エビデンス:ABCD、ABCD-2V

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。
※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。
Appropriate Blood Pressure Control in Diabetes Trial/-part 2 with Valsartan
江口麻里子、土橋和文、島本和明(札幌医科大学第二内科)
高血圧症合併2型糖尿病患者における糖尿病合併症の予防、進展抑制についての試験。降圧の程度、薬剤投与で効果を比較したABCD試験とバルサルタンによる強化治療の効果を比較したABCD-2V試験。
ABCD試験1)
1.対象疾患・対象症例
米国コロラド州デンバーとその近郊の40〜74歳の2型糖尿病患者で拡張期血圧が80mmHg以上を対象とした。6カ月以内の心筋梗塞、不安定狭心症または脳血管事故の既往者、3カ月以内の冠動脈バイパス術の既往、NYHA分類III、IVのうっ血性心不全、腎機能障害のあるものなどは除外した。
2.目的
糖尿病合併症の予防および進展抑制に及ぼす強化血圧コントロールと緩和血圧コントロールの効果を比較する。加えて、第一選択薬としてニソルジピンとエナラプリルの効果を比較した。
3.評価項目
一次エンドポイントは、血圧コントロールとクレアチニン・クリアランス変化に及ぼす影響とし、二次エンドポイントを心血管合併症、糖尿病性網膜症、神経障害、尿中アルブミン量、左室肥大予防における効果とした。
4.プロトコール
ランダム化、二重盲検比較試験、被験者は950例で前向きに拡張期血圧90mmHg以上の高血圧群470例と80〜89mmHgの正常血圧群480例に分類した。追跡期間は5年間。
5.治療法
ランダム化により高血圧群の半数にニソルジピンを、残り半数にエナラプリルを投与、また正常血圧群では50%にプラセボ、25%にニソルジピン、25%にエナラプリルが投与された。また、高血圧群は、降圧目標を拡張期血圧75mmHg以下とする強化治療群、もしくは拡張期血圧80〜89mmHgとした緩和治療群の2群に分けられた。また、正常血圧群は降庄目標を拡張期血圧でベースラインから10mmHg以下とする強化治療群と、低下目標を設けない緩和治療群の2群に分けられた。
6.結果
ABCD試験の結果は、高血圧群におけるニソルジピン投与群とエナラプリル投与群で比較したところ、血圧、血糖、脂質コントロール状態、肥満度、喫煙に差を認めなかった。また、血圧のコントロールは強化治療群と緩和治療群においても有意差は認めなかった。一方、心血管合併症において致死性および非致死性心筋梗塞の発症ではエナラプリル投与群で5例であったのに対し、ニソルジピン群は25例と有意に高い結果が得られ(P=0.001)、ニソルジピン投与群のエナラプリル投与群に対する全心筋梗塞の補正後危険率は7.0であった。
7.結論
以上の結果より、高血圧を伴う2型糖尿病患者の心血管合併症とくに心筋梗塞を予防する観点からは、長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬に比べACE阻害薬が優ることが示唆された。しかしこの成績は二次エンドポイントに基づいたものであることから、結果の解釈は慎重であるべきである。
ABCD-2V試験2)
1.対象疾患・対象症例
米国デンバーとその近郊の40〜81歳の2型糖尿病患者で、収縮期血圧140mmHg未満、拡張期血圧80〜90mmHg、アルブミン尿200μg/min未満を対象とした。
2.目的
ARBバルサルタンを第一選択薬として糖尿病合併症の予防、および進展抑制に及ぼす強化血圧コントロールと緩和血圧コントロールの効果を比較する。
3.評価項目
一次エンドポイントは、血圧コントロールとクレアチニン・クリアランス、尿中アルブミン排泄、血清クレアチニンに及ぼす影響とし、二次エンドポイントを心血管合併症、糖尿病性網膜症、神経障害における効果とした。
4.プロトコール
ランダム化、二重盲検比較試験、被験者129例を前向きに追跡した。追跡期間は平均1.9±1.0年。
5.治療法
ランダム化により66例は降圧目標を拡張期血圧75mmHg以下とする強化治療群としてバルサルタンが投与され、63例は目標拡張期血圧80〜89mmHgとする緩和治療群としてプラセボが投与された。
6.結果
ABCD-2V試験の結果は、治療後の強化治療群の血圧は118±10.9/75±5.7mmHgで緩和治療群の124±10.9/80±6.5mmHgに比較して有意な降圧を示した(P<0.001)。アルブミン尿の改善は強化治療群の77.8%に対し、緩和治療群は33.3%にとどまった(表)。一方、二次エンドポイントでは有意差を認めなかった。

表 各治療群におけるアルブミン尿の変化(ABCD-2V試験)
7.結論
以上の結果より、バルサルタンによる120/80mmHg以下の血圧コントロールは、正常血圧の糖尿病患者における尿中アルブミン排泄の悪化を抑制させる可能性が示唆された。
用語解説
ABCD試験:高血圧合併2型糖尿病例での糖尿病合併症の予防、進展抑制について、降圧の程度、ニソルジピンとエナラプリル投与での効果を比較。
Recommended Readings
- Sheinfeld GR et al:Am J Hypertens 12:80S-85S, 1999
- Guzmn CB et al:Prog Cardiovasc Dis 41:461-470, 1999
References
- Estacio RO et al:N Engl J Med 338:645-652, 1998
- Estacio RO et al:Am J Hypertens 19:1241-1248, 2006

