ノバルティスが新規吸入配合剤治療(QVM149)における第II相臨床試験結果から、標準治療の吸入療法に対し有意に改善した結果を発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2019年5月22日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 第II相臨床試験結果によると、喘息治療における新規の吸入配合剤(インダカテロール酢酸塩、グリコピロニウム臭化物、およびモメタゾンフランカルボン酸エステル、以下、IND/GLY/MF)は、標準治療薬(長時間作用型β2作動薬/吸入ステロイド薬– LABA/ICS)に対し呼吸機能の改善が示された
- 別の第II相臨床試験によると、IND/GLY/MFは、投与時間が朝または夕のいずれでも、プラセボに対し呼吸機能の改善が示された
- IND/GLY/MFの配合剤は喘息の1日1回吸入療法として現在開発中であり、用量確認が可能な単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー®」を介してインダカテロール/グリコピロニウムの包括的な気管支拡張作用およびモメタゾンの確立された有効性を送達する
- IND/GLY/MFには、2つの第II相臨床試験において望ましい安全性および忍容性プロファイルが示された
2019年5月22日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは本日、開発中のインダカテロール酢酸塩、グリコピロニウム臭化物、およびモメタゾンフランカルボン酸エステルを含有し、用量確認が可能な「ブリーズヘラー®」を用いて吸入投与する、1日1回固定用量配合喘息治療薬であるIND/GLY/MF(QVM149)に関する新規の第II相臨床試験結果を米国胸部疾患学会(ATS)の2019年度年次国際学会で公開したことを発表しました。
2件の第II相臨床試験によると、IND/GLY/MFは比較対照薬であるサルメテロール/フルチカゾン*(標準治療)1およびプラセボ2より優れており、喘息患者の呼吸機能改善がそれぞれで示されました1。本試験から、IND/GLY/MFでは、投与時間が朝または夕のいずれでもプラセボと比較して改善することも示されました2。
第II相CQVM149B2208試験(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03063086)によると、いずれのIND/GLY/MFの1日1回投与群(150/50/160μg、高用量ICS;150/50/80μg、中用量ICS)も主要評価項目を達成し、最大FEV1(努力性呼気1秒量)がサルメテロール/フルチカゾン*(50/500μg、高用量ICS)1日2回投与と比較して統計学的に有意に改善しており、平均値の差はそれぞれ172 mL(95% CI:137、208)および159 mL(95% CI:123、195)でした(p<0.001)1。
また、サルメテロール/フルチカゾン*50/500μg 1日2回投与と比較して、IND/GLY/MFの高用量と中用量のいずれも副次評価項目であるFEV1AUC5min–1hおよびFEV1AUC5min–23h45minの両時間間隔のFEV1AUC(FEV1曲線下面積)において統計学的に有意な改善が認められました(p<0.001)1。
Lungen Clinic GrosshansdorfのPulmonary Research Institute、Airway Research Center North、German Center for Lung Researchのヘンリック・ワッツ(Henrik Watz)博士は次のように述べています。「これらの結果から、喘息患者さんは、2つの気管支拡張薬(デュアルブロンコダイレーション)と吸入ステロイド薬による新規配合剤による治療により、従来の治療法よりも呼吸機能のベネフィットを得ることが可能であることが示されました」。
CQVM149B2209試験(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03108027)では、IND/GLY/MFの1日1回投与は、投与時間(朝または夕)にかかわらず、成人喘息患者に24時間を通じて呼吸機能のベネフィットをもたらしました。この試験は朝投与と夕投与のどちらにおいても、プラセボと比較して主要評価項目を達成し、14日間にわたるFEV1の改善が示され、その平均値の差はそれぞれ610 mL(90% CI:538、681)および615 mL(90% CI:544、687)でした2。
両試験の安全性データから、望ましいIND/GLY/MFの安全性および忍容性プロファイルが示唆されています。IND/GLY/MF群に認められた有害事象はプラセボ(CQVM149B2209)2およびサルメテロール/フルチカゾン*(CQVM149B2208)1と同程度であり、両試験のいずれの治療期間においても重篤な有害事象は報告されませんでした。
第III相臨床試験を実施中ですが、ノバルティスは「ブリーズヘラー®」を用いて吸入投与されるIND/GLY/MFを臨床および薬事上の点から前進させるため、将来の医学学会でさらにデータと解析を公表するよう計画しています。
Respiratory Development Unit Headのリンダ・アームストロング(Linda Armstrong)は次のように述べています。「様々な喘息治療を利用できるにもかかわらず、3分の1を超える喘息患者さんがコントロール不良の状態にあり、症状や増悪を経験しています。これらの第II相臨床試験の結果は、この1日1回の配合剤にとって有望な進展になります。この新規配合剤による治療は、承認された場合、すでにCOPDで十分に確立されている用量確認が可能な単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー®」と共に、コントロール不良の喘息を持つ人々の人生を改善できる可能性があります」。
* 本邦におけるサルメテロール/フルチカゾンの「用法及び用量」は次の通り。
気管支喘息
成人 通常、成人には1回サルメテロールとして50μg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして100μgを1日2回吸入投与する。
なお、症状に応じて以下のいずれかの用法・用量に従い投与する。
1回サルメテロールとして50μg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして250μgを1日2回吸入投与
1回サルメテロールとして50μg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして500μgを1日2回吸入投与
QVM149(IND/GLY/MF)について
インダカテロール酢酸塩、グリコピロニウム臭化物およびモメタゾンフランカルボン酸エステルの配合剤(IND/GLY/MF)は、コントロール不良の喘息の治療を目的に現在開発中です。この製剤は、インダカテロール酢酸塩[LABA(長時間作用型β2作動薬)]およびグリコピロニウム臭化物[LAMA(長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬)]の包括的な気管支拡張作用とモメタゾン[高用量または中用量のICS(吸入ステロイド)]を正確な1日1回投与製剤として統合したものであり、用量確認が可能な「ブリーズヘラー®」を用いて吸入投与します。グリコピロニウムおよび特定の用途と製剤の知的財産は、2005年4月にSosei HeptaresおよびVecturaにより、ノバルティスに独占的に許諾されました。モメタゾンは、QVM149(米国を除く世界各国)での使用が米国ニュージャージー州ケニルワースにあるメルク・アンド・カンパニーの子会社からノバルティスに独占的に許諾されます。
CQVM149B2208試験(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03063086)について3
CQVM149B2208試験は、第II相、無作為化、二重盲検、ダブルダミー、実薬対照、投与期間21日の3期間クロスオーバー試験であり、中等症から重症の喘息を持つ成人を対象として実施された。患者は、高用量または中用量のグリコピロニウム/インダカテロール/モメタゾン(150/50/160μgが高用量ICS製剤、150/50/80μgが中用量ICS製剤)の1日1回投与群またはサルメテロール/フルチカゾン*(50/500μg、高用量ICS)の1日2回投与群無作為に割り付けられました。
無作為割付けされた患者の116名中107名が試験を完了しました。参加者の年齢中央値(範囲)は52.0(18~76)歳で、52.6%が男性でした。スクリーニング時における気管支拡張薬吸入前のFEV1平均値(SD)(正常値の予測%)は62.1%(11.5)で、可逆性の平均値(SD)は23.9%(12.61)でした。患者の大部分(90.5%)は、安定した中用量または高用量のICSを投与されました。
各治療期間の終了時にスパイロメトリーを実施しました。主要評価項目は、各治療期間の最終投与後4時間の最大FEV1でした。副次評価項目は、FEV1AUC(AUC5min–1h;AUC5min–23h45min)および安全性評価でした。
CQVM149B2209試験(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03108027)について4
CQVM149B2209試験は、第II相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、3期間クロスオーバー試験であり、37名の成人喘息患者を対象として14日間にわたり、IND/GLY/MF(150/50/80 μg)を朝または夕に投与したときの気管支拡張作用をプラセボと比較検討した。
無作為割付けされた37名中34名が3投与期間を完了しました。参加者の年齢中央値(範囲)は46.0(18~72)歳で、56.8%が男性でした。スクリーニング時における気管支拡張薬吸入前のFEV1平均値(SD)は75.8%(9.0)で、患者さんの83.3%は安定した低用量ICS、16.2%は中用量ICSを投与されていました。可逆性の平均値(SD)は18.9%(7.83)でした。
各治療期間の終了時にスパイロメトリーを実施しました。主要評価項目は、IND/GLY/MFまたはプラセボの朝または夕の最終投与後の加重FEV1AUC(AUC0–24h)でした。
喘息について
喘息は世界中で3億5800万人が罹患していると推定され、コントロール不良の場合は、個人、健康、経済的負担の点から重大な問題を引き起こしかねません5,6。様々な喘息治療を利用できるにもかかわらず、3分の1を超える喘息患者さんがコントロール不良の状態にあります7。
呼吸器分野におけるノバルティスについて
ノバルティスは呼吸器分野のリーディング-カンパニーであり、世界中の肺疾患を持つ人々の人生を改善させるため、新たな進展を推進しています。ノバルティスは、勇気ある革新と患者および医療関係者との密接な協力関係を通じて、喘息管理のアンメットニーズを解決し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療転帰をよりよいものにすることをお約束します。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の7億5千万人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万5千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約140カ国に及びます。ノバルティスに関する詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Watz, H et al. The Combination of Indacaterol/Glycopyrronium/Mometasone Furoate is Superior to High-Dose Salmeterol/Fluticasone Propionate in Improving Lung Function in Patients with Asthma. ATS abstract 2019
- Beier, J et al. The Efficacy of the Combination Indacaterol/Glycopyrronium/Mometasone Furoate is Independent of Time of Dosing in Patients with Asthma. ATS abstract 2019
- NIH: ClinicalTrials.gov. Assess Bronchodilator Effect and Safety of Two Doses of QVM149 Compared to a Fixed Dose Combination of Salmeterol/Fluticasone in Patients With Asthma. Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03063086?term=NCT03063086&rank=1. Accessed April 2019
- NIH: ClinicalTrials.gov. Assess Bronchodilator Effect QVM149 Dosed Either in the Morning or Evening Compared to Placebo in Patients With Asthma (QVM149). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03108027?term=NCT03108027&rank=1. Accessed April 2019
- BD Chronic Respiratory Disease Collaborators. Global, regional, and national deaths, prevalence, disability-adjusted life years, and years lived with disability for chronic obstructive pulmonary disease and asthma, 1990-2015: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. Lancet Respir Med 2017: 5(9): 691-706.
- Global Inititative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2018. Available from http://ginasthma.org/gina-reports/. Accessed in April 2019
- Fang J, Busse W, Marvel J, Tian H, Altman P, Cao H. Demographic, clinical characteristics and control status of pediatric, adolescent, and adult asthma patients by GINA Step in a US longitudinal cohort. Am J Resp Crit Care Med 2018: 197:A1903.