ノバルティス、ステージIIIのBRAF V600遺伝子変異陽性悪性黒色腫の術後補助療法として、「タフィンラー®」と「メキニスト®」の併用療法がFDAの画期的治療薬指定を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2017年10月23日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 併用療法を受けた患者さんの3年無再発生存率(RFS)がプラセボの39%に対して58%を示した第III相試験に基づいて画期的治療薬指定1
- BRAF V600E/K遺伝子変異陽性の悪性黒色腫に対する術後補助療法として臨床ベネフィットを示した初めての分子標的の併用療法1
- 世界各国で規制当局との協議が進行中
2017年10月23日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは、本日、ステージIIIのBRAF V600遺伝子変異陽性悪性黒色腫患者さんに対する外科的完全切除後の術後補助療法として「タフィンラー®(ダブラフェニブ)」と「メキニスト®(トラメチニブ)」の併用療法を米国食品医薬品局(FDA)が画期的治療薬に指定したことを発表しました。BRAF V600遺伝子変異陽性悪性黒色腫患者さんを対象とする初めての術後補助療法として「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法が開発中です。
画期的治療薬への指定は、外科的完全切除後に「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法を受けたステージIIIのBRAF V600E/K遺伝子変異陽性悪性黒色腫患者さん870名を対象にした第III相試験、COMBI-ADの結果に基づいています1。患者さんは、「タフィンラー」(150 mg、1日2回)と「メキニスト」(2 mg、1日1回)の併用投与(n = 438)またはそれぞれのプラセボの投与(n = 432)を受けました1。2.8年(中央値)の経過観察後に主要評価項目(無再発生存期間(RFS))が達成され、併用療法群はプラセボ群と比較して、再発または死亡のリスクが有意に53%減少しました(HR:0.47[95% CI:0.39~0.58];中央値はそれぞれ未到達vs. 16.6カ月;p<0.001)1。ステージIII A、B、およびCの患者さんを含むすべてのサブグループにおいて、併用療法群の無再発生存ベネフィットが観察されました1。試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の会長シンポジウムで先日発表され、同時にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌(New England Journal of Medicine)で発表されました1,2。
ノバルティス・オンコロジー事業部のエグゼクティブ・バイスプレジデントでありグローバル医薬品開発の責任者であるサミット・ヒラワット(Samit Hirawat)は次のように述べています。「外科的切除後の再発率が高いステージIIIの悪性黒色腫患者さんには、より有効な治療選択肢が求められています。『タフィンラー』と『メキニスト』併用療法を術後補助療法の領域における進歩と認定してくれたFDAに感謝しています」
有害事象は、「タフィンラー」と「メキニスト」併用療法の他の試験と一致し、安全性における新たな知見は認められませんでした1。併用療法を受けた患者さんのうち、97%に有害事象が認められ、41%はグレード3/4の有害事象、26%は治療の中止に至る有害事象でした(プラセボ群はそれぞれ88%、14%、3%)1。
FDAのガイドラインにおいて、画期的治療薬指定を受ける治療薬とは、重篤または生命を脅かす疾患あるいは症状を治療し、予備的な臨床エビデンスに基づく1つ以上の臨床的に重要な評価項目において、既存の治療薬と比較して大幅な改善が証明されている治療薬と規定されています。画期的治療薬指定は、FDAが外科的完全切除を受けたステージIIIのBRAF V600遺伝子変異陽性悪性黒色腫患者さんに対する術後補助療法としての「タフィンラー」と「メキニスト」の開発と審査を迅速に進める予定であることも示しています。この併用療法は転移性悪性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)および未分化甲状腺がん(ATC)に対してすでに画期的治療薬指定を受けています。
COMBI-ADについて
COMBI-AD試験は無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第III相試験であり、抗がん治療歴(外科的切除を除く)がない、外科的完全切除を受けたステージIIIのBRAF V600E/K遺伝子変異を有する悪性黒色腫の患者さん合計870名が参加しました。患者さんは、BRAF遺伝子の変異(V600E vs. V600K)およびステージ(IIIA vs. IIIB vs. IIIC)に基づいて層別化され、12カ月間治療を受けました。
主要評価項目は無再発生存期間(RFS)でした。副次評価項目には全生存期間(OS)、無遠隔転移生存期間(DMFS)、無再発期間(FFR)、および安全性が含まれました。
悪性黒色腫について
世界中で毎年約200,000例の新たな悪性黒色腫が診断されており、このうち約半数にBRAF遺伝子変異が認められます。遺伝子検査で腫瘍にBRAF遺伝子変異があるかどうかを判定します3,4。悪性黒色腫のために外科的治療を受ける患者さんは、術後に悪性黒色腫細胞が体内に残っている可能性があるため、再発リスクが高い場合があります5。
悪性黒色腫の再発リスク低減の手助けをするため、リスクの高い悪性黒色腫患者さんに術後補助療法が推奨されることがあります5。
「タフィンラー®」と「メキニスト®」の併用療法について
切除不能または転移性のBRAF V600E/K遺伝子変異陽性悪性黒色腫患者さんに対する「タフィンラー」+「メキニスト」併用療法は米国、欧州、オーストラリア、カナダで承認されています。日本では、「タフィンラー」および「メキニスト」は、BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として、2016年3月に承認され、同年6月に発売されました。
「タフィンラー」+「メキニスト」の併用療法はさらに、米国でBRAF V600E遺伝子変異を有する転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療法として、またEUではBRAF V600遺伝子変異を有する進行性NSCLCの治療法として承認されています。
「タフィンラー」と「メキニスト」は、非小細胞肺がんや悪性黒色腫に関連するRAS/RAF/MEK/ERK経路のセリン・トレオニンキナーゼファミリーの異なるキナーゼ、BRAFおよびMEK1/2をそれぞれ標的とします。「タフィンラー」と「メキニスト」を併用した場合、腫瘍の増殖速度をそれぞれ単剤で用いた場合より抑制することが明らかになっています。「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法については、現在、この併用療法をがん腫横断的に評価するための臨床試験プログラムが世界中の試験施設で進行中です。
承認されている適応症以外では、「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法の安全性および有効性のプロファイルは確立されていません。
「タフィンラー」および「メキニスト」は、BRAF V600遺伝子変異の切除不能または転移性悪性黒色腫患者さんの治療薬としてそれぞれ単剤で、米国および欧州を含む世界60カ国で承認されています。日本でも、「タフィンラー」は単剤として、「メキニスト」は「タフィンラー」との併用において、承認されています。
「タフィンラー®」+「メキニスト®」併用における安全性に関する重要な情報
「タフィンラー」と「メキニスト」の併用投与により、重篤な有害事象が起きる可能性があります。
「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法は、BRAF遺伝子の変異を有する患者さんの治療薬としてのみ使用できます。BRAF遺伝子変異がなく、RAS遺伝子変異を有する患者さんにBRAF阻害剤を投与した場合、細胞増殖のリスクがあるため、医師は治療を開始する前に検査を行う必要があります。
また、BRAF阻害剤を単剤療法で使用したことのある患者さんの場合、わずかですが「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法の有効性が低いことを示すデータがあるため、他の治療法を検討する必要もあります。
「タフィンラー」単独投与、または「メキニスト」との併用投与により、新たながん(皮膚がん、およびその他のがん)が発現する可能性があります。新たな病変、既存の皮膚病変の変化、その他の悪性腫瘍の徴候と症状が認められた患者さんはすぐに医師に報告してください。
「タフィンラー」と「メキニスト」の併用投与、または「メキニスト」単独投与により、重度の出血を引き起こし、死に至る可能性もあります。患者さんは、頭痛、めまい、脱力感、咳に血や血の塊がまじる、血またはコーヒー残渣様の吐物の嘔吐、赤または黒いタール状の便、その他なんらかの異常な出血の徴候が認められた場合は、すぐに医師に報告し適切な処置を受けてください。
それぞれの単独投与、または「タフィンラー」と「メキニスト」の併用投与により、失明に至ることもある重篤な眼障害が起きる可能性があります。患者さんは、視力低下、失明またはその他視覚の変化、色の付いた点が見える、ハロー(物体の周りにぼやけた輪郭が見える)、眼痛、眼の腫れや赤みなどの眼障害の症状が認められた場合は、すぐに医師に報告してください。
「タフィンラー」単独投与、または「メキニスト」との併用投与により、発熱が起きる可能性があり、重篤化する場合もあります。発熱の発現頻度や重症度は「タフィンラー」と「メキニスト」を併用投与した場合により高くなる可能性があります。発熱は、悪寒または悪寒戦慄、過度な体液喪失(脱水)、低血圧、めまい、腎障害を伴う場合があります。ダブラフェニブ投与中に38.5oC(101.3oF)を超える発熱が認められた患者さんは、すぐに医師に報告してください。
「タフィンラー」と「メキニスト」の併用投与、または「メキニスト」単独投与により、心ポンプ機能に影響を与える可能性があります。投与開始前および投与中は患者さんの心機能検査を行う必要があります。患者さんは、動悸、息切れ、足首や足の腫れ、意識朦朧などの心臓障害の症状と徴候が一つでも認められた場合は、すぐに医師に報告してください。
「タフィンラー」単独投与、または「メキニスト」との併用投与により、腎機能障害または腎臓の炎症を引き起こす恐れがあります。腎機能障害は、発熱患者、または体液喪失量が多い患者さんに多く認められます。38.5oCを超える発熱、尿量減少、疲労、食欲不振、下腹部または背部に不快感が認められる場合、すぐに医師に報告する必要があります。「タフィンラー」は腎機能不全(クレアチニン> 1.5 x ULN)の患者さんを対象とした試験が行われていないため、腎機能不全の患者さんに使用する場合は注意が必要です。
「タフィンラー」を「メキニスト」と併用投与、または「メキニスト」単独投与により、肝機能障害を引き起こす場合があります。疲労、食欲不振、黄色皮膚、暗色尿、腹部不快感が認められる場合があります。肝機能障害は、血液検査により評価する必要があります。このような症状が認められた場合は、医師に報告してください。中等度から重度の肝機能障害患者さんに「タフィンラー」または「メキニスト」を投与する場合は注意が必要です。
高血圧の既往の有無にかかわらず、「メキニスト」を「タフィンラー」と併用した患者さん、または「メキニスト」を単独で使用した患者さんの血圧上昇が報告されています。
「メキニスト」を投与する場合は血圧を監視し、必要に応じて標準療法により高血圧をコントロールする必要があります。
「タフィンラー」を「メキニスト」と併用投与、または「メキニスト」単独投与により、肺組織の炎症を引き起こす恐れがあります。息切れや咳など、肺の新たな症状や悪化、あるいは呼吸の問題が認められた場合は医師に報告してください。
「タフィンラー」を「メキニスト」と併用投与、または「メキニスト」単独投与により、副作用として発疹が多く観察されます。また、「タフィンラー」を「メキニスト」と併用投与、または「メキニスト」単独投与により、その他の皮膚反応が起こる可能性もあります。これらの皮膚反応は重症化することがあり、病院での治療が必要となる場合があります。患者さんは、辛いまたは継続する皮疹、ざ瘡、手や足の赤み、腫れ、剥け、または圧痛、皮膚の赤みなどのいずれかの症状が認められた場合は、すぐに医師に報告してください。
「タフィンラー」を「メキニスト」と併用投与、または「メキニスト」単独投与により、横紋筋融解症と呼ばれる筋破壊を引き起こす恐れがあります。筋肉痛、筋肉の圧痛、筋力低下、筋腫脹が認められた場合は、すぐに医師に報告する必要があります。
「タフィンラー」単独投与、または「メキニスト」との併用投与により、膵臓の炎症(膵炎)を稀に引き起こす恐れがあります。原因不明の腹痛がある場合は直ちに検査し、過去に膵炎に罹患した後で「タフィンラー」の投与を再開する場合は、注意深く監視する必要があります。
「タフィンラー」を「メキニスト」と併用投与、または「メキニスト」単独投与により、腕や脚に血栓を生じることがあり、これらが肺に運ばれ死に至る可能性もあります。患者さんは、胸痛、突然の息切れまたは呼吸困難、腫れを伴うまたは伴わない脚の痛み、腕や脚の腫れまたは冷感や蒼白を感じた場合はすぐに医師に報告し、適切な処置を受けてください。
「メキニスト」は単剤投与でも「タフィンラー」との併用投与でも、胃や腸に穴が開く(胃腸穿孔)リスクが高まる可能性があります。「メキニスト」単剤投与または「タフィンラー」との併用投与は、胃腸穿孔のリスクが認識されている医薬品の併用を含め、胃腸穿孔のリスク因子のある患者さんでは慎重に使用しなければなりません。
「タフィンラー」および「メキニスト」は、いずれも胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。また、「タフィンラー」によりホルモン避妊薬の効力が失われる場合があります。
「タフィンラー」と「メキニスト」の併用療法で最も多く認められた副作用には、発熱、悪心、下痢、疲労、悪寒、頭痛、嘔吐、関節痛、高血圧、発疹、咳嗽などがあります。発熱の発現頻度と重症度は「メキニスト」を「タフィンラー」との併用下で投与した場合に高くなります。
辛い副作用が起きたり、副作用が継続する場合は医師や薬剤師に報告してください。「タフィンラー」と「メキニスト」の併用投与により、上記以外の副作用が起きる可能性もあります。詳細については医師や薬剤師にお問い合わせください。
「タフィンラー」と「メキニスト」の併用投与は、医師・薬剤師の指示に厳密に従って行ってください。医師の指導なしに用量を変更したり、服用を中断したりしないでください。「メキニスト」は1日1回(朝または夕方、「タフィンラー」と同じ時間に)のみ服用し、「タフィンラー」は約12時間間隔で服用してください。「タフィンラー」+「メキニスト」は食事の1時間以上前または食後2時間以降に服用してください。「タフィンラー」を服用し忘れた場合、6時間以内に次の投与スケジュールがくる場合は、飲み忘れた分を服用しないでください。「タフィンラー」カプセルは開けたり、潰したり、かみ砕いたりしないでください。「メキニスト」を服用し忘れた場合、12時間以内に次の投与スケジュールがくる場合は、飲み忘れた分を服用しないでください。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、ヘルスケアにおける世界的リーダーです。革新的な新薬、アイケア(眼科用医療機器、コンタクトレンズなど)、高品質かつ安価なジェネリック医薬品など、幅広い分野の製品を提供しています。ノバルティス グループ全体の2016年の売上高は485億米ドル、研究開発費は90億米ドルでした。スイス・バーゼル市に本拠を置くノバルティスは約119,000人の社員を擁しており、世界150カ国以上で製品が販売されています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
参考文献
- Hauschild A, Santinami M, Long GV, et al. COMBI-AD: Adjuvant Dabrafenib (D) Plus Trametinib (T) for Resected Stage III BRAF V600E/K–Mutant Melanoma. Abstract #LBA6. 2017 European Society of Medical Oncology (ESMO), September 8-12, 2017, Madrid, Spain.
- Long GV, Hauschild A, Santinami M, et al. Adjuvant Dabrafenib Plus Trametinib for Stage III BRAF V600E/K– Mutant Melanoma. New England Journal of Medicine. 2017.
- Melanoma Skin Cancer. American Cancer Society. Available at: http://www.cancer.org/acs/groups/cid/documents/webcontent/003120-pdf.pdf. Accessed May 31, 2017.
- Heinzerling L, Kuhnapfel S, Meckbach D. Rare BRAF mutations in melanoma patients: implications for molecular testing in clinical practice. British Journal of Cancer. 2013.
- Melanoma Research Alliance. Adjuvant Therapy. Available at http://www.curemelanoma.org/about-melanoma/melanoma-treatment/adjuvant-therapy/. Accessed July 7, 2017.
以上