エビデンス:DROP

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

Diovan Redcution of Proteinuria
冨田奈留也(川崎医科大学腎臓内科)

最近、慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)が心血管事故発症に関与することが明らかにされ、RA系抑制薬の重要性が強調されている。ARBは使用頻度が増加しているが、血圧値だけでなく尿中アルブミン排泄量も指標にし、改善がなければARBの増量が必要である。

背景

微量アルブミン尿は糖尿病性腎症の早期マーカーであることはよく認識されている。最近、微量アルブミン尿は心血管事故の独立した危険因子であることが指摘され、注目されている。さらにこの微量アルブミン尿は腎機能が低下すると蛋白尿へ進行することも報告されている。DROPは糖尿病を伴う高血圧患者における腎機能の悪化を示す指標である蛋白尿に及ぼすバルサルタンの影響を検証するために行われた試験である1)

対象疾患・対象症例

腎症(微量アルブミン尿あるいは蛋白尿のある)を伴う2型糖尿病合併高血圧患者391名。

目的

用量別にみたバルサルタンの蛋白尿に及ぼす影響の検討。

評価項目(エンドポイント)

蛋白尿減少・正常尿中蛋白排泄率。

プロトコール

多施設共同ランダム化二重盲検法による群間比較試験。

追跡期間

全30週間(割付後26週間の観察期間)。

治療法

すべての対象者はバルサルタン160mg/日を4週間にわたり投与した後、160mg/日継続群、320mg/日群、640mg/日群に割り付けられ、さらに26週間投与した。

結果

試験開始時の尿中アルブミン排泄率(中央値)は160mg群112μg/min、320mg群99μg/min、640mg群96μg/minと3群では有意差は認められなかった。また収縮期血圧は160mg群150.2mmHg、320mg群150.3mmHg、640mg群150.3mmHg、拡張期血圧は160mg群88.1mmHg、320mg群87.7mmHg、640mg群87.8mmHgと血圧においても3群間で有意差は認められなかった。
試験開始4週後、尿中アルブミン排泄率(中央値)は3群とも開始時よりも有意に同程度の低下率を示したが、16週および30週後になると試験開始時に比較し、160mg群より320mg群や640mg群での低下率のほうが有意に増大した(30週後;160mg群:25%、320mg群:51%、640mg群:49%)()。また尿中アルブミン排泄率の正常(20μg/min未満)化率は160mg群12%、320mg群19%、640mg群24%であり、640mg群は160mg群の2倍であった。血圧に関しては平均座位収縮期血圧でみているが、640mg群の降圧効果が一番大きかった。一方、副作用に関しては640mg群で頭痛やめまいなどが若干増加したが、高カリウム血症などを含めた副作用が増加することはなかった。つまり高用量でも忍容性は良好であり、有害事象には用量依存性は認められなかった。

尿中アルブミン排泄率の変化

図 尿中アルブミン排泄率の変化

結論

バルサルタン160mgに比較し、さらに高用量の320mgあるいは640mgのほうが2型糖尿病合併高血圧患者の腎保護に優れている。また高用量でも忍容性に問題はなかった。

考察

1985年にTagumaらの糖尿病性腎症患者の蛋白尿がACE阻害薬により減少したという報告に始まり、1型および2型糖尿病患者におけるACE阻害薬およびARBの有効性が多くの大規模臨床試験で証明されている2−4)。このような結果から、糖尿病性腎症におけるレニン-アンジオテンシン(RA)系抑制薬の地位は確立された。また近年では日本人におけるエビデンスも蓄積されつつある。Arakiらは微量アルブミン尿期の糖尿病性腎症患者216例を6年間追跡調査し、RA系抑制薬の使用により約50%で正常アルブミン尿に寛解したと報告した5)。これらの結果から血糖および血圧のコントロール以外にRA系抑制薬の使用の重要性が強調されている。さらに近年、きわめて高用量のARBが降圧作用を超えて尿蛋白を減少させることが報告され注目されていた6)。本試験はこの結果を確認した試験であり、意義は大きいといえる。というのも尿中アルブミンの減少が心・腎イベントの減少に密接に関与することを考えると、RA系抑制薬の用量設定は血圧レベルではなく、尿中アルブミンを指標として行われるべきと考えられる。ただし本試験でのバルサルタンの使用量は最大で640mgであり、国内最大でも160mgまでしか認められておらず、この用量での降圧を超えた抗蛋白尿作用については疑問である。日本で認可されているARBの用量を考慮すれば厳格な降圧治療も忘れてはならないのかもしれない。
今後の課題としては他剤との併用療法におけるARBの用量をいかに設定するかという点があげられる。とくにACE阻害薬とARBの併用が一般的となってきており、その際の用量設定をどうするが一番腎保護によいのかということである。現在のところこれに答えを出せるようなエビデンスはないが、進行中の大規模臨床試験からこの問題点について何らかのヒントが出てくることが待たれる。

References

  1. Hollenberg NK et al:J Hypertens 25:1921-1926, 2007
  2. Taguma Y et al:N Engl J Med 313:1617-1620, 1985
  3. Lewis EJ et al:N Engl J Med 329:1456-1462, 1993
  4. Parving HH et al:N Engl J Med 345:870-878, 2001
  5. Araki S et al:Diabetes 56:1727-1730, 2007
  6. Rossing K et al:Kidney Int 68:1190-1198, 2005

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