開発薬事
開発薬事:時代とともに変化する“規制”を先読みし、革新的なプランを立案する醍醐味。
オンコロジー薬事部
生命機能研究科 生命機能専攻 博士了 2014年入社
一日でも早く患者さんに薬を届けるために
薬事部は会社を代表して厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)といった規制当局と折衝する役割を担っており、開発早期から市販後まで薬の一生に幅広く関わります。私が今担当しているのは、オンコロジー領域の開発プロジェクトです。具体的には、製品価値を最大限に高め、一日でも早く承認を取得できるよう、新薬の開発・申請戦略の立案やPMDAとの相談といった治験・承認申請の準備、承認申請後の審査対応などを手がけています。審査期間中は、当局から臨床的有効性・安全性はもちろんのこと、薬物動態、添付文書案、海外状況など多岐にわたる照会事項が届くので、申請チームのリーダーとして回答方針を取りまとめる役割も担っています。新薬の開発・申請戦略の立案や照会事項対応では、スイスやアメリカにいるグローバルのメンバーと議論することが多いのですが、日本独自の規制も少なくないため、薬事担当としての意見はグローバルのメンバーからも重視されていると感じています。
薬事の仕事の特徴は、多くの部署の人と関わることです。チームの方針を検討するにあたり、開発関連部署をはじめ、マーケティング、法務、知的財産、生産といった部署の方々とも合意形成を図ります。もちろん、グローバルのメンバーや規制当局の方々ともコミュニケーションをとる必要があります。意見が異なることもしばしばありますが、それぞれの立場の人がなぜそのような主張をしているのか、その背景を把握することが大切だと考えています。強い主張には必ず何かしらの理由があり、それを蔑にして説得することはできません。また、「患者さんのためには、どうするのがベストなのか」という視点は、関係者共通の思いなので、困った時にはその原点に立ち返って考えるように心がけています。
革新的な医薬品の開発に携わりたいという夢を実現するために
私は幼少の頃に気管支喘息を患っており、発作が起こる度に薬に助けられていた経験から創薬に携わりたいと思うようになり、薬学部に進学しました。大学院では自己免疫疾患の発症メカニズムについて研究し、幸運にも世界三大科学誌の一つ『Cell』誌に掲載された論文の仕事に貢献する機会に恵まれたことから、大きな達成感を得ることができました。一方で、基礎研究の成果はどうしても10年、20年先にならないと創薬研究や開発に応用されないため、もっと患者さんの生活に直接貢献できる仕事をしたいという思いが強くなり、製薬会社での開発の仕事を選びました。ノバルティス ファーマに決めたのは、開発パイプラインが豊富で、革新的な新規化合物を数多く開発していることから、そのような製品の開発に携わりたいという自分の夢を実現するのに最適な場所だと考えたからです。
ただ、就職した当初は薬事の仕事内容を理解しておらず、モニターとして医療現場を経験したうえで、将来的に開発戦略を立案する部署で活躍したいというイメージを描いていました。薬事部は他部署で経験を積まれた方が異動されることが多く、新卒で薬事のプロジェクト担当に配属されることは少ないのですが、業務を通じて開発プロジェクトの中で重要な役割を果たしていることを知り、先輩方に薬事業務の醍醐味を教えていただいたことで興味を抱くようになりました。望んで配属されたわけではないのですが、大変幸運だったと思っています。
開発薬事は未来へと導くナビゲーター
配属当初、薬事は規制に関係する部署であるため、開発におけるブレーキ役を担うものと考えていたのですが、実際に仕事をするうちにその考えは変わっていきました。規制を基に革新的な方策を考えることが薬事の大切な役割であり、そこに薬事業務の醍醐味があります。“規制は生き物”という言葉があるくらい、規制は時代とともに変化していきますが、その変化の方向を先読みし、それに基づいた方策を立案する。これは薬事にしかできないチャレンジングな仕事で、ブレーキ役どころか、未来へと導くナビゲーターなのです。また、規制の変化を予測するだけでなく、業界活動を通じて規制の作成や改訂を当局に提案し、より良い未来をつくっていくことも重要だと感じています。
革新的な医薬品の開発に携わりたいという入社当時の夢は今でも変わっていません。この夢を実現するために、今後、どのようなキャリアを歩むべきか。具体的には決まってはいませんが、先輩方を見ているといくつかの方向性があると考えています。例えば、薬事のスペシャリストや開発のプロジェクトリーダーになっていくことです。薬事部の先輩にはプロジェクトリーダーを経験した後、再び薬事部に戻って仕事をされている方もいます。周囲には優秀で自己成長のための努力を惜しまない方々がたくさんいますので、こうした方々に刺激を受けながら成長し、自分の夢を追求していきたいと思っています。