エビデンス:VALISH Study

高血圧ナビゲーター

※本コンテンツはメディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第6章EBMより、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

※本コンテンツに掲載された記事には海外で実施された試験が含まれており、本邦で承認されている効能・効果および用法・用量とは異なる場合があります。

Valsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension Study
荻原俊男(大阪大学名誉教授/大阪府立急性期・総合医療センター)

わが国の高齢者収縮期高血圧の至適降圧目標設定に供するエビデンスとすべく、140mmHg未満群と150mmHg未満群の比較を、ARBバルサルタンを第一次薬として、おのおの1,500例、3年間の介入試験である。

背景

高齢者高血圧の降圧目標については、日本のガイドライン(JSH2004)では前期高齢(65歳以上)では140/90mmHg未満、後期高齢では150/90mmHgを中間的降圧目標とし、さらに可能であれば最終目標として140/90mmHgとされている1、2)。また欧米のガイドラインでは、年齢は考慮せずすべて140/90mmHgとなっている3)。一般論としてはthe lower、the betterであるが、多くの高齢者高血圧の介入試験における到達血圧値は150/90mmHg未満となっている。さらにわが国で行われたJATOS試験では収縮期血圧140mmHg未満群と160mmHg未満群で心血管事故の頻度に有意差はみられず、75歳以上では140mmHg未満群のほうが心血管合併症頻度が高い傾向がみられている。

目的

本試験はわが国の高齢者収縮期高血圧の降圧目標について、140mmHg未満群と150mmHg未満群の比較をARBバルサルタンを第一次薬として行うことを目的とした。

対象症例

70歳以上かつ85歳未満の外来通院中の収縮期高血圧患者で性別は問わない。高血圧基準は2〜4週間で、2回の診察時のいずれにおいても座位血圧が収縮期血圧160mmHg以上かつ拡張期血圧90mmHg未満(すなわち孤発性収縮期高血圧)であり、未治療患者あるいはバルサルタンへの変更が可能な既治療患者を対象とした。
除外症例:以下の症例は当試験に組み入れないこととした。すなわち、二次性高血圧、悪性高血圧、収縮期血圧200mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上、6カ月以内の心血管事故発症、6カ月以内の冠動脈インターベンション施行、重症心不全(≧NYHAIII))、心房細動、高度不整脈、腎障害(クレアチニン≧2mg/dL)、高度肝障害等。

評価項目(エンドポイント)

非致死性、致死性脳心血管事故の総合を一次エンドポイントとした。すなわち、突然死(24時間以内の内因性死亡)、脳卒中(再発を含む)、心筋梗塞、心不全および他の心血管病による死亡、予定外の心血管病による入院(検査入院を除く)、腎不全(クレアチニン値2mg/dL以上で倍増または透析導入)。二次エンドポイントとしては一次エンドポイントの各因子、総死亡率、狭心症の新規発症または悪化である。

プロトコール(図)

研究者主導型の多施設共同研究である。日本高血圧学会後援。ランダム割付・非盲検比較試験でイベント評価はPROBE法による。対象患者は試験担当医師からVALISHデータセンターに登録され、患者背景因子を最小化法によりそろえ、2群の降圧目標群(L群:<140mmHg、M群<150mmHg)に割り付けられる。各群1,500例を目標、最低2年、最高3.5年(実際は7カ月間延長)の観察期間とし、3カ月ごとに定期報告することとした。
試験薬はバルサルタン(ディオバン)とし、40〜80mgを1日1回投与、1〜2カ月後に降圧不十分であれば160mg/日まで増量、さらに目標降圧値に達しない場合は他のARB以外の降圧薬の上乗せを行うこととした。降圧目標到達までの期間は緩徐な降圧を心掛け3カ月程度とした。合併症の治療薬・治療法には制限を加えないこととした。

VALISH Studyのプロトコール

図 VALISH Studyのプロトコール

経過と展望

試験期間は2004年2月に開始され2008年3月に終了予定である。症例の登録は2005年8月に終了し、最終的にL群1,627例、M群1,633例、計3,260例がエントリーされた。
VALISH Studyは高齢者の収縮期高血圧治療におけるARBバルサルタンを第一次薬とした場合の臨床的有用性が明らかになるとともに、高齢者高血圧の至適降圧目標、とくに収縮期血圧を140mmHg未満に下げるべきか、あるいは中間目標として150mmHg未満という高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)は妥当であるか否かについてエビデンスを与えるものと期待される。わが国発のユニークな介入試験としてその結果が注目される。

略語

孤発性収縮期高血圧:isolated systolic hypertensionは高齢者高血圧の特徴であり、大血管の伸展性、弾力性低下による。脈圧の開大とともに高齢者高血圧のリスクとして重要である。

Recommended Readings

  1. Staessen JA et al:Lancet 355:865-872, 2000
  2. Ogihara T et al:Am J Hypertens 13:461-467, 2000
  3. Hansson L et al:Lancet 351:1755-1762, 1998
  4. August P et al:N Engl J Med 348:610-617, 2003

References

  1. Ogihara T et al:Hypertens Res 27:657-661, 2004
  2. 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会:高血圧治療ガイドライン 2004。日本高血圧学会、東京、2004
  3. Mancia G et al:J Hypertens 25:1105-1187, 2007

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