ノバルティスの「タシグナ®」、小児の慢性骨髄性白血病治療薬として承認を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は、本日、「タシグナ®カプセル50mg・150mg・200mg」(一般名:ニロチニブ塩酸塩水和物、以下「タシグナ」)について、慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病(CML)を効能又は効果として、小児に対する用法および用量に関する製造販売承認事項一部変更承認を取得しました。また、本年11月29日に薬価収載された「タシグナ」の新剤形である50mgカプセルは、本日発売となります。
CMLの標準治療は、国内外ともにチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療ですが、国内で承認されているTKIはいずれも小児のCMLに対する適応を有していなかったことから、CMLの小児患者さんに対する「タシグナ」の至適用法・用量の検討を目的とした開発を行いました。
今回の承認について、ノバルティス ファーマ オンコロジー事業本部長であるデイビッド・レノンは次のように述べています。「治療選択肢の限られたCMLの小児患者さんに、『タシグナ』を提供できることを大変嬉しく思います。ノバルティスは、血液腫瘍領域における経験とリーダーシップをもとに、これからもCML患者さんに貢献していきます」
今回の承認は、初発もしくはイマチニブ又はダサニチブに抵抗性又は不耐容の慢性期CMLの小児患者さん58例(日本人9例を含む)を対象にした国際共同第II相試験に基づいています。初発の慢性期CML小児患者さんのうち、主要評価項目であるサイクル12時点までに少なくとも1回分子遺伝学的効果(MMR)が得られた割合は、64.0%(25例中16例)(95%信頼区間[CI]:42.5, 82.0)でした。イマチニブ又はダサニチブ抵抗性又は不耐容のCML小児患者さんのうち、MMRが得られた患者さんの割合はサイクル6時点で39.4%(33例中13例) (95% CI: 22.9, 57.9) でした1。
小児患者さんで観察された主な副作用は、頭痛(27.6%)、高ビリルビン血症(20.7%)、発疹(20.7%)、悪心(15.5%)、斑状丘疹状皮疹 (13.8%)、嘔吐(12.1%)、脱毛症(10.3%)等でした1。
慢性骨髄性白血病(CML)について
CMLは、赤血球・白血球・血小板など血液のもととなる造血幹細胞の異常により、9番染色体と22番染色体の相互転座によって形成されるフィラデルフィア染色体を特徴とする血液のがんです。フィラデルフィア染色体上に生じる異常な遺伝子(BCR-ABL融合遺伝子)から産生されるBCR-ABL チロシンキナーゼが恒常的に活性化することで、白血病細胞が増殖し、CMLを発症します。CMLの病期は、慢性期、移行期、急性期の3段階から成り、初発時はほとんどが慢性期で診断されます。成人では検診で早期発見されることが多いのに対し、小児では採血による検診の機会が少ないことから、しばしば発見が遅れることがありますが、小児においてもCMLの約90%は慢性期で診断されます2。
国内では、1年間に100万人あたり約7~10人が新たにCMLと診断されています。発症のピークは50歳代で、やや男性に多く、CMLは成人における白血病全体の約20%を占めます3。小児のCMLはすべての小児白血病のうちの3%未満とされており、18歳未満の発症頻度は国内で年間約20名程です。そのほとんどは思春期以降に発症しますが、2~6歳の幼児期に発症する場合もあります4。
「タシグナ®」(一般名:ニロチニブ塩酸塩水和物)について
「タシグナ」は、ATPと競合的に拮抗し、BCR-ABL チロシンキナーゼを阻害することにより、効果を発揮するチロシンキナーゼ阻害薬です。「タシグナ」は、120カ国以上で、「グリベック」(一般名:イマチニブメシル酸塩)を含む少なくとも一つの前治療に抵抗性か不耐容の慢性期または移行期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+CML)成人患者さんの治療薬として、また初発慢性期のPh+CML成人患者さんの治療薬として承認されています。日本では、「タシグナカプセル200mg」が「イマチニブ抵抗性の慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病」を適応症として2009年1月に承認を取得した後、2010 年12 月に「慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病」に適応拡大され、「タシグナ®カプセル200mg」の承認事項一部変更承認、「タシグナ®カプセル150mg」の製造販売承認を取得しています。また、本年9月、「タシグナ®カプセル50mg」の製造販売承認を取得しました。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置くヘルスケアにおける世界的リーダー、ノバルティスの医薬品部門の日本法人です。ノバルティス グループ全体の2016年の売上高は485億米ドル、研究開発費は90億米ドルでした。ノバルティスは約121,000人の社員を擁しており、世界約155カ国以上で製品が販売されています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
参考文献
- 「タシグナ」添付文書 2017年12月改訂(第17版)
- Kurosawa H, Tanizawa A, Tono C, et al. (2016) Leukostasis in Children and Adolescents with Chronic Myeloid Leukemia: Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group. Pediatr Blood Cancer; 63:406-11.
- 国立がん研究センター がん情報サービス 「慢性骨髄性白血病」http://ganjoho.jp/public/cancer/CML/ (2017年11月28日情報取得)
- 小児慢性特定疾病情報センター (2015) 小児慢性特定疾病の対象疾病について: 悪性新生物13: 慢性骨髄性白血病 (Internet) Available from: <http://www.shouman.jp/details/1_1_13.html> (Accessed 10 November 2016) (available upon request). [Kinno T, Tsuta K, Shiraishi K, et al. (2014)] Clinicopathological features of nonsmall cell lung carcinomas with BRAF mutations. Ann Oncol; 25(1):138-42.
以上
<参考資料>
「タシグナ®」の製品概要
製品名(下線部は今回追加承認された製品):
「タシグナ®カプセル 50mg」(Tasigna® Capsules 50mg)
「タシグナ®カプセル 150mg」(Tasigna® Capsules 150mg)
「タシグナ®カプセル 200mg」(Tasigna® Capsules 200mg)
一般名:
ニロチニブ塩酸塩水和物(Nilotinib Hydrochloride Hydrate)
効能又は効果*:
慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病
用法及び用量*:
通常、成人にはニロチニブとして1回400mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。ただし、初発の慢性期の慢性骨髄性白血病の場合には、1回投与量は300mgとする。なお、患者の状態により適宜減量する。
通常、小児には体表面積に合わせて次の投与量(ニロチニブとして1回約230mg/m2)を食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
体表面積 | 1 回投与量 |
---|---|
0.32m2以下 | 50mg |
0.33~0.54m2 | 100mg |
0.55~0.76m2 | 150mg |
0.77~0.97m2 | 200mg |
0.98~1.19m2 | 250mg |
1.20~1.41m2 | 300mg |
1.42~1.63m2 | 350mg |
1.64m2以上 | 400mg |
承認取得日:
2017年12月25日(小児に対する用法及び用量追加)
2017年9月4日(50mgカプセル)
薬価収載日:
「タシグナ®カプセル50mg」 2017 年11月29日
「タシグナ®カプセル150mg」 2011 年3月18日
「タシグナ®カプセル200mg」 2009 年3月13日
薬価:
「タシグナ®カプセル50mg」 50mg 1カプセル:1,289.20円
「タシグナ®カプセル150mg」 150mg 1カプセル:3,617.00円
「タシグナ®カプセル200mg」 200mg 1カプセル:4,738.80円
発売日:
2017年12月25日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。