ノバルティス、疾患活動性を有する二次性進行型MSを適応とした初の経口薬であるシポニモドフマル酸のFDA承認を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2019年3月27日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- シポニモドフマル酸は、過去15年以上で、明確に(特に)疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者に対して承認された初めてで唯一の治療薬1
- 再発寛解型多発性硬化症(RRMS)患者の約80%がSPMSに進行2。シポニモドフマル酸は、SPMSへ進行期のRRMS患者および疾患活動性SPMS患者のアンメットニーズを満たす
- シポニモドフマル酸は、SPMS患者を対象とした最大規模のコントロール臨床試験である第III相EXPAND試験において、身体的障害および認知機能低下に対する効果3を含む疾患進行のリスクを顕著に軽減したことから承認取得した
- シポニモドフマル酸は、clinically isolated syndrome(CIS)、RRMSおよび疾患活動性SPMSに対して承認取得。多くの患者で初回投与観察も不要に
2019年3月27日、スイス・バーゼル発–ノバルティスは本日、シポニモドフマル酸が、疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症(SPMS)だけでなく、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)およびclinically isolated syndrome(CIS)*を含む再発型多発性硬化症の成人患者に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認されたと発表しました。SPMSは、進行性で不可逆的な神経障害を特徴とする多発性硬化症(MS)です4。米国では、承認後約1週間でシポニモドフマル酸が処方可能になる見込みです**。また、特定の心疾患の既往を有する患者を除き、初回投与観察(本剤投与開始時の心臓モニタリング)は不要となります。
ノバルティス ファーマのCEOであるポール・ハドソン(Paul Hudson)は、次のように述べています。「MSに対する最も重要な治療目標は、身体的障害の進行を遅延させ、認知機能を保持することです。シポニモドフマル酸は、疾患活動性を有するSPMS患者にとって、再発とは無関係に身体的機能が障害される段階に移行した場合でも、疾患の進行に対し効果的な初めての経口薬になります。
シポニモドフマル酸は、ノバルティスが、より充実した、すこやかな毎日のために、新しい発想で医療に貢献している証です。MSを克服するという信念のもと、患者に待ち望まれた治療薬を開発しお届け出来ることを嬉しく思います」。
多くの患者は、徐々にRRMSからSPMSに進行します2。したがって、身体的機能障害の進行を遅らせるためには、早期に患者を治療することが重要です。身体的機能障害には、患者が歩行補助具や車椅子を使うことになりかねない歩行障害、膀胱機能障害および認知機能低下等が含まれます5。
米国MS学会の研究エグゼクティブ・バイスプレジデントであるブルース・ベボ(Bruce Bebo)博士は、次のように述べています。「疾患活動性を有する二次性進行型MSの成人患者に新たな治療選択肢をもたらすことが出来たのは喜ばしいことです。私たちは、今回の承認により、再発寛解型MS後の身体的機能障害の進行およびその早期管理について、患者と医療従事者の対話が促進されることを望んでいます」。
今回の承認は、SPMS患者を対象として、シポニモドフマル酸の有効性と安全性をプラセボと比較検討した無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験である第III相EXPAND試験から得られた画期的なデータに基づいています。EXPAND試験に登録された患者は典型的なSPMS集団を代表するもので、試験開始時の患者の平均年齢は48歳、MSの罹病期間は約16年、50%超は総合障害度評価尺度(EDSS)スコアの中央値が6.0で歩行補助具を要していました3。シポニモドフマル酸により、3ヵ月間持続することが確認された身体的機能障害の進行(CDP)に至るリスクが顕著に低下しました(主要評価項目;プラセボと比較して21%低下、p=0.013;スクリーニング前の2年間に再発活動性が認められた患者ではプラセボと比較して33%低下、p=0.0100)3。また、シポニモドフマル酸により、6ヵ月間持続するCDPのリスクが有意に遅延し(プラセボと比較して26%、p=0.0058)、年間再発率(ARR)は55%低下しました3。さらに、EXPAND試験から、認知機能、MRIでの疾患活動性および脳容積の減少(脳萎縮)を含むMSに関連する他の評価尺度においても極めて期待できる結果が示されました3。
最もよくみられた副作用(発現率10%超)は、頭痛、高血圧およびトランスアミナーゼ上昇でした。
EXPAND試験運営委員会のメンバーである臨床研究責任者のブルース・クリー医師(Bruce Cree, MD, PhD, MAS)およびカリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の多発性骨髄腫寄付講座教授であるジョージAジマーマン氏(George A. Zimmermann)は、次のように述べています。「シポニモドフマル酸が承認されたことにより、疾患活動性を有するSPMSに待ち望まれた治療選択肢が得られました。重要なこととして、患者が症状の変化に気づくことを医療従事者が支援し、疾患進行の初期徴候を明らかにする動機づけが得られたという点です」。
ノバルティスは、世界中の患者にシポニモドフマル酸を届けることを目指し、米国以外の規制当局と協力して追加の承認申請を進めています。欧州連合では2019年末にシポニモドフマル酸の薬事的アクションが予測され、スイス、日本、オーストラリアおよびカナダでは本年中に追加の薬事的アクションが予測されています。
*Clinically isolated syndrome(CIS)は、24時間以上継続する神経症状の初回エピソードと定義され、中枢神経系の炎症または脱髄が原因です6。
**利用可能になる時期は、医療提供者がシポニモドフマル酸を診療に取り入れる時期に応じて変わる可能性があります。
EXPAND試験について
EXPAND試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第III相臨床試験で、EDSSスコアが3.0~6.5の様々なレベルの身体的機能障害を有するSPMS患者を対象に、シポニモドフマル酸の有効性および安全性をプラセボと比較しています3。本試験は、これまでのSPMSを対象とした試験としては最大規模の無作為化比較対照試験であり、31カ国から1,651名のSPMS患者が参加しました3。シポニモドフマル酸は、S1P受容体調節薬のこれまでの報告と概して大きく異ならない安全性プロファイルが示されました。また、3ヵ月間持続するCDPのリスクが21%減少し、統計学的に有意でした(p=0.013;主要評価項目)3。CDPは、EDSSで、ベースラインスコアが3.0~5.0の場合は1ポイントの上昇、ベースラインのスコアが5.5~6.5の場合は0.5ポイントの上昇が認められた場合と定義されています3。重要な副次評価項目のうち、T25FWではプラセボとの間に有意差は認められませんでしたが、T2病変容積では、その増加は限定的で、プラセボと比べ約80%抑制していました。その他の副次評価項目では、ARRのプラセボに対する抑制率は55%を示し、ガドリニウム増強病変が認められない患者(89%)および新規またはT2病変の拡大が認められない患者(57%)の割合はプラセボと比べ高くなっていました3。
シポニモドフマル酸について
シポニモドフマル酸は、次世代の選択的スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節薬で、米国では、clinically isolated syndrome(CIS)、再発寛解型疾患および疾患活動性を有する二次性進行型疾患を含む成人の再発型多発性硬化症(RMS)に適応されます。シポニモドフマル酸は、S1P1およびS1P5受容体に選択的に結合します。S1P1受容体では、リンパ球がリンパ節から流出することを防ぎ、その結果、多発性硬化症患者の中枢神経系(CNS)に移行することを防ぎます。これにより、シポニモドフマル酸の抗炎症作用が発揮されます3。また、シポニモドフマル酸はCNS内に移行し、CNS内の特定の細胞(オリゴデンドロサイトおよびアストロサイト)上のS1P5およびS1P1受容体と直接結合し7、ミエリン再形成を促進して炎症を防ぎます。日本において、シポニモドフマル酸は、二次性進行型多発性硬化症を適応として 承認取得申請中です。
多発性硬化症について
多発性硬化症(MS)は、世界でほぼ230万人が罹患しているCNSの慢性疾患です2。MSには、主としてRRMS(診断時の病態として最も頻度が高い)、SPMSおよび一次性進行型MS(PPMS)の3種類の病型があります8。MSは、炎症や組織の脱落によって、脳、視神経および脊髄の正常な機能が障害される疾患です9。
MS患者の約85%が最初はRRMSと診断されます。SPMSは、RRMSの経過を経た後に進行します。SPMSは、神経機能が経時的に徐々に悪化していくことを特徴としています3。これにより、神経系の身体的障害が進行性に蓄積されます。疾患活動性を有する(再発やMRIでの新規活動性の所見が認められる)SPMSにおいて身体的障害の進行を遅延させる安全かつ有効な治療には、今なお高いアンメットニーズがあります4。
神経科学分野におけるノバルティス
ノバルティスは、神経科学分野への強力なコミットメントを継続しており、高いアンメットニーズがある神経疾患に苦しむ患者さんに革新的な治療をお届けすることをお約束します。弊社は、MS、片頭痛、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんおよび注意欠陥多動障害を含む多様な疾患分野で患者さんと医師をサポートすることをお約束し、MS、アルツハイマー病、脊髄性筋萎縮症および神経学専門分野に有望な新薬パイプラインを有しています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約13万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約150カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
- National MS Society Brochure. Disease Modifying Therapies for MS.
http://www.nationalmssociety.org/NationalMSSociety/media/MSNationalFiles.... Accessed March 2019. - Multiple Sclerosis International Federation. Atlas of MS 2013.
http://www.msif.org/wp-content/uploads/2014/09/Atlas-of-MS.pdf. Accessed March 2019. - Kappos L, Cree B, Fox R, et al. Siponimod versus placebo in secondary progressive multiple sclerosis (EXPAND): a double-blind, randomized, phase 3 study. Lancet. Published online March 22, 2018.
http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(18)30475-6. - National Multiple Sclerosis Society. Secondary Progressive MS (SPMS).
https://www.nationalmssociety.org/What-is-MS/Types-of-MS/Secondary-progr.... Accessed March, 2019. - Gross H, Watson C. Characteristics, burden of illness, and physical functioning of patients with relapsing-remitting and secondary progressive multiple sclerosis: a cross-sectional US survey. Neuropsychiatric Disease and Treatment. 2017;13:1349-1357.
- National MS Society. Clinically Isolated Syndrome (CIS). https://www.nationalmssociety.org/Symptoms-Diagnosis/Clinically-Isolated...(CIS). Accessed March 2019.
- Tavares A, et al. Brain distribution of MS565, an imaging analogue of Mayzent (BAF312), in non-human primates. Neurology. 2014;82(10):suppl. P1.168.
- MS Society. Types of MS. https://www.mssociety.org.uk/what-is-ms/types-of-ms. Accessed March 2019.
- PubMed Health. Multiple Sclerosis (MS). http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedhealth/PMH0001747/. Accessed March 2019.