その点でイルベサルタンを用いた本研究は大変貴重である。イルベサルタン150mg/日群に比し、300mg/日群のほうが尿中アルブミン排泄量をいっそう著明に減少させ、糖尿病性腎症の発症抑制効果が優れていた。降圧効果には差がなかったことから、降圧を超えた腎保護作用があり、しかもARBの用量が多いほど腎保護作用が優れていたことが注目される。

References

  1. U. K. Prospective Diabetes Study(UKPDS) Group:BMJ 317:713-720, 1998
  2. Baba S et al ; The J-MIND Study Group:Diabetes Res Clin Pract 54:191-201, 2001
  3. Brenner BM et al:N Engl J Med 345:861-869, 2001
  4. Lewis EJ et al:N Engl J Med 345:851-860, 2001
  5. Parving HH et al:N Engl J Med 345:870-878, 2001

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