ノバルティス、治験薬カプマチニブ(INC280)の最新データ、およびカナキヌマブの新たな臨床試験により、肺がん医療のイノベーションでめざましい成長を示す
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2019年6月3日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 治験中のカプマチニブ(INC280)は、METエクソン14スキッピング変異を有する局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたGEOMETRY mono-1試験の主要解析で有望な有効性を示す
- カプマチニブを投与した患者における全奏効率は、未治療の患者群で68%、治療歴のある患者群で41%を示し、さらに前治療を問わず臨床的に有意な奏効期間中央値を示した
- 米国食品医薬品局(FDA)は、METエクソン14スキッピング変異を有し、白金製剤をベースとした化学療法による治療中または治療後に増悪が認められた転移性NSCLC患者に対する治療薬として、カプマチニブを画期的治療薬(ブレークスルーセラピー)に指定。各国の規制当局との討議が進行中
- その他、2019年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、ステージIIからステージIIIのNSCLC患者を対象としたカナキヌマブ(ACZ885)の単剤療法を評価する第III相試験を含め、複数のCANOPY臨床試験のデザインを発表
2019年6月3日、スイス・バーゼル発–ノバルティスは、2019年度ASCO年次総会で、NSCLCに関する新たなデータおよび臨床試験の最新情報を発表しました。これには、第II相臨床試験であるGEOMETRY mono-1の主要な有効性の結果が含まれます。本試験では、METエクソン14スキッピング変異を有する局所進行または転移性NSCLC患者において、治験段階のMET阻害薬カプマチニブ(INC280)が有望な治療選択肢であることが示されました。現在、この特に悪性度の高いMET遺伝子変異陽性のNSCLCにおいて承認された標的療法は存在しません。第II相試験の結果は、ASCOで口頭発表されました(2019年6月3日8:00 a.m. CDT、アブストラクト#9004)1。
GEOMETRY mono-1は、国際共同、前向き、マルチコホート、非無作為化、非盲検試験であり、カプマチニブ錠400 mgを1日2回経口投与されたMETエクソン14スキッピング変異を有する局所進行または転移性NSCLCの成人患者97例を評価した臨床試験です。未治療の患者群(コホート5b:28例)における主要評価項目である、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors:固形がんの効果判定規準)v1.1に準拠した盲検下独立判定委員会(BIRC)の評価に基づく全奏効率(ORR)は68%[95%信頼区間(CI):47.6-84.1]でした。治療歴のあるNSCLC患者群(コホート4:69例)においても、41%で奏効が認められました(95% CI:28.9-53.1)。主要な副次評価項目である奏効期間(DOR)中央値は、それぞれ11.14カ月(95% CI:5.55-NE)および9.72カ月(95% CI:5.55-12.98)でした。脳病変を有する患者を対象とした神経放射線科医のad-hocレビューでは、対象患者の54%(n = 7/13)で頭蓋内活性が観察され、一部の症例では脳病変が完全に消失しました。すべての結果はBIRCによる独立評価に基づいており、すべての腫瘍CTスキャンは2名の放射線科医が並行して評価し、奏効を確認しました。
全コホート(n = 334)で最も多く認められた治療に関連する有害事象(AE)(全グレードで10%以上)は、末梢性浮腫(42%)、悪心(33%)、血中クレアチニン増加(20%)、嘔吐(19%)、疲労(14%)、食欲減退(13%)および下痢(11%)でした。有害事象の大半はグレード1/2でした。
ノバルティスのグローバル医薬品開発責任者でありチーフメディカルオフィサーであるジョン・ツァイ医師(John Tsai, MD)は次のように述べています。「肺がんは世界中で毎年200万人以上が新たに罹患する命を脅かす疾患であり、新たな治療選択肢はきわめて重要です。GEOMETRY mono-1の結果は有望で、悪性度の高い肺がん患者さんに、この標的治療の選択肢を提供できるよう、規制当局と話し合しえることを心待ちにしています」
カプマチニブ、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)および画期的治療薬(ブレークスルーセラピー)に指定
米国食品医薬品局(FDA)は、METエクソン14スキッピング変異を有し、白金製剤をベースとした化学療法による治療中または治療後に増悪が認められた転移性NSCLC患者に対する治療薬として、カプマチニブをブレークスルーセラピーに指定しました。これまで、FDAおよび厚生労働省は、カプマチニブをオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定しています。MET変異はNSCLC患者全体の3~4%において同定されると推定されています3。
ケルン大学病院のJuergen Wolf医師は、次のように述べています。「GEOMETRY mono-1試験で観察されたカプマチニブの有効性は有望です。 MET遺伝子変異を有する一次治療患者さんでの良好な全奏効率に加えて、脳内での活性を含む奏効期間およびカプマチニブの安全性プロファイルは、この患者集団にとっての重要なマイルストーンとなります。なぜなら、MET遺伝子変異を有するNSCLC患者は、一般的に高齢でしばしば特別な臨床的配慮を必要とする上、予後不良でその治療選択肢がさらに制限されるためです」
GEOMETRY mono-1について
GEOMETRY mono-1は、国際共同、前向き、マルチコホート、非無作為化、非盲検の第II相試験であり、EGFR野生型、ALK融合遺伝子陰性、MET遺伝子増幅および/または変異を有する進行NSCLCの成人患者を対象とした、カプマチニブ(INC280)単剤の有効性および安全性を評価する臨床試験です。METエクソン14スキッピング変異(中央検査によって確認)を有する局所進行または転移性NSCLC患者を、MET遺伝子増幅/遺伝子コピー数にかかわらず、コホート4(治療歴のある患者群)または5B(未治療の患者群)に割り付け、カプマチニブ錠400 mgを1日2回経口投与しました。主要評価項目は、RECIST v1.1に準拠したBIRC評価に基づくORRです。主要な副次的評価項目は、BIRCによる奏効期間(DOR)です。GEOMETRY mono-1試験では、ORRは未治療の患者群(n = 28)で67.9%(95% CI:47.6-84.1)、治療歴のある患者群(n = 69)で40.6%(95% CI:28.9-53.1)でした。DOR中央値は、未治療の患者群で11.14カ月(95% CI:5.55-NE)、治療歴のある患者群で9.72カ月(95% CI:5.55-12.98)でした1。
最も多く認められた治療に関連する有害事象は、末梢性浮腫、悪心、血中クレアチニン増加および嘔吐でした。カプマチニブを投与された患者のうち、84%に有害事象が発現し、36%にグレード3/4の有害事象が発現しました(グレード4は4.5%のみ)1。
カプマチニブ(INC280)は、2009年にノバルティスがIncyte社からライセンスを取得した、治験段階の経口および選択的MET阻害薬です。この契約に基づき、Incyte社はノバルティスに対し、あらゆる適応症におけるカプマチニブおよび特定のバックアップ化合物の全世界での開発および商品化の独占的実施権を付与しました。
腫瘍の進展に関与する炎症を標的とした肺がんにおける臨床試験 – 進行中のCANOPY試験
CANOPY臨床プログラムに関する進行中の試験の最新情報もASCOで発表されました。CANOPYは、選択的IL-1β阻害薬カナキヌマブ(ACZ885)を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照第III相試験3試験で構成されます(アブストラクト#TPS9124)4,5。
- CANOPY-Aは、病期がII~IIIA期で外科的完全切除後の成人NSCLC患者を対象に、術後補助療法としてのカナキヌマブの有効性および安全性を評価する第III相多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験です。主要評価項目は、無病生存率です(アブストラクト#7013)
- CANOPY-1は、未治療のIIIB/IIIC~IV期の扁平上皮および非扁平上皮NSCLC患者を対象に、白金製剤をベースとした化学療法およびペムブロリズマブとの併用でカナキヌマブをプラセボと比較検討する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第III相試験です。本試験では、投与開始後42日間の用量制限毒性(DLT)発現率のほか、無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)も評価します
- CANOPY-2は、PD-1またはPD-L1阻害薬および化学療法による治療歴のあるIIIB~IV期NSCLC患者を対象に、ドセタキセルとの併用でカナキヌマブをプラセボと比較検討する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第III相試験です。主要評価項目は、投与開始後42日間のDLT発現率およびOSです
肺がんに対するノバルティスのコミットメント
世界的に肺がんによる死亡者数は、結腸がん、乳がん、前立腺がんを合わせた数よりも多いとされており、毎年200万人以上の人々が新たに肺がんの診断を受けています2。治療は進歩しているものの、NSCLC患者さんの予後は依然として不良であり、治療選択肢は限られています。NSCLC患者さんの約70%は、治療可能な標的となり得る遺伝子変異を有しています6。 最も適切な治療法を決定するために、医療関連学会は肺がん患者さんの遺伝子検査を推奨しています7。
ノバルティス・オンコロジーの研究は、NSCLCとともに生きる患者さんの治療法を改善することに貢献しています。ノバルティスは、進行中の試験のみならず、NSCLCにおける治験薬の探索を通じて、世界の肺がんコミュニティへのコミットメントを継続しています。これには、遺伝子バイオマーカーおよび腫瘍を促進させる炎症を標的とした治験薬が含まれます。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の7億5千人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万5千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約140カ国に及びます。
https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Juergen Wolf. カプマチニブ (INC280) in METΔex14-mutated advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): efficacy data from the Phase II GEOMETRY mono-1 study. Abstract #9004. 2019 American Society of Clinical Oncology Annual Meeting (ASCO), May 31-June 4, 2019, Chicago, IL.
- Globocan. Lung Fact Sheet. Available at http://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/15-Lung-fact-sheet.pdf. Accessed October 9, 2018.
- Salgia R. MET in Lung Cancer: Biomarker Selection Based on Scientific Rationale. Mol Cancer Ther. 2017;16(4):555-565.
- Luis Paz-Ares. The CANOPY Program: Canakinumab in Patients (pts) With Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC). Abstract #TPS9124. 2019 American Society of Clinical Oncology Annual Meeting (ASCO), May 31-June 4, 2019, Chicago, IL.
- Edward B. Garon. CANOPY-A: A phase III study of canakinumab as adjuvant therapy in patients with surgically resected non-small cell lung cancer (NSCLC). Abstract #TPS8570. 2019 American Society of Clinical Oncology Annual Meeting (ASCO), May 31-June 4, 2019, Chicago, IL.
- Hirsch FR, Suda K, Wiens J, et al. New and emerging targeted treatments in advanced non-small-cell lung cancer. Lancet. 2016;388:1012-1024.
- Lindeman NI, Cagle PT, Beasley MB, et al. Molecular Testing Guideline for Selection of Lung Cancer Patients for EGFR and ALK Tyrosine Kinase Inhibitors. J Thorac Oncol. 2013;8(7):823-859.