ノバルティス、欧州委員会(EC)より世界的にも主な失明原因となる滲出型加齢黄斑変性に対する次世代の抗VEGF薬、ブロルシズマブの承認を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年2月17日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- ブロルシズマブは、欧州で滲出型加齢黄斑変性治療薬として承認された抗VEGF薬で、適切な患者に対して、導入期直後から3ヵ月間隔投与の選択肢を提供できる唯一の治療薬である1。
- 世界中で2千万人以上いる滲出型加齢黄斑変性の患者にとって、頻回な注射投与は既存治療からの主な脱落理由の一つとなっている2-4。
- ブロルシズマブは、HAWK試験とHARRIER試験という2つの直接比較試験において、安定した視力改善効果を示し、その効果は投与開始1年時においてアフリベルセプトに対して非劣性であることが示され1,5(主要評価項目)、承認された。
- また、ブロルシズマブは、投与開始16週時および1年時において網膜の滲出液の消失がアフリベルセプトに比べて優れていることが示された1,5(副次評価項目)。
2020年2月17日、スイス・バーゼル発 –ノバルティスは2020年2月17日、欧州委員会 (EC) より滲出型加齢黄斑変性の治療薬として、ブロルシズマブ硝子体内注射液の承認を取得したことを発表しました。ブロルシズマブは、欧州委員会より承認された抗VEGF薬であり、疾患活動性の重要なマーカーである網膜の滲出液(IRF/SRF) の消失(副次評価項目) がアフリベルセプトと比較して、優れていることを示した初めての薬剤です1,5。また、ブロルシズマブでは、適切な滲出型加齢黄斑変性患者に対し、導入期直後から3ヵ月間隔投与が可能となります1,5。この度の欧州委員会の決定は、英国、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインのほか、27の欧州連合加盟国すべてに適用されます。
ノバルティス ファーマのCEOであるMarie-France Tschudinは、次のように述べています。「現在、高齢の方が多い滲出型加齢黄斑変性患者さんは、自身の疾患を管理する際に、大きな困難に直面している可能性があります。ブロルシズマブの網膜の滲出液を減少させる作用は、医師が疾患活動性に基づき患者の治療を最適化する上で大きな治療価値をもたらすと考えています。私たちは、この革新的な生物学的製剤の承認を受けて、引き続き滲出型加齢黄斑変性患者さんのより充実した、すこやかな毎日のために、新しい発想で医療に貢献してまいります。」
「網膜の滲出液を消失させることは、抗VEGF療法による滲出型加齢黄斑変性の治療における主な目標の1つです。」医師であり、FEBO, FARVO, Professor and Chairman, Department of Ophthalmology, University of BonnであるFrank Holz氏は述べています。「HAWK試験とHARRIER試験で示されたように、優れた滲出液消失作用を有するブロルシズマブは、医師にとって滲出型加齢黄斑変性治療における新たな選択肢となるでしょう。」
滲出型加齢黄斑変性は、網膜の中で中心視力の鮮明さを担う部位である黄斑の下に、異常な血管の形成を促進するタンパク質であるVEGFの過剰産生によって引き起こされる慢性的な眼の変性疾患です6,7。この疾患は、65歳以上の人々における重度の視力喪失および中途失明の主な原因であり、全世界で2千万人以上の方が罹患しているとされています3,4,8。EUでは、推定170万人が滲出型加齢黄斑変性の影響を受けているとされています9。滲出型加齢黄斑変性の初期症状には、かすみ目や視覚の歪みがあり7、病気が進行するにつれて、患者は中心視力を失うため、目の前の物を直接見ることが困難になります7。
この度の欧州委員会での承認は、ブロルシズマブが主要評価項目を達成した第III相臨床試験であるHAWK試験およびHARRIER試験より得られた知見に基づいており、投与開始1年時(48週時)における最高矯正視力の平均変化量から、ブロルシズマブは、アフリベルセプトに比べて非劣性であることが検証されました1,5。また、投与開始1年時に改善した視力は2年時にも維持されました1,5。
網膜の滲出液に関する副次評価項目において、ブロルシズマブはアフリベルセプト1,5に比較して優れていることが示されました。正常な網膜構造を破壊し黄斑に損傷を与える可能性のある2種類の滲出液である網膜内および/または網膜下の滲出液 (IRF/SRF)が認められた患者の割合は、ブロルシズマブ投与群がアフリベルセプト投与群に比較して有意に低率でした(HAWK試験:ブロルシズマブ6mg投与群で31%、アフリベルセプト投与群で45%; HARRIER試験1年時:ブロルシズマブ6mgで投与群26%、アフリベルセプト投与群で44%)1,5,10。さらに、ブロルシズマブは、アフリベルセプトと比較して、投与開始16週時および1年時において、網膜の滲出液に関連する別の指標である中心サブフィールド網膜厚の優れた減少を示しました。投与開始1年時にみられたこの差は、2年時にも維持されました1,5。また、両試験において、投与開始16週時に疾患活動性が認められた患者は、ブロルシズマブ投与群がアフリベルセプト投与群と比較して30%少なくなっていました11。
HAWK試験およびHARRIER試験では、1年時で半数以上の患者が3ヵ月投与間隔を維持しました(HAWK試験で56%、HARRIER試験で51%) 1, 5。それ以外の患者は、2ヵ月間の投与間隔で治療を受けました1,5。
「この度の承認は、視力の維持、そして長期の自立を支える可能性のある新しい治療選択肢を模索していた欧州の患者さんにとって、前向きな一歩であると考えます。」President, Retina InternationalであるChristina Fasser氏は述べています。「患者さん自身だけでなく、患者さんの介護者にとっての負担も軽減するうえで、大きな役割を果たすでしょう。」
ノバルティスは、2019年10月、ブロルシズマブについて、米国食品医薬品局より、滲出型加齢黄斑変性の治療薬として承認を取得しました。ブロルシズマブは、2020年1月にスイス当局であるSwissmedic、オーストラリア当局であるTGAより滲出型加齢黄斑変性の治療薬として承認を取得しました。ノバルティスは、ブロルシズマブを世界中の患者さんに届けられるよう注力しており、現在、カナダ、日本、ブラジルで承認申請が行われています。
ブロルシズマブについて
ブロルシズマブは、開発段階で臨床的に最も進歩したヒト化一本鎖抗体フラグメントです5,15。一本鎖抗体フラグメントは、一般的な抗体と比較して分子量が小さく、組織への透過性が高く、体循環からのクリアランスが早く、また薬物輸送上の特徴をもつことから、開発ニーズの高い医薬品です15-17。
ブロルシズマブはこの革新的な独自の構造により分子量が小さくなり(26kDa)、すべてのVEGF-Aアイソフォームに高い親和性をもち、それらのシグナル伝達を阻害します16。ブロルシズマブは、高濃度で投与できるように設計されており、他の抗VEGFよりも多くの阻害機能を有します5,15。非臨床試験において、ブロルシズマブはリガンド受容体の相互作用を防止することによりVEGF受容体の活性化を阻害しました16-18。VEGF経路を介したシグナル伝達の亢進は、眼の病的な血管新生および網膜浮腫と関連しています19。脈絡網膜疾患を有する患者において、VEGF経路の阻害は、血管新生病変の増殖の阻害、網膜浮腫の消失、および視力改善をもたらすことが明らかになっています19。
HAWK試験とHARRIER試験について
全世界の400の医療機関から1,800人を超える患者が参加したHAWK試験(NCT02307682)およびHARRIER試験(NCT02434328)は、滲出型加齢黄斑変性患者を対象とした最初のプロスペクティブな国際共同、直接比較試験です。革新的な12週毎(q12w)/8週毎(q8w)のレジメンで48週時点の有効性が示され、大多数の患者では導入期直後に12週毎(q12w)の投与が行われています。いずれの試験も96週間のプロスペクティブ、無作為化、二重遮蔽、多施設共同試験で、ブロルシズマブの第III相臨床開発の一環として行われています。これらの試験は滲出型加齢黄斑変性患者を対象にブロルシズマブ6mg(HAWKとHARRIER)および3mg(HAWK)の硝子体投与による有効性と安全性をアフリベルセプト2mgと比較するためにデザインされました5。
滲出型加齢黄斑変性について
滲出型加齢黄斑変性は、北米、欧州、オーストラリアおよびアジアの65歳以上の人々における重度の視力喪失および法的盲の主な原因です。全世界で2,000~2,500万人がこれに罹患していると推定されています3,4,8。
米国では、2020年に175万人が滲出型加齢黄斑変性を罹患していると推定されています。滲出型加齢黄斑変性は、網膜の中で鮮明な中心視力を担う部位である黄斑の下に、異常な血管が形成されて生じます7,20,21。このような血管は脆弱で、漿液が漏出することで、正常な網膜構造を乱し、最終的に損傷を引き起こします7,20,21。
滲出型加齢黄斑変性の初期症状として変視症(視覚の歪み)が生じたり、ものを明確に見ることが難しくなるため、迅速な診断と治療が不可欠です22,21。病気が進行するにつれて、細胞の損傷が増加し、視力の質がさらに低下します7。疾患が進行するにつれ、細胞の損傷が進み、視覚の質がさらに低下します。このような進行によって中心視力が完全に消失し、患者はものを読んだり、運転したり、身近な人の顔を認識することができなくなります7,23,24。無治療のままでは視力は急速に悪化します24。
眼科領域におけるノバルティスの活動について
ノバルティスのミッションは、より充実した、すこやかな毎日のために、新しい発想で医療に貢献することです。
眼科領域では、データや変革技術を駆使して、前眼部から後眼部にわたって人生を変えるような薬や治療法を開発してまいります。当社の点眼剤は、未熟児から高齢者まで、年間1億5千万人以上の人に届けられています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の7億5千万人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万9千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約140カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
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ノバルティス、欧州委員会(EC)より世界的にも主な失明原因となる滲出型加齢黄斑変性に対する次世代の抗VEGF薬、ブロルシズマブの承認を取得(PDF 571KB)