ノバルティス、第IIIb相ARGON試験でコントロール不十分な患者を対象としたQVM149と既存の3剤併用との比較において、主要評価項目を達成したと発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年6月3日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 1日1回吸入のQVM149(IND/GLY/MF)群は、コントロール不十分な喘息患者のQOL改善において、1日2回吸入のサルメテロールキシナホ酸/フルチカゾンプロピオン酸エステル(Sal/Flu)群と1日1回吸入のチオトロピウム(Tio)の3剤併用群に対する非劣性を示し、主要評価項目を達成1
- 副次的解析のうち、高用量のSal/Flu+Tioの3剤併用群と比較して、高用量のIND/GLY/MFを1日1回吸入した群は、呼吸機能、喘息コントロール、健康状態の改善、および中等度の増悪頻度の低下が観察された1
- IND/GLY/MFは、現在複数の国で承認申請中であり、欧州医薬品庁の欧州医薬品委員会から承認勧告を受けている
- 承認されれば、IND/GLY/MFの1日1回吸入は、LABA/ICS治療でコントロール不十分な喘息患者に対する初めてのLABA/LAMA/ICS固定用量配合剤となり、現在の標準治療レジメンに代わる有効かつ簡便な治療選択肢となりうる
2020年6月5日、スイス・バーゼル発 – 本日、ノバルティスは、第IIIb相臨床試験であるARGON試験の全結果が、Respiratory Medicine誌電子版に掲載されたと発表しました。本試験結果から、単一吸入器による1日1回吸入する高用量および中用量のQVM149(一般名:インダカテロール酢酸塩、グリコピロニウム臭化物、およびモメタゾンフランカルボン酸エステル、以下、IND/GLY/MF)による3剤併用治療群は、2種類の吸入器による1日2回吸入する高用量のサルメテロールキシナホ酸/フルチカゾンプロピオン酸エステル(Sal/Flu)と1日1回吸入するチオトロピウム(Tio)の3剤併用群に対する非劣性を示し、コントロール不十分な喘息患者のQOLを改善しました1。副次的解析では、高用量のIND/GLY/MFを1日1回吸入した群は、高用量のSal/Flu+Tioの3剤併用群と比較して、呼吸機能、喘息管理、健康状態の改善、および中等度の増悪頻度の低下が観察されました1。
「既存治療を受けているGINAステップ4および5の45%以上の喘息患者がコントロール不十分のままであり、新たな治療選択肢が必要とされています。ARGON試験は、IND/GLY/MFは1日1回吸入でQOLを改善し、承認されれば、LABA/ICS治療でコントロール不十分な喘息患者に対して有効かつ簡便な治療を提供できることになります」と、POIS Leipzig スタディセンター長 、Universität Leipzigのゲストドクターであるクリスチャン・ゲスナー(Christian Gessner)准教授は述べました。
本試験では、高用量および中用量のIND/GLY/MFのいずれの群においても、AQLQスコアのべースラインからの変化量においてSal/Flu+Tio群に対し非劣性が示され(高用量とSal/Flu+Tioとの差:0.073; 中用量とSal/Flu+Tioとの差:-0.038;いずれもp<0.001)、主要評価項目は達成されました。
ノバルティスの呼吸器領域グローバル・プログラム・ヘッドであるドミニク ブリテン(Dominic Brittain)は次のように述べています。「ノバルティスは、重大なアンメット・クリニカル・ニーズに対応し、喘息患者の症状コントロールとQOLを改善するIND/GLY/MFなどの革新的で患者さんに焦点を当てた医薬品を開発することで、呼吸器領域における医薬の未来を塗りかえる努力をしています。ARGON試験結果は、コントロール不十分な喘息患者さんにおける、単一吸入器で1日1回吸入するLABA/LAMA/ICSの3剤併用療法の潜在的なベネフィットを示しています。これらのデータは、IRIDIUM試験において高用量のIND/GLY/MFで観察された臨床的に意味のある呼吸機能の改善および増悪頻度の低下といった結果の上に成り立っています」。
副次的解析では、高用量のIND/GLY/MF群では、高用量のSal/Flu+Tio1の3剤併用群と比較して、喘息コントロール(喘息コントロール質問票で測定;ACQ-7スコア[-0.124;p=0.004] )および呼吸機能(トラフFEV1で測定[96mL;p<0.001] )の改善が見られました。追加の探索的解析では、高用量のIND/GLY/MF群では、高用量のSal/Flu+Tio1の3剤併用群と比較して、健康状態(St. George’s Respiratory Questionnaireで測定;SGRQ[-2.00;p=0.04] )およびピークフロー(朝[9.56L/分;p=0.005]、夕方[9.15L/分;p=0.006] )の改善が見られました。高用量のIND/GLY/MF群と高用量のSal/Flu+Tio群との比較では、高用量のIND/GLY/MF群で中等度の増悪頻度の大幅な低下(43%;p=0.04)が認められましたが、すべての重症度では、2つの治療群間で同程度でした1。増悪頻度の低下は、中用量のIND/GLY/MF群と高用量のSal/Flu+Tio群で同程度に認められましたが、より低用量のステロイドで同程度の低下が認められた結果となります1。有害事象は治療群間で概ね同程度でした1。
ARGON試験では、既存の吸入療法で適切にコントロールされていない喘息患者を対象に、1日2回吸入の高用量のSal/Flu(50/500μg)+1日1回吸入のTio(5μg)の3剤併用群と比較して「ブリーズヘラー®」を用いて長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)および吸入ステロイド薬(ICS)の高用量(150/50/160μg)および中用量(150/50/80μg)のIND/GLY/MFの1日1回吸入の固定用量配合剤群を24週目で評価しました1。
現在までに、IRIDIUM試験に基づき申請された高用量のIND/GLY/MFは、欧州医薬品庁の欧州医薬品委員会(CHMP)から承認勧告を受けました1,2。承認された場合、IND/GLY/MFは、デジタルデバイスと一緒に処方されるEUで最初の喘息治療薬となります。デジタルデバイスとは「ブリーズヘラー®」用に開発されたプロペラ・ヘルス社のブリーズヘラー®用センサーとアプリで構成されます。このブリーズヘラー®用センサーは、吸入確認、服薬リマインダー、および治療上の決定をより良くサポートするため、患者から主治医に共有できる客観的データへのアクセスを提供するものです。IND/GLY/MFは、現在スイス、日本、カナダなど複数の国で承認申請中です。
ノバルティスは、喘息の配合吸入剤による環境への影響を軽減するために、ハイドロフルオロアルカン/クロロフルオロカーボン(HFA/CFC)を使わない「ブリーズヘラー®」でIND/GLY/MFを吸入します。
コントロール不十分の喘息について
喘息は世界中で3億5,800万人が罹患していると推定され、症状がコントロール不十分な場合、個人的、健康的、経済的負担の点から重大な問題を引き起こしかねません3,4。既存治療を受けているにも関わらず、GINA(Global Initiative for Asthma)ステップ3の40%以上、GINAステップ4および5の45%以上の患者は、症状のコントロールが不十分であるといわれています5,6。症状のコントロールが不十分な喘息患者は、疾患の重症度を軽視または過小評価する傾向があり、増悪、入院または死亡のリスクが高くなるという報告もあります7,8,9。治療法が合わない、経口ステロイド薬の安全性、生物学的製剤の不適応など未解決の課題はまだ多く、喘息に対するアンメット・メディカル・ニーズが明らかになっています10,11。
欧州におけるQVM149について
CHMPは、長時間作用性β2刺激薬(以下、LABA)と高用量の吸入ステロイド薬(以下、ICS)の併用による維持*療下において過去1年に1回以上の喘息増悪を経験したコントロールが不十分な成人の喘息患者に対する維持療法として高用量QVM149(IND/GLY/MF)150/50/160μg1日1回吸入の承認を勧告しました12。
この製剤は、気管支拡張作用を持つインダカテロール酢酸塩(LABA)、抗ムスカリン作用を持つグリコピロニウム臭化物(LAMA)、そしてモメタゾンフランカルボン酸エステル(高用量ICS)の1日1回吸入の配合剤であり、用量確認が可能な吸入器「ブリーズヘラー®」を使用します。
グリコピロニウムの特定の用途と製剤の知的財産権は、2005年4月にSosei HeptaresおよびVecturaにより、ノバルティスに独占的に許諾されました。モメタゾンは、QVM149(米国を除く世界各国)での使用が米国ニュージャージー州ケニルワースにあるメルク・アンド・カンパニーの子会社からノバルティスに独占的に許諾されています。
IND/GLY/MFは、吸入確認が可能な単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー®」を用いて1日1回吸入します。承認された場合、IND/GLY/MFは、デジタルデバイスと一緒に処方されるEUで最初の喘息治療薬となります。デジタルデバイスとは「ブリーズヘラー®」用に開発されたプロペラ・ヘルス社のセンサーとアプリで構成されます。このデジタルデバイスは、吸入確認、服薬リマインダー、及び治療上の決定をより良くサポートするため、患者に主治医とも共有できる客観的データへのアクセスを提供するものです。
プロペラ・ヘルス社が「ブリーズヘラー®」用に開発したセンサーは、海外ではCEマークを取得している医療機器で、ノバルティスに全世界でライセンス許諾されています。センサーには、マイクロチップ、マイク、Bluetooth機能、アンテナ、およびバッテリーが搭載されています。センサーは、吸入器「ブリーズヘラー®」の薬物送達特性に影響を与えず、それぞれの吸入を記録します。記録された患者の薬剤使用状況に基づいて、患者が喘息の症状をよりよく自己管理できるようにアプリ内にユーザー毎にカスタマイズされた内容が提示されます。
PLATINUM臨床開発プログラムについて
世界中で7,500人以上の患者を対象としたPLATINUMプログラムは、IND/GLY/MFおよびIND/MFの開発のためのノバルティスの第III相臨床開発プログラムです。これには、低用量のIND/MFをMF単剤と比較したQUARTZ試験、IND/MFをMFおよびサルメテロールキシナホ酸/フルチカゾンプロピオン酸エステル(Sal/Flu)と比較したPALLADIUM試験、IND/GLY/MFをIND/MFおよびSal/Fluと比較したIRIDIUM試験、IND/GLY/MFをSal/Fluとチオトロピウムの併用と比較したARGON試験の4試験が含まれます。
ARGON試験について1
ARGON試験(NCT03158311)は、コントロール不十分な喘息患者を対象に、IND/GLY/MFとサルメテロールキシナホ酸塩/フルチカゾンプロピオン酸エステル(Sal/Flu)+チオトロピウムの併用療法との有効性および安全性を比較する第IIIb相、多施設、共同無作為化、24週間、並行群間、非劣性、非盲検(2つのIND/GLY/MF群は盲検)、実薬対照の試験です。ARGON試験は終了し、その臨床試験報告書は現在作成中です。
本試験の目的は、コントロール不十分な喘息患者を対象に、2つの用量の固定用量配合剤IND/GLY/MF(高用量:150/50/160μgおよび中用量:150/50/80μg)による効果の、Sal/Flu(50/500μg)+チオトロピウム(5μg)の併用療法による効果に対する非劣性を検証することでした。
全患者はスクリーニング時に、LABA/ICS中用量または高用量による治療にも関わらず、喘息管理質問票(ACQ-7)スコア≥1.5で定義される症状が残存していました。
コントロール不十分な男女の喘息患者(18歳以上)約1,251例が1:1:1(各治療群約417例)に無作為に割り付けられ、以下のいずれかが投与されました:
- IND/GLY/MF150/50/80μg(1日1回)
- IND/GLY/MF150/50/160μg(1日1回)
- 非盲検Sal/Flu50/500μg(1日2回)をディスカス®で投与+チオトロピウムをレスピマット®で投与
本試験の主要な目的は、投与24週時の喘息QOL質問票(AQLQ)に関し、高用量IND/GLY/MFおよび低用量IND/GLY/MFの、対照薬であるSal/Flu+チオトロピウムに対する非劣性を検証することでした。
含まれる副次的目的:
- Sal/Flu+チオトロピウムに対する高用量IND/GLY/MFおよび中用量IND/GLY/MFの有効性を投与24週後のトラフFEV1で比較評価する
- Sal/Flu+チオトロピウムに対する高用量IND/GLY/MFおよび中用量IND/GLY/MFの有効性を投与24週間にわたり喘息QOL質問票で比較評価する
- Sal/Flu+チオトロピウムに対する高用量IND/GLY/MFおよび中用量IND/GLY/MFの有効性を投与24週間にわたりACQ-7スコアで比較評価する
- Sal/Flu+チオトロピウムに対する高用量IND/GLY/MFおよび中用量IND/GLY/MFの有効性を投与24週間にわたり呼吸機能で比較評価する
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万9千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約145カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Gessner C et al. Fixed-dose combination of indacaterol/glycopyrronium/mometasone furoate once-daily versus salmeterol/fluticasone twice-daily plus tiotropium once-daily in patients with uncontrolled asthma: A randomised, Phase IIIb, non-inferiority study (ARGON). Resp Med 2020;106021. DOI: https://doi.org/10.1016/j.rmed.2020.106021.
- CHMP Opinion – Enerzair Meeting highlights from the Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP) 28-30 April 2020. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-28-30-april-2020. Last accessed June 2020.
- GBD Chronic Respiratory Disease Collaborators. Global, regional, and national deaths, prevalence, disability-adjusted life years, and years lived with disability for chronic obstructive pulmonary disease and asthma. 2017. Available at: https://doi.org/10.1016/S2213-2600(17)30293-X. Last accessed June 2020.
- AAFA. My Life With Asthma Survey Findings Report. Available at: https://www.aafa.org/media/1684/my-life-with-asthma-in-2017-survey-findings-report.pdf. Last accessed June 2020.
- Chung KF et al. International ERS/ATS guidelines on definition, evaluation and treatment of severe asthma. Eur Respir J 2014;43(2):343-73.
- Fang J et al. Demographic, clinical characteristics and control status of pediatric, adolescent, and adult asthma patients by GINA Step in a US longitudinal cohort. Am J Resp Crit Care Med 2018;197:A1903
- Peters SP et al. Uncontrolled asthma: a review of the prevalence, disease burden and options for treatment. Respir Med 2006;100(7):1139-1151.
- Katsaounou P et al. Still Fighting for Breath: a patient survey of the challenges and impact of severe asthma. ERJ Open Res 2018;4(4):00076-2018.
- Price D et al. Asthma control and management in 8,000 European patients: the REcognise Asthma and Link to Symptoms and Experience (REALISE) survey. NPJ Prim Care Respir Med 2014;24:14009.
- Price D, et al. Adverse outcomes from initiation of systemic corticosteroids for asthma: long-term observational study. J Asthma Allergy 2018;11:193-204.
- Albers FC et al. Biologic treatment eligibility for real-world patients with severe asthma: The IDEAL study. J Asthma 2018;55(2):152-160.
- EMA. Enerzair Breezhaler. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/enerzair-breezhaler. Last accessed June 2020.
ノバルティス、第IIIb相ARGON試験でコントロール不十分な患者を対象としたQVM149と既存の3剤併用との比較において、主要評価項目を達成したと発表(PDF 478KB)