ノバルティス、クッシング病の治療薬「シグニフォー®LAR®」の新剤形、10mgおよび30mgを発売
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は、本日、クッシング病の治療薬「シグニフォー®LAR®筋注用キット」(一般名:パシレオチドパモ酸塩、以下「シグニフォー」)の新たな用量規格として、10mgおよび30mgを発売いたしました。本用量規格は、本年3月23日にクッシング病に対する承認を取得し、本日薬価収載され同日の発売となります。
「シグニフォー」は、ホルモンを過剰分泌する良性腫瘍で発現しているソマトスタチン受容体に結合、活性化することにより、ホルモン分泌を抑制する持続性ソマトスタチンアナログ(Somatostatin analogues : SSA)製剤です。クッシング病治療における「シグニフォー」の開始用量は10mgであり、細かい用量調整を必要とすることから、今回、新たな用量規格として10mg、30mgの剤形追加の承認を取得しました。
「シグニフォー®」について
「シグニフォーLAR」は、2014年11月にEU(欧州連合)で、同年12月には米国において先端巨大症の患者さんに対する治療薬として承認を取得しました。日本国内では、先端巨大症および下垂体性巨人症を適応として、2016年9月に「シグニフォー®LAR®筋注用キット20mg/40mg/60mg」の製造販売承認を取得し、同年12月に販売開始しました。クッシング病に対しては、2017年9月にEUで承認されており、米国では2018年6月に承認されました。国内では、2012年2月に希少疾病用医薬品指定を受け、2018年3月に製造販売承認事項一部変更の承認を取得しました。また、「シグニフォー®LAR®筋注用キット20mg/40mg」におけるクッシング病の適応の承認と同時に、新用量規格として、10mgおよび30mgの剤形追加についても承認を取得しました。
クッシング病について
クッシング病は、脳の下垂体に発生する良性の腫瘍から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、コルチゾールの過剰分泌が引き起こされる疾患で、満月様顔貌(ムーンフェイス)や中心性肥満といった体形変化を伴う兆候が特徴です。多くの場合、高血圧症、糖尿病、骨粗鬆症など、生活習慣病と類似した合併症を併発し、うつ傾向などの精神的な変化が現れることもあります。このように、外見的、精神的な変化を伴うことから、クッシング病患者さんの生活の質(QOL)は非常に低下します。また、病気の進行に伴う免疫機能低下による重篤な感染症や脂質異常症など、生命に関わる合併症を引き起こすリスクがあり、クッシング病患者の死亡率は一般人口と比べて高い(範囲:0.98~9.3倍)と報告されています1,2。国外におけるクッシング病の有病率および発症率は、それぞれ100万人あたり40人、年間1.2~2.4人、国内ではクッシング病の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は874名(2016年)であり3、国内外ともにクッシング病は非常に稀な疾患です。1:4の割合で女性に多く、40歳前後に発症するケースが多いとされています2,4,5。
先端巨大症・下垂体性巨人症について
先端巨大症は、脳下垂体に発生する良性の腫瘍により、成長ホルモンおよびインスリン様成長因子(IGF-1)が過剰に分泌され6、手足や内臓の肥大、先端巨大症様顔貌といった身体的変化がみられる1希少な内分泌疾患です。下垂体性巨人症は、骨端軟骨線閉鎖前の成長ホルモン過剰分泌により、著しい身長増加が認められます。いずれの疾患も下垂体前葉から慢性的に成長ホルモンが過剰に分泌されるという点で同質の疾患であり、成長ホルモンの過剰分泌が長期にわたると、糖尿病、高血圧、心疾患などを引き起こすリスクがあります6。国内での総患者数は、先端巨大症が約11,000名、下垂体性巨人症が約400名で、年間発症数はそれぞれ約700名および約20名と推定されています7,8。両疾患ともに、国内では「下垂体性成長ホルモン分泌亢進症」として、難病に指定されています。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置くヘルスケアにおける世界的リーダー、ノバルティスの医薬品部門の日本法人です。ノバルティス グループ全体の2017年の売上高は491億米ドル、研究開発費は90億米ドルでした。ノバルティスは約125,000人の社員を擁しており、世界150カ国以上で製品が販売されています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
以上
参考文献
- 難病情報センター, クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症) http://www.nanbyou.or.jp/entry/78
- Pivonello R, De Leo M, Cozzolino A, et al. (2015), The Treatment of Cushing's Disease. Endocr Rev; 36(4):385-486.
- 難病情報センター, 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 http://www.nanbyou.or.jp/entry/5354
- Lacroix A, Feelders RA, Stratakis CA, et al. (2015) , Cushing's syndrome. Lancet; 386(9996):913-27.
- 名和田新,高柳涼一,中山秀昭,他 (1999), 副腎ホルモン産生異常症の全国疫学調査. 厚生省特定疾患「副腎ホルモン産生異常症」調査分科会研究報告 平成10年度研究報告書. 厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班:11-55.
- Acromegaly. National Institutes of Health. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. 2008 May; 8(3924): 1-10.
- 厚生省特定疾患間脳下垂体機能障害調査研究班(1993), 疫学調査報告2 末端肥大症・下垂体巨人症.
厚生省特定疾患間脳下垂体機能障害調査研究班平成5 年度報告書;240-2. - 片上秀喜,石川恵美,日高博之,他(2006), 7 先端巨大症・巨人症の発症率と有病率について:
宮崎県(人口100 万人)での検討. 日本内分泌学会雑誌; 82(1):100.
<参考資料>
「シグニフォー®」の製品概要
製品名(下線部は今回承認された用量規格):
「シグニフォー®LAR®筋注用キット10mg」(Signifor® LAR® Kit 10mg)
「シグニフォー®LAR®筋注用キット20mg」(Signifor® LAR® Kit 20mg)
「シグニフォー®LAR®筋注用キット30mg」(Signifor® LAR® Kit 30mg)
「シグニフォー®LAR®筋注用キット40mg」(Signifor® LAR® Kit 40mg)
「シグニフォー®LAR®筋注用キット60mg」(Signifor® LAR® Kit 60mg)
一般名:
パシレオチドパモ酸塩(Pasireotide Pamoate)
効能又は効果*:
- 下記疾患における成長ホルモン、IGF-1(ソマトメジン―C)分泌過剰状態及び
諸症状の改善
先端巨大症・下垂体性巨人症(外科的処置で効果が不十分又は施行が困難な場合) - クッシング病(外科的処置で効果が不十分又は施行が困難な場合)
用法及び用量*:
先端巨大症・下垂体性巨人症の場合
通常、成人にはパシレオチドとして40mgを4週毎に3ヵ月間、臀部筋肉内に注射する。その後は患者の状態に応じて、20mg、40mg又は60mgを4週毎に投与する。
クッシング病の場合
通常、成人にはパシレオチドとして10mgを4週毎に、臀部筋肉内に注射する。
なお、患者の状態に応じて適宜増量できるが、最高用量は40mgとする。
10mg | 20mg | 30mg | 40mg | 60mg | |
先端巨大症・下垂体性巨人症 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
クッシング病 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
承認取得日:
2018年3月23日
薬価基準収載日:
2018年8月29日
薬価(下線部は今回承認された用量規格):
シグニフォー®LAR®筋注用キット10mg 103,034円
シグニフォー®LAR®筋注用キット20mg 184,876円
シグニフォー®LAR®筋注用キット30mg 260,258円
シグニフォー®LAR®筋注用キット40mg 331,728円
シグニフォー®LAR®筋注用キット60mg 466,987円
発売日:
2018年8月29日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。