ノバルティス、シポニモドフマル酸のEUでの承認取得を発表 疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症の成人患者が対象
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年1月20日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- シポニモドフマル酸は、欧州で疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症(以下、SPMS)患者に適応となる初めての経口治療薬1
- シポニモドフマル酸は、今まで疾患進行の抑制効果を示した経口治療薬がなかった疾患活動性を有するSPMS患者に対するアンメットニーズに応える
- 欧州での承認は、広範囲なSPMS患者を対象とした大規模の無作為化比較対照臨床試験であるEXPAND試験において、シポニモドフマル酸が身体的機能障害や認知機能障害などの疾患進行のリスクを有意に低下させたことを示したデータに基づく2,3
2020年1月20日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは、本日、欧州委員会(以下、EC)が、疾患活動性(再発や画像上での炎症性疾患活動所見)を有する二次性進行型多発性硬化症(以下、SPMS)に対する成人患者の治療薬としてシポニモドフマル酸を承認したことを発表しました。多発性硬化症(以下、MS)の疾患の経過は個々の患者ごとに異なりますが、再発寛解型MS(以下、RRMS)患者の80%で最終的にSPMSに進行します4。シポニモドフマル酸は、今まで疾患進行に対し効果的な経口薬がなかった、疾患活動性を有するSPMS患者に対するアンメットニーズに応えます。シポニモドフマル酸は、広範囲なSPMS患者を対象とした無作為化臨床試験に基づき、疾患活動性を有するSPMS患者に対し、欧州で初めて承認された経口治療薬となります。
ヨーロッパMSプラットフォームのペドロ・カラスカル(Pedro Carrascal)会長は、次のように述べています。「ヨーロッパの疾患活動性を有するSPMS患者さんに対し、疾患の進行を遅らせる可能性がある治療法が使用出来るようになったことは大変喜ばしいことです。この治療法が、長年治療が十分でなかった患者さんに対する治療と生活の質の向上をもたらすことを期待しています」。
ECの承認は、EDSSスコアが3.0~6.5の広範囲な身体的機能障害を有するSPMS患者を対象に、シポニモドフマル酸の有効性および安全性をプラセボと比較した無作為化、二重盲検、プラセボ対照第III相臨床試験であるEXPAND試験に基づくものです。
EXPAND試験には、1,645名の全体集団(FAS)のうち、試験エントリー前2年間に再発した患者またはベースライン時にT1強調像(ガドリニウム造影剤使用)で病変が認められた疾患活動性を有するサブグループ(n=779)が含まれていました。ベースラインの特性は、全体集団と比較して活動性の徴候を除いて類似していました。
シポニモドフマル酸が投与された疾患活動性を有するサブグループでは、以下の結果が示されました。
- シポニモドフマル酸は、3ヵ月および6ヵ月持続する障害進行(以下、CDP)のリスクを、プラセボ群に対しそれぞれ31%、37%有意に低下させた5
シポニモドフマル酸は、年間再発率(以下、ARR)、MRIによる疾患活動性および脳萎縮など、MSの疾患活動性に関する他の評価項目に対しても有意な有効性を示しました5。全体集団における結果から、シポニモドフマル酸は3ヵ月持続するCDPのリスクを有意に低下させ(主要評価項目;プラセボに対し21%低下、p=0.013)、6ヵ月持続するCDPのリスクを有意に遅延させることが示されました (プラセボに対し26%、p=0.0058) 2。また、シポニモドフマル酸はMSによる認知機能の低下に対し、処理速度の評価において、臨床的に意義のある有効性を示しました5。
ノバルティス ファーマの中枢神経領域のグローバル責任者であるマックス・ブリッチ(Max Bricchi)は、次のように述べています。
「今まで有効な経口療法がなかった疾患活動性を有するSPMS患者に対するシポニモドフマル酸の欧州での承認が、進行型MSの治療に関する対話を変え、患者と介護者の可能性を広げられることを嬉しく思います。疾患の進行を遅らせることは、自立をより長く維持したいMS患者さんにとって非常に重要であり、今回の決定は、そのゴールを達成する機会を患者さんに与えてくれます。私たちのミッションである『医薬の未来を描く』ことを通じて、MSのような難しい進行性疾患の患者さんに、より明るい将来をお届けしたいと考えています」
ノバルティスは、全ての関係者と緊密に連携し、欧州の患者さんがこの治療の恩恵をできるだけ早く受けられるように努めてまいります。ノバルティスでは、シポニモドフマル酸に関して、clinically isolated syndrome(CIS)*、再発寛解型疾患、疾患活動性二次性進行型疾患を含む再発型多発性硬化症(RMS)の成人患者に対する治療薬として、2019年3月に米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得しました。
ノバルティスは、2019年11月にシポニモドフマル酸を成人SPMS患者に対する治療薬として、オーストラリア医療製品管理局(TGA)から承認を取得しました。ノバルティスは、世界中の患者さんにシポニモドフマル酸を届けることを目指し、スイス、日本、カナダおよび中国で、承認申請中です。
シポニモドフマル酸について
シポニモドフマル酸は、S1P1およびS1P5受容体に選択的に結合します。S1P1受容体に作用することにより、リンパ球がリンパ節から移出することを防ぎ、その結果、それらのリンパ球が多発性硬化症患者の中枢神経系(CNS)に移行することを防ぎます2。これにより、シポニモドフマル酸の抗炎症作用が発揮されます6。また、シポニモドフマル酸はCNS内に移行し7,8,9、CNS内の特定の細胞(オリゴデンドロサイトおよびアストロサイト)上のS1P5受容体と結合し、ミエリン再形成の促進作用と神経保護作用が非臨床試験で示唆されています10,11,12。
欧州連合(EU)では、シポニモドフマル酸は、疾患活動性(再発や画像上での炎症性疾患活動の所見)を有する二次性進行型多発性硬化症(SPMS)に対する成人患者の治療薬として承認されました。米国では、シポニモドフマル酸は、clinically isolated syndrome(CIS)*、再発寛解型疾患、疾患活動性二次性進行型疾患を含む再発型多発性硬化症(RMS)の成人患者に対する治療薬として承認されました。ノバルティスは、2019年11月にシポニモドフマル酸を成人SPMS患者に対する治療薬として、オーストラリア医療製品管理局(TGA)から承認を取得しました。米国、オーストラリアおよびEUにおける承認は、広範囲なSPMS患者(EDSSの中央値は6.0)を対象とした大規模の無作為化比較対照臨床試験であるEXPAND試験データに基づき2シポニモドフマル酸が身体的機能障害や認知機能障害などの疾患進行のリスクを有意に低下させたことによるものです。ノバルティスは、世界中の患者さんにシポニモドフマル酸を届けることを目指し、スイス、日本、カナダおよび中国で、承認申請中です。
EXPAND試験について2
EXPAND試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第III相臨床試験で、EDSSスコアが3.0~6.5の様々なレベルの身体的機能障害を有するSPMS患者を対象に、シポニモドフマル酸の有効性および安全性をプラセボと比較しています。本試験は、これまでのSPMSを対象とした試験としては最大規模の無作為化比較対照試験であり、31カ国から1,651名のSPMS患者が参加しました。シポニモドフマル酸は、S1P受容体調節薬のこれまでの報告と概して大きく異ならない安全性プロファイルが示されました。また、3ヵ月持続するCDPのリスクが21%減少し、統計学的に有意でした(p=0.013;主要評価項目)。CDPは、EDSSで、ベースラインスコアが3.0~5.0の場合は1ポイントの上昇、ベースラインのスコアが5.5~6.5の場合は0.5ポイントの上昇が認められた場合と定義されています。重要な副次評価項目のうち、25 フィート時間制限性歩行試験(T25FW)ではプラセボとの間に有意差は認められませんでしたが、T2病変容積では、その増加は限定的で、プラセボと比べ79%抑制していました。その他の副次評価項目では、年間再発率(ARR)のプラセボに対する抑制率は55%を示し、ガドリニウム増強病変が認められない患者(89% vs プラセボ67%)および新規またはT2病変の拡大が認められない患者(57% vs プラセボ 37%)の割合はプラセボと比べ高くなっていました。
第35回欧州多発性硬化症治療研究委員会(ECTRIMS)で発表された追加の探索的解析により、シポニモドフマル酸は患者の移動能力(車椅子生活になるまでの期間)を平均4年以上長く維持できることが実証されました13†。
多発性硬化症について
MSは、炎症や組織の脱落によって、脳、視神経および脊髄の正常な機能が障害される疾患です14。世界中で約230万人が罹患しているMSは、RRMS、SPMS、PPMSの3種類の病型に分けられます15。SPMSは、RRMSの経過を経た後に進行します。SPMSは、神経機能が経時的に徐々に悪化していくことを特徴としています16。これにより、神経系の身体的障害が進行性に蓄積されます。疾患活動性(再発やMRIでの新規活動性の所見)を有するSPMSにおいて身体的障害の進行を遅延させる安全かつ有効な治療には、今なお高いアンメットニーズがあります16。
多発性硬化症に対するノバルティスの取組みについて
ノバルティスの多発性硬化症治療薬のポートフォリオには、シポニモドフマル酸に加えて、EUにおいて成人、10歳以上の小児のRMSに対して適応を有する「ジレニア®」(S1P調節薬、一般名:フィンゴリモド塩酸塩)(「ジレニア」)があります。
米国では、「ジレニア」は、成人および10歳以上の小児患者に対するRMSに加えて、RRMSおよび疾患活動性を有するSPMSも適応として承認されています。日本において「ジレニア」は、「多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」を効能又は効果として発売しております。
オファツムマブ(OMB157)は、CD20陽性B細胞を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)で、RMSに対する治療薬として開発中です。2019年9月に発表された第III相臨床試験結果では、RMS患者においてオファツムマブがARRを低下させ、主要評価項目を達成しました17。オファツムマブが承認されれば、RMS患者に対し幅広く使用できる治療薬となるとともに、月1回の在宅自己注射**により開始および管理が容易な初のB細胞療法となる可能性があります。
皮下注射用インターフェロンベータ-1bは、米国ではCIS、RRMSおよび疾患活動性を有するSPMSを含むRMSの治療薬として承認され、欧州ではRRMS、疾患活動性を有するSPMS、およびMSを示唆する単相性の臨床症状を有する患者(CIS)に対する治療薬として承認を取得しています。
ノバルティスのサンド事業部門は、米国において、テバ社のグラチラマー酢酸塩のジェネリック医薬品であるグラチラマー酢酸塩注射剤 20 mg/mL、40 mg/mLを販売しています。
*Clinically isolated syndrome(CIS)は、24時間以上継続する神経症状の初回エピソードと定義され、中枢神経系の炎症または脱髄が原因です18。
†SPMS患者における車椅子生活になるまでの期間がプラセボと比較して平均4.3年延長
**オファツムマブの在宅自己注射の日本における適応については未定です。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の7億5千万人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万8千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約140カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
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- Kappos L, Cree B, Fox R, et al. Siponimod versus placebo in secondary progressive multiple sclerosis (EXPAND): a double-blind, randomized, phase 3 study. Lancet. Published online March 22, 2018. http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(18)30475-6.
- Mayzent® (siponimod) Summary of Product Characteristics. Novartis International AG. January 2020.
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ノバルティス、シポニモドフマル酸のEUでの承認取得を発表 疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症の成人患者が対象(PDF 492KB)