エビデンス:SMART

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。
※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。
Shiga Microalbuminuria Reduction Trial
宇津貴、柏木厚典(滋賀医科大学内分泌・腎臓・神経内科)
レニン-アンジオテンシン(RA)系抑制薬が、早期糖尿病性腎症に対して、降圧以外の保護作用をもつことを示した日本人のエビデンスである。糖尿病早期からのRA系抑制の重要性が確認された1)。
目的と背景
2型糖尿性病早期腎症に対するARBとCa拮抗薬の比較を十分な降圧下に実施した試験はこれまで行われていない。SMARTは、早期腎症期の日本人2型糖尿病患者に対するARB(バルサルタン)とCa拮抗薬(アムロジピン)の効果を、尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)減少あるいは腎症のレミッション(寛解:早期腎症期から腎症前期への改善)を指標として、ガイドラインで提唱されている130/80mmHg未満を目標血圧に設定し、比較検討することを目的とした。
対象症例
対象者の基準は、外来通院中の2型糖尿病患者で、微量アルブミン尿・高血圧症・5年以上の糖尿病歴を有し、Ca拮抗薬およびARBの投与を受けていない者である。
評価項目
中央施設で測定した早朝第一尿のACRの変化、およびACRが腎症前期(ACR<30μg/mg・Cr)までの減少をレミッションとし、治療期間中にレミッションを生じた頻度について評価した。
プロトコール
日本国内の13医療施設において患者登録を行い、試験実施はPROBE法にて行った。患者の割付は最小化法を用い、その因子は年齢、性、心血管合併症の既往、喫煙歴、コレステロール値、HbA1c、降圧薬投与の有無とした。追跡期間は6カ月間とした。
治療法
バルサルタンは80mg/日、アムロジピンは5mg/日から投与開始し、来院時血圧130/80mmHg未満を目標に、4週ごとの血圧値に応じてバルサルタンまたはアムロジピンの増量およびACE阻害薬以外の降圧薬追加投与を行った。
結果
153名をバルサルタン群とアムロジピン群に割り付けたが、3名が脱落したため、最終的に150名(バルサルタン群73名、アムロジピン群77名、平均年齢62歳、男性51名、女性99名)の結果を解析した。観察期から降圧薬投与を受けていた患者は79名であり、そのうち約90%がACE阻害薬の単独投与であった。試験終了時のHbA1cはバルサルタン群7.3%、アムロジピン群7.5%であり、両群間に差異を認めなかった。バルサルタン群の50.7%、アムロジピン群の48.1%が目標降圧(収縮期血圧<130mmHg)を達成しており、血圧値は両治療群間ですべての期間中において同等にコントロールされていた。試験終了時のACRは、観察期に比して、バルサルタン群で32%減少したのに対し、アムロジピン群では18%増加していた(P<0.001)。早期腎症のレミッションは、バルサルタン群で23例(32%)、アムロジピン群11例(14%)と、バルサルタン群で高頻度(P=0.01)に生じていた。観察期よりACE阻害薬を投与されていた患者(バルサルタン群34名、アムロジピン群38名)においても、ACRはバルサルタン群にてアムロジピン群に比し有意な減少を認めた(26%減少vs8%増加、P<0.05)。さらに、収縮期降圧目標達成の有無によるACR変化の比較検討を行ったところ(図)、アムロジピン群のACRは、目標収縮期血圧に達していなかった群で40%増加したのに対し、目標収縮期血圧に達した群では11%減少した(P<0.001)。一方、バルサルタン群では目標収縮期血圧の達成群、非達成群のいずれもACRの低下を認め、その変化率の差違は認めなかった(達成群40%減少、非達成群23%減少)。なお、目標降圧が達成できなかったバルサルタン群におけるACR減少は、目標降圧を達成したアムロジピン群に比し、有意に(P<0.005)大であった。

図 治療薬および血圧コントロールが及ぼす尿中アルブミン排泄量(アルブミン/クレアチニン比)への影響
収縮期目標降圧達成(最終観察時<FC235.1130mmHg):バルサルタン群(◆)アムロジピン群(■)。収縮期目標降圧非達成(最終観察時≧FC235.1130mmHg):バルサルタン群(◇)アムロジピン群(□)。*:P<0.005、**:P<0.001。
結論
腎臓病の進展予防には、RA系抑制薬を基礎薬とし130/80mmHg未満を目標に血圧をコントロールすることが推奨されている。しかし、これまで130/80mmHg未満を降圧目標とし、対照薬と比較してRA系抑制薬の効果を検証した臨床研究はなかった。MARVAL試験2)では、血圧に依存しないバルサルタンの効果が示唆されているが、目標血圧は135/85mmHgであった。SMARTは130/80mmHgを目標にし、最終観察時の平均血圧は131/75mmHgであった。良好な血圧コントロール下においてなおARBがCa拮抗薬に対し微量アルブミン尿減少作用に優れていたこと、さらに収縮期血圧を130mmHg未満にコントロールし得た患者の解析結果から、バルサルタンは降圧効果とは独立した抗アルブミン尿作用を有していることを明らかにした。SMARTは、日本人2型糖尿病患者においても、バルサルタンが血圧と独立した微量アルブミン尿減少作用を有することを明らかにし、早期からのRA系抑制薬を基礎とした降圧療法の重要性を証明した点で意義が大きい。
用語解説
微量アルブミン尿:糖尿病性腎症の早期マーカーと考えられていたが、最近、腎のみではなく、心血管病の危険因子として認識されるようになっている。
略語
PROBE:Prospective Randomized Open Blinded-Endpoint
MARVAL:Microalbuminuria Reduction with Valsartan
References
- Shiga Microalbuminuria Reduction Trial(SMART) Group:Diabetes Care 30:1581-1583, 2007
- Viberti G et al:Circulation 106:672-678, 2002

