ノバルティス、「ネオーラル」に川崎病の急性期の効能追加承認取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は本日、千葉大学、東京女子医科大学、和歌山県立医科大学を中心に全国22の医療機関(以下、研究グループ)が実施した医師主導治験のデータをもとに、「ネオーラル®内用液10%」(一般名:シクロスポリン、以下「ネオーラル」)について「川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)」の効能追加の承認を取得いたしました。
川崎病は、小児科医の川崎富作氏が1967 年に初めて報告した主に乳幼児が罹患する原因不明の血管炎症候群です1。日本人の罹患率は欧米の10~20 倍であり2、2016年の本邦における川崎病の患者数は年間15,272人と報告されています3。主要な症状としては、発熱、両方の目が赤くなる(両側眼球結膜充血)、唇が赤くなる、いちごのような舌が見られる(口唇・口腔所見)、発疹、手足の紅斑やむくみ(四肢末端の変化)および急性期における首のリンパ節の腫れ(非化膿性頸部リンパ節腫脹)があります4。川崎病では、全身の血管に炎症が起こりますが、その中でも特に心臓の冠状動脈が侵襲されやすく5、突然死や心筋梗塞を引き起こす冠状動脈病変(coronary artery lesion、以下CAL)を合併することがあり、小児の後天性心疾患の原因となっています。川崎病の急性期の治療目標は、CAL 合併を最小限とするために、強い炎症反応を可能な限り早期に終息させることです6。
川崎病の急性期の標準治療は、静注用免疫グロブリン(intravenous immunoglobulin、以下IVIG)の単回静脈内投与とアスピリン経口投与の併用とされており、川崎病と診断されたほぼすべての患者に適応されています6。この標準治療により、概ね80%の患者は解熱しますが、残りの約20%はIVIG 終了後24 時間以内に解熱しないか再燃してしまいます。こうした患者ではCAL 合併リスクが高いため7、追加治療の選択はCAL 合併を抑える重要な鍵となっており長い間検討されてきました。
免疫抑制剤「ネオーラル」は、主にヘルパーT 細胞の活性化を抑制することで、IL-2 等のサイトカイン産生を阻害し、強力な免疫抑制作用を示しますが、効能として川崎病を取得している国はありませんでした8。研究グループが、IVIG不応例と予測される川崎病患者に対する「ネオーラル」の医師主導治験(CHI-CsA-004 試験、以下CsA-004 試験)を行うことで、川崎病に対する「ネオーラル」の有効性および安全性が実証されました。
CsA-004 試験の主要評価項目は、試験期間中のCAL 合併割合であり、「ネオーラル」と IVIGの併用群で14.0%(12/86 名)、IVIG 単独群で31.0%(27/87 名)と、「ネオーラル」と IVIGの併用群での合併割合はIVIG 群に比べ有意に低いことが示されました(Mantel-Haenszel 検定,p = 0.0101)。
ノバルティス ファーマ株式会社 社長 綱場 一成は次のように述べています。
「まだ医療ニーズが満たされていなかった乳幼児の疾患である川崎病に対し、「ネオーラル®内用液10%」の効能追加承認を取得することが出来たことを、本当に嬉しく思います。この効能の承認取得のため医師主導治験に参加いただきました全ての関係者の皆さまに敬意を表します。」
「ネオーラル®内用液10%」について
川崎病患者の年齢分布が生後9~11ヵ月の乳児期にピークがあるため(全国調査2017年)、小児に対して負担が少なく、かつ体重に応じてより正確な投与量が必要なことから、「ネオーラル」内用液を開発対象剤形としました。
2000年5月に発売された「ネオーラル」内用液は、国内において、次のような多くの効能効果について承認を取得しています。
臓器移植における拒絶反応の抑制(腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植)、骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制、ベーチェット病及びその他の非感染性ぶどう膜炎、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬、再生不良性貧血、赤芽球癆、ネフローゼ症候群、全身型重症筋無力症、アトピー性皮膚炎。
剤形としては内用液10%の他に、10mgカプセル、25mgカプセル、50mgカプセルがありますが、今回の川崎病の適応はありません。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約10万9千人の社員を擁しており、7億5千万人以上の患者さんに製品が届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
以上
本リリースは、厚生労働記者会、重工業研究会、厚生日比谷クラブ、本町記者会に配布しております。
参考文献
- 川崎富作『アレルギー』第16巻、1967年、178-222
- Harnden et al. 2009,Holman et al. 2010,Nakamura et al. 2012
- 日本川崎病研究センター「第24回川崎病全国調査成績」2017
- 日本川崎病学会他2019(2020年2月7日アクセス)http://www.jskd.jp/info/pdf/tebiki201906.pdf
- 川崎病心臓血管後遺症の診断治療に関するガイドライン2013年改訂版
- 川崎病急性期治療のガイドライン2012 年改訂版
- Burns et al. 1998,Durongpisitkul et al. 2003,Uehara et al. 2008
- [医薬品インタビューフォームネオーラル(2018)] 改訂第19 版
<参考資料>
ネオーラル®内用液10%の製品概要
製品名:
「ネオーラル®内用液10%」(Neoral )
一般名:
シクロスポリン
効能又は効果*(下線部は今回追加承認された効能又は効果):
- 下記の臓器移植における拒絶反応の抑制
腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植 - 骨髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制
- ベーチェット病(眼症状のある場合)、及びその他の非感染性ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分であり、視力低下のおそれのある活動性の中間部又は後部の非感染性ぶどう膜炎に限る)
- 尋常性乾癬(皮疹が全身の30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬
- 再生不良性貧血、赤芽球癆
- ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合)
- 全身型重症筋無力症(胸腺摘出後の治療において、ステロイド剤の投与が効果不十分、又は副作用により困難な場合)
- アトピー性皮膚炎(既存治療で十分な効果が得られない患者)
- 川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)
用法及び用量*(下線部は今回追加承認された効能又は効果):
- 腎移植の場合
通常、移植1日前からシクロスポリンとして1日量9~12mg/kgを1日2回に分けて経口投与し、以後1日2mg/kgずつ減量する。維持量は1日量4~6mg/kgを標準とするが、症状により適宜増減する。 - 肝移植の場合
通常、移植1日前からシクロスポリンとして1日量14~16mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。以後徐々に減量し、維持量は1日量5~10mg/kgを標準とするが、症状により適宜増減する。 - 心移植、肺移植、膵移植の場合
通常、移植1日前からシクロスポリンとして1日量10~15mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。以後徐々に減量し、維持量は1日量2~6mg/kgを標準とするが、症状により適宜増減する。 - 小腸移植の場合
通常、シクロスポリンとして1日量14~16mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。以後徐々に減量し、維持量は1日量5~10mg/kgを標準とするが、症状により適宜増減する。ただし、通常移植1日前からシクロスポリン注射剤で投与を開始し、内服可能となった後はできるだけ速やかに経口投与に切り換える。 - 骨髄移植の場合
通常、移植1日前からシクロスポリンとして1日量6~12mg/kgを1日2回に分けて経口投与し、3~6ヵ月間継続し、その後徐々に減量し中止する。 - ベーチェット病及びその他の非感染性ぶどう膜炎の場合
通常、シクロスポリンとして1日量5mg/kgを1日2回に分けて経口投与を開始し、以後1ヵ月毎に1日1~2mg/kgずつ減量又は増量する。維持量は1日量3~5mg/kgを標準とするが、症状により適宜増減する。 - 乾癬の場合
通常、1日量5mg/kgを2回に分けて経口投与する。効果がみられた場合は1ヵ月毎に1日1mg/kgずつ減量し、維持量は1日量3mg/kgを標準とする。なお、症状により適宜増減する。 - 再生不良性貧血の場合
通常、シクロスポリンとして1日量6mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減する。 - ネフローゼ症候群の場合
通常、シクロスポリンとして下記の用量を1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜増減する。
⑴ 頻回再発型の症例
成人には1日量1.5mg/kgを投与する。また、小児の場合には1日量2.5mg/kgを投与する。
⑵ ステロイドに抵抗性を示す症例
成人には1日量3mg/kgを投与する。また、小児の場合には1日量5mg/kgを投与する。 - 全身型重症筋無力症の場合
通常、シクロスポリンとして1日量5mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。効果がみられた場合は徐々に減量し、維持量は3mg/kgを標準とする。なお、症状により適宜増減する。 - アトピー性皮膚炎の場合
通常、成人にはシクロスポリンとして1日量3mg/kgを1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜増減するが1日量5mg/kgを超えないこと。 - 川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)
通常、シクロスポリンとして1日量5mg/kgを1日2回に分けて原則5日間経口投与する。
承認取得日:
2020年2月21日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。