ノバルティス、小児・若年成人の再発・難治性 B細胞性ALLおよび成人の再発・難治性 DLBCLの適応で、EMAに販売承認申請を提出~CTL019承認に向けたマイルストーンをまたひとつ達成~
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2017年11月6日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- このEMAへの申請は、FDAが初めて承認したCAR-T細胞医療として2件目となる再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する米国での生物製剤承認一部変更申請(sBLA)に次いで行われた
- ノバルティスは、米国における再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病で培った経験に基づき、欧州におけるCTL019の提供に向けてEMAおよび欧州医療機関と密接に協力
- 販売承認申請には国際多施設共同第II相ELIANAおよびJULIET試験のデータを含み、2017年のASHで発表予定のJULIET試験の6カ月追跡データを使用
2017年11月6日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは、本日、CTL019(tisagenlecleucel)の2件の適応について欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請(MAA)を行ったと発表しました。今回の申請は再発・難治性(r/r)B細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者さんと自家幹細胞移植(ASCT)が適さないr/r びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の成人患者さんの治療を対象にしたものです。CTL019は新規の免疫細胞医療で、患者さん自身のT細胞を使用して、単回投与により行うがん治療法です。
ノバルティスのグローバル医薬品開発部門責任者兼チーフメディカルオフィサーであるヴァサント・ナラシンハン(Vas Narasimhan)は、次のように述べています。「FDAによるCTL019の歴史的な承認後、当社ではこの高度に個別化された免疫細胞医療の販売、製造および供給を行ってきました。今回のEMAへの申請は、この治療法を世界中の重篤ながん患者さんに提供するという目標に向けた大きな前進になります。EMAと協働しながら、この新しい治療の効果を期待できる小児患者さんや成人患者さんにCTL019を提供できるようになることを心待ちにしています」
治療選択肢が限られ、転帰が不良であるr/r B細胞性ALLの小児および若年成人患者さんとr/r DLBCLの成人患者さんでは、革新的な治療の差し迫ったニーズが存在しています。DLBCLは最もよく見られる非ホジキンリンパ腫(NHL)のサブタイプで、世界におけるNHLの全症例の40%を占めています1。二次治療しない場合、r/r DLBCLの平均余命は3~4カ月です2。欧州では、ALLが小児白血病の約80%を占めています3。再発・難治性ALL患者さんのうち、5年以上生存できるのは10%未満です4。
治験責任医師で、ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の慢性リンパ性白血病/リンパ腫臨床治療研究のロバート・マルガリータ・ルイス-ドレフュス准教授で、アブラムソンがんセンターのリンパ腫プログラム代表も務めるステファン・シュスター(Stephen Schuster)医師は次のように述べています。「今年、CLT019(tisagenlecleucel)は再発・難治性ALLに対する治療薬としてFDAによる承認を受け、米国の特定の患者さんとそのご家族にとって現実のものになりました。このときから、がん治療は大きく変わったと私は考えています。データでは、治療選択肢が限られている患者さんの転帰を変える可能性のある画期的な免疫細胞療法であることが示されています。致死的な血液のがんを抱えたより多くの患者さんのために、今回の申請でこの可能性の実現に更に近づくことになります」
CTL019は単回の治療として行われる革新的な免疫細胞医療です。CTL019は細胞の増殖と維持を増強するために、4-1BB共刺激ドメインをキメラ抗原受容体内に使用しています。2012年に、ノバルティスとペンシルベニア大学は、CTL019を含むがんの臨床開発に向けてCAR-T細胞医療の研究・開発を進め、製品化するための国際的な協力契約を結びました。
フランス/リヨンのリヨン市民病院の血液学科の長であるギレ・サレ(Gilles Salles MD, PhD)教授は次のように述べています。「こうした悪性度の高い血液がんを抱えたEUの患者さんにとって、再発や初期治療に対して難治性となった場合に寛解を維持できる可能性がある治療選択肢は非常に限られています。CTL019に関するデータは治療困難な2つの異なるタイプの患者さんの差し迫ったアンメットニーズに対処しながら、持続的な奏効が期待できる、という嬉しい展望を示しています」
MAAの提出は、ペンシルベニア大学と協働で行われているノバルティスの国際多施設共同第II相ELIANAおよびJULIET試験に基づいています。ELIANAは小児を対象にした初めてのCAR-T細胞医療の国際共同治験として、米国、カナダ、オーストラリア、日本、ならびにEUのオーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペインを含む25施設で実施されています。
JULIET試験はr/r DLBCLの成人患者さんを対象にしたCTL019に関する初めての多施設国際共同治験です。JULIETはDLBCLのみを対象にCAR-T細胞医療を評価する最大規模の試験で、米国、カナダ、オーストラリア、日本、ならびにEUのオーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、オランダからなる10カ国27施設で患者さんを登録しています。JULIET試験の6カ月予備解析のデータが2017年12月の米国血液学会(ASH)の年次集会で発表される予定です。
ノバルティスは、米国とEU以外の国でも、2018年にr/r B細胞性ALLの小児、若年成人患者さんおよびr/r DLBCLの成人患者さんを対象とするCTL019の承認申請を行う予定です。
CAR-Tについて
CAR-Tは、患者さんの自家細胞を使って個々の患者さんのために製造されることから、通常の低分子療法や生物療法とは異なります。患者さんの血液からT細胞を採取し、特定の抗原を発現する患者さんのがん細胞および他のB細胞を認識し、攻撃するよう遺伝子がコード化されたT細胞として、製造所で再プログラムされます。
CTL019の製造について
CTL019は、ニュージャージー州モリスプレーンにあるノバルティスの施設で、患者さん自身の細胞を使って個々の患者さんのために製造されます。ノバルティスは、世界規模で、個別化された治療法に対応できる包括的で信頼性の高い製造・供給チェーンの基盤を設計しています。
このプロセスには、患者さんから採取した(白血球分離した)細胞の凍結保存が含まれ、治療を担当する医師や医療機関が個々の患者さんの状態に基づいてCTL019の治療を柔軟に開始できるようにしています。様々な適応を有する、11カ国250人以上の患者さんに治験でCAR-T細胞を製造してきた経験は、製品の再現性を証明しています。ノバルティスはCAR-T製造技術を今後も向上させ、患者さんのニーズに基づき予想される需要に対応できるよう投資を継続していきます。
ノバルティスはドイツ/ライプチヒにある細胞療法免疫療法(Fraunhofer-Institut für Zelltherapie and Immunologie)研究機関のフラウンホーファー研究所でもCTL019の生産プロセスを確立し、現在ではこの研究所が世界各地の治験で使われるCTL019の生産を支援しています。
がん免疫療法におけるノバルティスのリーダーシップ
ノバルティスは、免疫細胞医療研究の先駆的なリーダーとして、CAR-T研究に多大な投資を行い、CAR-T研究者たちと協働する国際的なCAR-T試験を主導した初めての製薬会社です。CAR-T細胞療法として初めて承認されたCTL019は、この戦略の基礎になるものです。その他の血液がんや固形がんを対象にした研究プログラムが積極的に実施されており、製造方法の簡略化や遺伝子組み換え細胞を特徴とする次世代のCAR-Tに焦点を置いた取り組みが行われています。
米国におけるCTL019(tisagenlecleucel)に関する重要な安全性情報(B細胞前駆型急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者)
枠組み警告を含むCTL019の詳細な処方情報は以下を参照のこと:
https://www.pharma.us.novartis.com/sites/www.pharma.us.novartis.com/files/kymriah.pdf
CTL019は、サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性など、重症で生命を脅かす副作用を誘発することがあります。CRSの患者さんは、高熱、呼吸困難、悪寒/悪寒による震え、重症の悪心、嘔吐および下痢、重症の筋肉または関節痛、重度の低血圧またはめまい/ふらつきなどの症状を起こすことがあります。CRSのために入院を余儀なくされたり、他の薬での治療が行われることがあります。
神経毒性を発症した患者さんでは、意識レベルの変化や低下、頭痛、せん妄、混乱、動揺、不安、発作、言語能力や理解力の低下、平衡感覚障害などの症状が生じることがあります。CRSや神経毒性の徴候および症状が現れた場合は直ちに担当医師に連絡するか、救急医療施設を受診するよう患者さんに助言してください。
CRSおよび神経毒性のリスクがあることから、米国においてはCTL019 REMSと呼ばれるリスクマネジメント計画に基づく限定的なプログラムを通してのみ、CTL019は投与されます。
CTL019投与後に、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応が起こる場合があります。CTL019の投与後に、生命を脅かす感染症のリスクが高まり、死に至ることがあります。発熱、悪寒など、感染の徴候や症状が現れたら、直ちに担当医師に連絡するよう患者さんに助言してください。
1種類以上の血液細胞(赤血球、白血球、または血小板)の数が少なくなる、血球減少(血球減少症)が長期的に起こる場合があります。CTL019投与後は、担当医師が血液検査を行ってすべての血球数を検査します。発熱、疲労、あざまたは出血が現れたら、直ちに担当医師に報告するよう患者さんに助言してください。
血液中の免疫グロブリン(抗体)値が低く感染のリスクが上昇する、低ガンマグロブリン血症を起こす場合があります。CTL019後に低ガンマグロブリン血症の発生が予想されるため、CTL019投与後のある一定の期間は、免疫グロブリンの補充が必要になることがあります。生ワクチンの接種を受ける患者さんは、接種の前にCTL019による治療を受けていることを医師に伝えてください。
二次がんや白血病再発の可能性があるため、CTL019による治療後は、医師が長期にわたって患者さんを診察します。
治療により、記憶、ならびに眠気、混乱、虚弱、めまい、発作など、身体調節に一時的な問題が生じる場合があるため、患者さんはCTL019の投与後8週間は、運転、重機の操作、あるいは危険な活動をしないでください。
CTL019の最も一般的な副作用には呼吸困難、発熱(100.4°F/38°C以上)、悪寒/悪寒による震え、混乱、重症の悪心、嘔吐および下痢、重症の筋肉または関節痛、重度の低血圧またはめまい/ふらつきなどがあります。ただし、可能性のあるCTL019の副作用はこれがすべてではありません。患者さんは医師に副作用を報告し、医師に助言を求めてください。
女性患者さんに対してCTL019の投与を開始する前に、医師は妊娠検査を行います。妊娠または授乳中の女性におけるCTL019の使用に関しては情報がありません。したがって、妊娠・授乳中の女性にCTL019は推奨されていません。性的関係があるパートナーがCTL019を投与されている場合、患者さんは避妊と妊娠について医師に相談してください。
患者さんは、医療用医薬品と一般用医薬品、ビタミン剤、ハーブサプリメントを含め、服用しているすべての薬剤について医師に報告してください。
CTL019の投与後は、市販のHIV検査で擬陽性になる可能性があることを患者さんに助言してください。また、CTL019投与後は、血液、臓器、組織および細胞を移植用に提供しないよう患者さんに助言してください。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、ヘルスケアにおける世界的リーダーです。革新的な新薬、アイケア(眼科用医療機器、コンタクトレンズなど)、高品質かつ安価なジェネリック医薬品など、幅広い分野の製品を提供しています。ノバルティス グループ全体の2016年の売上高は485億米ドル、研究開発費は90億米ドルでした。スイス・バーゼル市に本拠を置くノバルティスは約121,000人の社員を擁しており、世界155カ国以上で製品が販売されています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
参考文献
- World Health Organization. Diffuse large B-cell lymphoma. Review of cancer medicines on the WHO list of essential medicines. Available at: http://www.who.int/selection_medicines/committees/expert/20/applications/DiffuseLargeBCellLymphoma.pdf. Accessed November 2017
- Raut, L., Chakrabarti, P. "Management of relapsed-refractory diffuse large B cell lymphoma." South Asian J Can, 2014 Jan-Mar; 3(1): 66-70.
- World Health Organization and European Environment and Health Information System, “Incidence of Childhood Leukaemia.” December 2009. Available at:
http://www.euro.who.int/__data/assets/pdf_file/0005/97016/4.1.-Incidence-of-childhood-leukaemia-EDITED_layouted.pdf. Accessed November 2017. - Ronson, A., Tvito, A., Rowe, JM. “Treatment of Relapsed/Refractory Acute Lymphoblastic Leukemia in Adults.” Current Oncology Reports, 2016 Jun;18(6):39. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27207612. Accessed November 2017.
以上