再発又は難治性B-ALLおよびDLBCLの治療を対象とするCAR-T細胞療法「キムリア®」薬価基準収載のお知らせ
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法「キムリア®点滴静注」(一般名:チサゲンレクルユーセル、以下「キムリア」)が、本日付けで薬価基準に収載されたことをお知らせいたします。
ノバルティス ファーマ株式会社は、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19 陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を対象として、本年3月26日に「キムリア」の製造販売承認を取得しました。
「キムリア」は、患者さん自身のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、その細胞が、CD19と呼ばれる抗原を細胞表面に発現するB細胞性の腫瘍(B-ALLとDLBCL)を認識し、攻撃する、新しいがん免疫細胞療法です。「キムリア」による治療は、継続的な投与を必要とせず、投与は一回のみとなります(単回投与)。
「キムリア」の治療は、白血球アフェレーシスによる患者さんの細胞の採取、細胞の調製・凍結、「キムリア」投与後に起こるサイトカイン放出症候群(CRS)や神経系事象といった副作用の管理などを適切に行うことができる医療機関に限られます。ノバルティスは、この治療を安全に提供するため、2019年5月21日付で厚生労働省より発行された、「キムリア」の最適使用推進ガイドラインの施設要件を満たす医療機関と連携し、提供体制を整備してまいります。なお、「キムリア」の治療を提供可能な医療機関については、準備が整い次第、医療関係者向けにご案内する予定です。
ノバルティス オンコロジー ジャパンのプレジデントであるブライアン・グラッツデンは次のように述べています。「再発又は難治性のB-ALL及びDLBCLを患う日本の患者さんに、日本で初めて承認されたCAR-T細胞療法を提供できることを大変嬉しく思います。ノバルティスは、医療機関へのトレーニングやCAR-T細胞療法の提供基盤の構築を通じて、引き続き、安全で持続的な『キムリア』へのアクセスを実現するために、全力で取り組んでまいります」
「キムリア」について
CAR-T細胞療法である「キムリア」は、患者さん自身の細胞を用いて、がんと闘う高度に個別化された画期的な免疫細胞療法です。白血球アフェレーシスという特殊な血液ろ過プロセスを通して、患者さんひとりひとりから採取されたT細胞は、ノバルティスの製造施設で、がん細胞やその他の細胞の表面に発現するCD19抗原を特異的に認識し攻撃するよう、遺伝子導入により改変されます。その後、改変されたT細胞(CAR-T細胞)は、培養、厳格な品質検査といったステップを経て、最終製品として、患者さんが治療を受ける医療機関に輸送されます。CAR-T細胞が患者さんの血液に投与されると、CD19を認識し攻撃する際に伝わる刺激により、CAR-T細胞自身が患者さんの血液内で増殖することから、投与は一度のみで行われます。ノバルティスは、「キムリア」を含むCAR-T細胞療法の研究・開発・製品化を目的として、2012年にペンシルベニア大学とがん治療の研究に関する国際的な協力契約を結んでいます。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約10万5千人の社員を擁しており、7億5千人以上の患者さんに製品が届けられています。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.co.jp
以上
<参考資料>
「キムリア®点滴静注」の製品概要
製品名:
「キムリア®点滴静注」
一般名:
チサゲンレクルユーセル
効能、効果又は性能*:
(1)再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病。
ただし、以下のいずれかの場合に限る。
- 初発の患者では標準的な化学療法を2回以上施行したが寛解が得られない場合
- 再発の患者では化学療法を1回以上施行したが寛解が得られない場合
- 同種造血幹細胞移植の適応とならない又は同種造血幹細胞移植後に再発した場合
(2)再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。
ただし、以下のいずれかの場合であって、自家造血幹細胞移植の適応とならない又は自家造血幹細胞移植後に再発した患者に限る。
- 初発の患者では化学療法を2回以上、再発の患者では再発後に化学療法を1回以上施行し、化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合
- 濾胞性リンパ腫が形質転換した患者では通算2回以上の化学療法を施行し、形質転換後には化学療法を1回以上施行したが、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合
用法及び用量又は使用方法*:
<医療機関での白血球アフェレーシス~製造施設への輸送>
- 白血球アフェレーシス
十分量の T リンパ球を含む非動員末梢血単核球を採取する。 - 白血球アフェレーシス産物の凍結保存
採取後速やかに白血球アフェレーシス産物を調製し、液体窒素気相下で凍結保存する。 - 白血球アフェレーシス産物の輸送
凍結保存した白血球アフェレーシス産物を、梱包して本品製造施設へ輸送する。
<医療機関での受入れ~投与>
- 本品の受領及び保存
凍結した状態で本品を受領し、使用直前まで液体窒素気相下で凍結保存する。 - 投与前の前処置
本品の投与予定日前の 1 週間以内の末梢血白血球数が 1,000/µLを超える場合、本品投与の 2日前までに以下のリンパ球除去化学療法を前処置として行う。前処置の化学療法の特性や患者の状態を考慮の上、前処置から本品投与までに必要な間隔を設定する。- 再発又は難治性の CD19陽性の B細胞性急性リンパ芽球性白血病に用いる場合のリンパ球除去化学療法
- シクロホスファミド水和物 500 mg/m2 を 1 日 1 回 2 日間点滴静注及びフルダラビンリン酸エステル 30 mg/m2 を 1 日 1 回 4日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- シクロホスファミド水和物による Grade 4 注)の出血性膀胱炎の既往がある、又はシクロホスファミド水和物に抵抗性を示した患者には、シタラビン 500 mg/m2 を 1 日 1 回 2 日間点滴静注及びエトポシド 150 mg/m2 を 1 日 1 回 3 日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 再発又は難治性の CD19陽性のびまん性大細胞型 B細胞リンパ腫に用いる場合のリンパ球除去化学療法
- シクロホスファミド水和物 250 mg/m2 を 1 日 1 回 3 日間点滴静注及びフルダラビンリン酸エステル 25 mg/m2 を 1 日 1 回 3日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- シクロホスファミド水和物による Grade 4 注)の出血性膀胱炎の既往がある、又はシクロホスファミド水和物に抵抗性を示した患者には、ベンダムスチン塩酸塩 90 mg/m2 を 1 日 1 回 2日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
注)Grade は CTCAE v.4.03 に準じる。
- 再発又は難治性の CD19陽性の B細胞性急性リンパ芽球性白血病に用いる場合のリンパ球除去化学療法
- 本品の投与
投与直前に本品を解凍し、適応症に応じて下記のとおり単回静脈内投与する。- 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病に用いる場合
- 通常、25 歳以下(投与時)の患者には、体重に応じて以下の投与量を単回静脈内投与する。
- 体重 50 kg 以下の場合には、CAR 発現生 T 細胞として 0.2 ×106~5.0×106 個/kg
- 体重 50 kg 超の場合には、CAR 発現生 T 細胞として 0.1× 108~2.5×108個(体重問わず)
- 再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に用いる場合
通常、成人には、CAR 発現生 T 細胞として 0.6×108~6.0×108個(体重問わず)を単回静脈内投与する。
承認条件:
以下の承認条件が付与されています。
緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍及び造血幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本品を使用すること。
国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用の成績に関する調査を実施することにより、本品使用患者の背景情報を把握するとともに、本品の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本品の適正使用に必要な措置を講じること。
承認取得日:
2019年3月26日
薬価基準収載日:
2019年5月22日
薬価:
1患者あたり 33,493,407円 (投与は1回のみ)
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。