エビデンス:MARVAL

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。
※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。
Microalbuminuria Reduction with Valsartan
平田恭信(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学)
微量アルブミン尿を呈する2型糖尿病患者にバルサルタンまたはアムロジピンを 24 週間投与したところ、両薬剤で同等の降圧を認めたにもかかわらず、尿中アルブミンはバルサルタン投与群だけで減少し、バルサルタンの血圧に依存しない腎保護作用の存在が示された。
目的と背景
尿中アルブミン排泄率(urinary albumin excretion rate;UAER)の増加は、2型糖尿病患者における腎臓ならびに心血管合併症の修正可能な危険因子である。レニン-アンジオテンシン系の抑制がUAERを減らすが、これが血圧低下に基づくものか否かは確かでない。MARVAL(MicroAlbuminuria Reduction with VALsartan)試験は2型糖尿病患者における微量アルブミン尿に及ぼすバルサルタンの効果が血圧依存性かどうかを解析するために計画された1)。
対象症例
英国の31施設における年齢35〜75歳の血清クレアチニン値が正常の2型糖尿病患者で持続的な微量アルブミン尿を示す者(夜間尿UAER20〜200μg/min)を対象とした。180/105mmHg以上の高血圧のほか、重篤な心・脳等の合併症を有する者は除外した。
評価項目(エンドポイント)
一次エンドポイントは24週後における投与開始時と比較したUAERの変化率、二次エンドポイントはアルブミン尿の正常化(UAERの最終測定値が20μg/min未満)した例の割合。有害事象も調査した。
プロトコール
多施設、ランダム割付、二重盲検、実薬対照、群間比較試験。ARBバルサルタン(80mg/日)あるいはCa拮抗薬アムロジピン(5mg/日)を24週間投与して比較した。試験開始5週前にCa拮抗薬、ACE阻害薬あるいはARBを服用中の場合は中止して、利尿薬に変更した。その他の降圧薬を服用中の場合は、観察期間は投与を継続した。観察期の血圧が140/90mmHg以上であるか、降圧薬を服用中の場合を高血圧と定義した。試験薬を割り付ける際に、それまで服用していた降圧薬はすべて中止とした。
目標血圧は135/85mmHgとした。投与4週までに試験薬剤で十分な血圧コントロールが得られない場合にはバルサルタンあるいはアムロジピンの用量を2倍に増量した。さらに不十分な場合は8週後からベンドロフルアザイド(2.5mg/日)を、12週後からドキサゾシンを併用できることとした。経過観察は投与前、8、12、18および24週後の各時点においてUAERを測定し、24時間血圧を自動オシロメトリー法で測定し、トラフ血圧を記録した。投与前、12、24週後に採血し、HbA1c、クレアチニン、コレステロール、血球数、電解質濃度、肝機能検査を行った。
結果
対象患者332例をランダムにバルサルタン群169例、アムロジピン群163例に割り付けた。試験終了時の用量は平均してバルサルタン122mg、アムロジピン8mg/日であった。バルサルタン146例、アムロジピン145例が試験を終了した。開始時の患者背景因子はUAER、収縮期/拡張期血圧も含め、2群間で差がなかった。バルサルタン群はアムロジピン群に比し、UAERが有意に減少した(P<0.001)。アムロジピン群と異なり、バルサルタン群ではUAERが経時的に減少し、24週後に最低値を示した。24週後のUAERはバルサルタン群で投与前値より40%減少したが、アムロジピン群では8%であり、2群間に有意差を認めた(図、P<0.001)。開始時に高血圧であった群と正常血圧であった群とで比較しても、それぞれで同様に有意差を認めた。投与前と24週後のトラフ血圧値は収縮期でバルサルタン−11.2mmHg、アムロジピン−11.6mmHg、拡張期でそれぞれ−6.6mmHg、−6.5mmHgと有意差がなかった。血圧の推移についても高血圧例、正常血圧例にかかわらず両群間で差がなかった。目標血圧を達成した症例の割合はバルサルタンで53%、アムロジピンで45%と有意差はなかった。
二次エンドポイントである24週後にアルブミン尿が正常化した症例の割合はバルサルタン群で29.9%とアムロジピン群の14.5%より有意に高かった(P<0.001)。
HbA1c、総コレステロール、カリウム、クレアチニンは投与開始時ならびに経過中も両群で変化がなく、差もなかった。

図 バルサルタン群およびアムロジピン群における尿中アルブミン排泄率(UAER)の推移
安全性
忍容性は良好であったが、足首の浮腫はバルサルタンで1.2%とアムロジピンの7.4%より少なかった。その他の副作用には差がなかった。
結論
微量アルブミン尿を呈する2型糖尿病患者においてバルサルタンとアムロジピンは到達血圧も降圧効果も同等であったが、バルサルタンだけがUAERを減少させた。したがってバルサルタンは血圧とは独立した蛋白尿抑制効果を発揮すると考えられる。この研究からは明らかでないが、この作用機序が糸球体微少循環への影響2)以外に、近年、指摘されている ARB の抗炎症作用や抗酸化作用も関与するかもしれない。
用語解説
微量アルブミン尿:近年は糖尿病ばかりでなく、広く心血管病の危険因子と考えられている。血管内皮傷害あるいは血管炎症を反映している可能性がある。
Recommended Readings
- Julius S et al:Lancet 363:2022-2031, 2004 (VALUE試験)
- Mochizuki S et al:Lancet 369:1431-1439, 2007 (JIKEI HEART Study)
References
- Viberti G et al:Circulation 106:672-678, 2002 (MARVAL試験)
- Brenner BM et al:N Engl J Med 345:861-869, 2001 (RENAAL試験)

