ノバルティス、SPMSに対して有効性を証明した初めての多発性硬化症治療薬「メーゼント®錠」の製造販売承認取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は、二次性進行型多発性硬化症(以下、SPMS)に対して有効性を証明した初めての1日1回経口の多発性硬化症治療薬「メーゼント®錠0.25mg、2mg」(一般名:シポニモド フマル酸、以下「メーゼント」)の製造販売承認を取得いたしました。
多発性硬化症(以下、MS)は、中枢神経(脳・脊髄・視神経)に「脱髄」と呼ばれる病変が多発し、視力障害、運動障害、感覚障害、言語障害など多様な症状があらわれる疾患です1,2。「脱髄」とは電線で例えると絶縁体に相当するミエリンが破壊され軸索がむき出しになることで、それが起きると情報がスムーズに流れず、さまざまな症状を引き起こします1,2。
日本におけるMS患者数は約1万5千人ですが、年々増加しており発症のピークは20歳代で、女性に多い疾患です3,4。発症後しばらくは症状があらわれる期間(再発期)と症状が治まる期間(寛解期)を繰り返す再発寛解型MS(以下、RRMS)として経過しますが、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行するSPMSに移行します。進行期に移行すると日常生活に影響をおよぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられるようになります5。主には、歩行障害で、適切な時期に治療が受けられないと、徐々に歩行障害が進行し、車いす生活を余儀なくされる場合もあります。また、認知機能障害が進み、雇用に影響をもたらすこともあります6。このように日常生活に次第に家族のサポートが必要となることから、進行の症状は患者のみならず家族の社会生活にも少なからず影響を与えます7,8。
「メーゼント」は、S1P1およびS1P5受容体に選択的に結合するS1P受容体調整薬です。S1P1受容体に作用することにより、リンパ球がリンパ節から移出することを防ぎ、その結果、それらのリンパ球が多発性硬化症患者の中枢神経系(以下、CNS)に移行することを防ぎます9。これにより、「メーゼント」の抗炎症作用が発揮されます10。また、「メーゼント」はCNS内に移行し11,12,13、CNS内の特定の細胞(オリゴデンドロサイトおよびアストロサイト)上のS1P5受容体と結合し、ミエリン再形成の促進作用と神経保護作用が非臨床試験で示唆されています14,15,16。
国際共同第III相臨床試験(EXPAND試験)では、1,645人のSPMS患者を対象として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施しました。主要評価項目は、Expanded Disability Status Scale(EDSS)に基づく3ヵ月持続する障害進行(3m-CDP)が認められるまでの期間で、プラセボ群と比較してメーゼント群では3m-CDPの発現リスクが21.2%有意に減少し(p=0.0134)、「メーゼント」が患者の障害進行を遅らせる効果が示されました。また、3m-CDPが認められた患者の割合は、プラセボ群が31.7%に対し、メーゼント群では26.3%でした。
また、年間再発率(以下、ARR)の負の二項回帰モデルによる推定値は、本剤群において、プラセボ群と比較して年間再発率が55.5%低下しました(p<0.0001)。本試験の主な副作用は、頭痛5.3%、高血圧4.5%、徐脈4.5%等でした9。
今回の承認に際し、ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長 綱場一成は、次のように述べています。「MS領域においては、これまで『ジレニア』を通じて情報提供活動をしてまいりました。その中で進行期への移行というアンメットニーズを医療現場から拾い上げ、日本で初めてとなるSPMSの適応取得に挑戦することにいたしました。日本の先生方にもご協力いただき、国際共同治験に参加することで、進行の症状に対する初めての治療薬を世界に遅れることなく承認取得することが出来ました。この度の承認を通じ『医薬の未来を描く』という弊社のミッションを少しでも果たせることを願っています」
多発性硬化症に対するノバルティスの取組みについて
日本において「ジレニア®」(一般名:フィンゴリモド塩酸塩、以下「ジレニア」)は「多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」を効能又は効果として発売しております。 この度、SPMSに対して有効性を証明した初めての1日1回経口の多発性硬化症治療薬「メーゼント」の製造販売承認を取得いたしました。日本においてもMSに対する治療薬として開発中のオファツムマブ(OMB157)は、CD20陽性B細胞を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)です。
EUにおける多発性硬化症治療薬のポートフォリオには、「メーゼント」に加えて、成人、10歳以上の小児のRRMSに対して適応を有する「ジレニア」があります。米国では、「ジレニア」は、成人および10歳以上の小児患者に対して、Clinically isolated syndrome、RRMSおよび疾患活動性を有するSPMSを含む再発型多発性硬化症を適応として承認されています。欧米において、オファツムマブは承認申請済みです。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約10万9千人の社員を擁しており、8億人以上の患者さんに製品が届けられています。ノバルティスに関する詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.co.jp
以上
参考文献
- 医療情報科学研究所 編.: 病気がみえる vol.7 脳・神経 第2版, メディックメディア, 2017
- 日本神経学会 監修.: 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017, 医学書院, 2017.
- Osoegawa M, et al.: Mult Scler.; 15(2): 159-73. 2009.
- Multiple Sclerosis International Federation.: Atlas of MS 2013
- [Nandoskar A, et al. (2017)] Pharmacological aproaches to the Management of Secondary Progressive Mulitple Sclerosis. Drugs; 7 (8); 885-910.
- [Strober L, et al, (2014)] Unemployment in multiple sclerosis (MS) : utility of the MS Functional Composite and cognitive testing. Mult Scler; 20(1):112-5.
- [Naoshy S, et al. (2015)] The Impact of Increasing Multiple Sclerosis (MS) Severity Level on Employment and Caregiver Burden. Value Health 18(7) 722-9.
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- Gergely P, Nuesslein-Hildesheim B, Guerini D, et al. The selective sphingosine 1-phosphate receptor modulator BAF312 redirects lymphocyte distribution and has species-specific effects on heart rate. Brit J Pharm. 2012; 167:1035-47.
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- Bigaud M, Perdoux J, Ramseier P et al. Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Characterization of Siponimod (BAF312) in Blood versus Brain in Experimental Autoimmune Encephalomyelitis Mice. Neurology. 2019;P2.2-066.
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- Martin E, Urban B, Beerli C, et al. Siponimod (BAF312) is a potent promyelinating agent: preclinical mechanistic observation. P1376. 35th Congress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis, September 2019.
- Dietrich M, Hecker C, Ramseier P, et al. Neuroprotective potential for siponimod (BAF312) revealed by visual system readouts in a model of experimental autoimmune encephalomyelitis-optic neuritis (EAEON). P844. 35th Congress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis, September 2019.
<参考資料>
「メーゼント®錠」の製品概要
製品名:
「メーゼント®錠 0.25mg」(Mayzent Tablets)
「メーゼント®錠 2mg」(Mayzent Tablets)
一般名:
シポニモド フマル酸(Siponimod fumarate)
効能又は効果*
二次性進行型多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制
用法及び用量*
通常、成人にはシポニモドとして1日0.25mgから開始し、2日目に0.25mg、3日目に0.5mg、4日目に0.75mg、5日目に1.25mg、6日目に2mgを1日1回朝に経口投与し、7日目以降は維持用量である2mgを1日1回経口投与するが、患者の状態により適宜減量する。
承認取得日:
2020年6月29日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。
ノバルティス、SPMSに対して有効性を証明した初めての多発性硬化症治療薬「メーゼント®錠」の製造販売承認取得(PDF 350KB)