ノバルティス、本邦において世界初のLABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤「エナジアTM」、およびLABA/ICS配合喘息治療剤「アテキュラ®」の製造販売承認を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:綱場 一成)は、本日、世界に先駆けてLABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤「エナジアTM吸入用カプセル中用量、高用量」(一般名:インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル、以下「エナジア」)の製造販売承認を取得いたしました。同時に、LABA/ICS配合喘息治療剤「アテキュラ®吸入用カプセル低用量、中用量、高用量」(一般名:インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル、以下「アテキュラ」)の製造販売承認も取得いたしました。
「エナジア」は、長時間作用性β2刺激剤(以下、LABA)のインダカテロール酢酸塩、長時間作用性抗コリン剤(以下、LAMA)のグリコピロニウム臭化物、吸入ステロイド剤(以下、ICS)のモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/LAMA/ICS配合剤で、専用の吸入器「ブリーズヘラー®」による1日1回投与で気管支拡張作用および抗炎症作用を発揮します1,2,3。中用量および高用量の2規格ともにインダカテロールは150μg、グリコピロニウムは50μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μgおよび160μgを含有します。「アテキュラ」は、「エナジア」同様、「ブリーズヘラー®」を用いて1日1回投与するLABA/ICS配合剤で、低用量、中用量および高用量の3規格ともにインダカテロールは150μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μg、160μg、320μgを含有します。
また、日本で初めて、両剤用の吸入器に装着してスマートフォンと連動させて、日々の服薬の記録や服薬リマインダー機能を持つブリーズヘラー用センサーも医師を通じて提供いたします。
日本の喘息予防・管理ガイドラインにおいて、治療ステップ3 から4に該当する中用量または高用量LABA/ICSの投与でも喘息コントロールが不十分な患者に対しては、気管支拡張効果を有するLAMA が追加治療薬の一つとして推奨されています4。しかし、現在、喘息の適応をもつLABA/LAMA/ICS配合剤はなく、1 日に複数回の吸入や異なる吸入器の使用など投与の煩雑さが服薬アドヒアランスの低下を招き、喘息コントロールを難しくしています5。したがって、単一吸入器による1 日1 回投与で3成分を同時に吸入でき、十分な喘息コントロールが得られる有効で簡便な治療薬が求められていました。
また、同ガイドラインの治療ステップ2から4で使用されるLABA/ICS配合剤のほとんどが1 日2 回投与で、服薬アドヒアランスの低下が懸念されています5。1 日1 回投与のLABA/ICS配合剤でも、同ガイドラインのICSの用量区分(低用量、中用量、高用量)全てに対応する用量規格を持つ配合剤はありません。これらのことから、1 日1 回の投与で、かつ同ガイドラインに即した全ての用量規格を持ち、患者の症状に応じて用量を選択できる有効なLABA/ICS配合剤が治療選択肢の一つとして求められていました。
今回の承認に際し、ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長 綱場一成は、次のように述べています。「喘息患者さんの中には症状コントロールが不十分な方が多くいらっしゃいます。この度、『エナジア』および『アテキュラ』が承認されたことで、単一吸入器による1日1回投与という簡便な方法によって患者さんの症状に応じた有効な治療が選択できるようになることを嬉しく思います。さらに吸入器にブリーズヘラー用センサーを組み合わせた新たな喘息管理ツールを医師を通じて提供することで患者さんと医師のコミュニケーションを活性化し、コントロール不十分な喘息の長期管理に貢献して参りたいと思います。この度の承認が『医薬の未来を描く』という弊社のミッションを少しでも果たせることを願っています」
「エナジア」国際共同第III相IRIDIUM試験(2302試験、「エナジア」の中用量・高用量を評価した試験)
中用量から高用量LABA/ICSでコントロールが不十分で、過去1年以内の喘息増悪歴を有する成人気管支喘息患者3,092例(日本人患者78例を含む)を対象とした52週間の無作為化二重盲検並行群間比較試験で、「エナジア」中用量(LABA/LAMA/ICS: 150/50/80μg)、高用量(150/50/160μg)、「アテキュラ」中用量(LABA/ICS: 150/160μg)、高用量(150/320μg)を1日1回吸入投与しました*。 投与26週後のトラフFEV1において、「エナジア」中用量と「アテキュラ」中用量 (0.074 L [95% 信頼性区間 0.036,0.112] p<0.001)、および「エナジア」高用量と「アテキュラ」高用量(0.065L [95% 信頼性区間0.027,0.103] p=0.002)の比較において、統計学的に有意な差が認められました。「エナジア」による副作用は、52週間の治療期間中に高用量群で8.3%、中用量群で7.5%に認められました。主な副作用は、高用量群では発声障害3.4%および中用量群では発声障害1.3%でした6。
「アテキュラ」国際共同第III相PALLADIUM試験(2301試験、「アテキュラ」の中用量・高用量を評価した試験)
中用量から高用量ICSまたは低用量LABA/ICSでコントロールが不十分な気管支喘息患者2,216例(日本人患者118例を含む)を対象とした52週間の実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験で、「アテキュラ」中用量(1日1回150/160μg)、高用量(1日1回150/320μg)、モメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)中用量(1日1回400μg)、MF高用量(1日2回400μg)を吸入投与しました**。投与26週後のトラフFEV1は「アテキュラ」中用量とMF中用量(0.211 L[95% 信頼区間 0.167,0.255] p<0.001)、「アテキュラ」高用量とMF高用量 (0.130L [95% 信頼性区間0.086,0.173] p<0.001)の比較において、統計学的に有意な差が認められました。
「アテキュラ」による副作用は、52週間の治療期間中に高用量群で8.4%、中用量群で6.4%に認められました。主な副作用は、高用量群では発声障害1.1%および中用量群では発声障害0.9%でした7。
「アテキュラ」国際共同第III相QUARTZ試験(2303試験、「アテキュラ」の低用量を評価した試験)
低用量ICSでコントロールが不十分な気管支喘息患者802例(日本人患者52例を含む)を対象とした12週間の実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験で、「アテキュラ」低用量(150/80μg)またはモメタゾンフランカルボン酸エステル(MF)低用量(200μg)を1 日1 回吸入投与しました**。投与12週後のトラフFEV1は、「アテキュラ」低用量とMF低用量との比較において(0.182 L [95%信頼区間 0.148,0.217] p<0.001)、統計学的に有意な差が認められました。
「アテキュラ」低用量による副作用は3.8%に認められました。主な副作用は、発声障害0.8%および咳嗽0.8%でした7。
「ブリーズヘラー®」とブリーズヘラー用センサー
単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー®」は、吸入抵抗が少ないため、吸入制限のある患者に適したデバイスです8。この「ブリーズヘラー®」は、患者が、薬剤を正しく吸入できたかどうかを、「聞く」「見る」「感じる」ことで確認できる設計となっています。
- 目で見る: 透明のカプセルに薬剤が充填されているため、吸入後に
カプセル内の薬剤がなくなっているのを確認できます。 - 耳で聞く: 吸入時に、カプセル充填部の中で「カラカラ」という
カプセルの回転音が聞こえます。 - 舌で感じる: 添加物として乳糖が含まれているため、吸入直後に、
口の中でかすかに甘味を感じることができます。
喘息の配合吸入剤による環境への影響を軽減するというノバルティスの方針に沿って、「エナジア」と「アテキュラ」は、ハイドロフルオロアルカン/クロロフルオロカーボン(HFA/CFC)を使わない「ブリーズヘラー®」を使い吸入します。
ブリーズヘラー用センサーとは「ブリーズヘラー®」用にプロペラ・ヘルス社により開発された「ブリーズヘラー®」に装着するセンサーとスマートフォン用のアプリで構成されます。このブリーズヘラー用センサーは、吸入確認、服薬リマインダー、および患者が選択すれば主治医に日々の服薬の記録を共有することが出来ます。
欧州における「エナジア」と「アテキュラ」について
「エナジア」***は、LABAと高用量ICSの併用による維持療法下において過去1年に1回以上の喘息増悪を経験したコントロールが不十分な成人の喘息患者に対する維持療法として欧州医薬品委員会(CHMP)による承認勧告を受けています。「アテキュラ」は、欧州において、ICSおよび短時間作用性β刺激剤で適切にコントロール出来ない12歳以上の未成年、および成人喘息の維持療法を目的とした、インダカテロール酢酸塩とモメタゾンフランカルボン酸エステルの吸入配合剤として、承認を受けています。グリコピロニウムの特定の用途と製剤の知的財産権は、2005年4月にSosei HeptaresおよびVecturaにより、ノバルティスに独占的に許諾されました。モメタゾンは、「エナジア」と「アテキュラ」(米国を除く世界各国)での使用が米国ニュージャージー州ケニルワースにあるメルク・アンド・カンパニーの子会社からノバルティスに独占的に許諾されています。
コントロール不十分な喘息について
喘息は世界中で3億5,800万人、日本では約800万人が罹患していると推定され、症状がコントロール不十分な場合、個人的、健康的、経済的負担の点から重大な問題を引き起こしかねません9。既存治療を受けているにも関わらず、日本のガイドラインの治療ステップ1の45%、治療ステップ2の66%、治療ステップ3の80%、治療ステップ4の89%の患者は、症状のコントロールが不十分であるとの報告があります10。症状のコントロールが不十分な喘息患者は、疾患の重症度を軽視または過小評価する傾向があり、増悪、入院または死亡のリスクが高くなるという報告もあります11,12,13。治療法が合わない、経口ステロイド剤の安全性、生物学的製剤の不適応など喘息に対するアンメット・メディカル・ニーズはまだ多くあります14,15。
* MFの配合量は、「エナジア」中用量と「アテキュラ」中用量で、また「エナジア」高用量と「アテキュラ」高用量でそれぞれ異なるが、肺に到達し薬効発現が期待されるMFの粒子量は、中用量同士、高用量同士で同程度である16,17。
**MFの用量は、「アテキュラ」低用量とMF低用量、「アテキュラ」中用量とMF中用量、また「アテキュラ」高用量とMF高用量でそれぞれ異なるが、肺に到達し薬効発現が期待されるMFの粒子量は、低用量同士、中用量同士、高用量同士で同程度である16,17。
***「エナジア」は欧州において、日本における高用量のみCHMPから承認勧告を受けている。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解下さい。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照下さい。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約10万9千人の社員を擁しており、8億人以上の患者に製品が届けられています。ノバルティスに関する詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.co.jp
以上
参考資料
- Vogelmeier C, et al., Respir Res. 2010; 11: 135-142.
- Verkindre C, et al., Respir Med. 2010; 104: 1482-1489
- [Umland SP, Nahrebne DK, Razac S, et al. (1997)] The inhibitory effects of topically active glucocorticoidson IL-4, IL-5, and interferon-gamma production by cultured primary CD4+ T cells. J Allergy ClinImmunol; 100(4):511-9.
- Japan asthma prevention and management guideline (JGL) (2018) 喘息予防・管理ガイドライン2018.東京:協和企画. (available upon request)
- [Engelkes M, Janssens HM, de Jongste JC, et al (2015)] Medication adherence and the risk of severe asthma exacerbations: a systematic review. Eur Respir J; 45(2):396-407.
- エナジア添付文書
- アテキュラ添付文書
- Pavkov et al. CMRO 2010; 26; 11:2527-2533. doi:10.1185/03007995.2010.518916.
- 厚生労働科学研究費『アレルギー疾患対策に必要とされる疫学調査と疫学データベース作成に関する研究(代表 赤澤晃)2016年度報告書』
- Adachi M et al, “Asthma control and quality of life in a real-life setting: a cross-sectional study of adult asthma patients in Japan (ACQUIRE-2)”. J Asthma, Vol.56 No.9, 2019, pp.1016-1025.
- Peters SP et al. Uncontrolled asthma: a review of the prevalence, disease burden and options for treatment. Respir Med 2006;100(7):1139-1151.
- Katsaounou P et al. Still Fighting for Breath: a patient survey of the challenges and impact of severe asthma. ERJ Open Res 2018;4(4):00076-2018.
- Price D et al. Asthma control and management in 8,000 European patients: the REcognise Asthma and LInk to Symptoms and Experience (REALISE) survey. NPJ Prim Care Respir Med 2014;24:14009.
- Price D, et al. Adverse outcomes from initiation of systemic corticosteroids for asthma: long-term observational study. J Asthma Allergy 2018;11:193-204.
- Albers FC et al. Biologic treatment eligibility for real-world patients with severe asthma: The IDEAL study. J Asthma 2018;55(2):152-160.
- 社内資料:承認時評価資料(QVM臨床薬理試験)
- 社内資料:承認時評価資料(QMF臨床薬理試験)
<参考資料>
エナジアTM吸入用カプセルの製品概要
製品名:
「エナジアTM吸入用カプセル 中用量」(Enerzair inhalation capsules)
「エナジアTM吸入用カプセル 高用量」(Enerzair inhalation capsules)
一般名:
グリコピロニウム臭化物、インダカテロール酢酸塩、モメタゾンフランカルボン酸エステル
(glycopyrronium bromide, indacaterol acetate, mometasone furoate)
効能又は効果*
気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入β2刺激剤および長時間作用性吸入抗コリン剤の併用が必要な場合)
用法及び用量*
通常、成人にはエナジア吸入用カプセル中用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg及びモメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。
なお、症状に応じてエナジア吸入用カプセル高用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg及びモメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。
承認取得日:
2020年6月29日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。
<参考資料>
アテキュラ®吸入用カプセルの製品概要
製品名:
「アテキュラ®吸入用カプセル 低用量」(Atectura inhalation capsules)
「アテキュラ®吸入用カプセル 中用量」(Atectura inhalation capsules)
「アテキュラ®吸入用カプセル 高用量」(Atectura inhalation capsules)
一般名:
インダカテロール酢酸塩、モメタゾンフランカルボン酸エステル
(indacaterol acetate, mometasone furoate)
効能又は効果*
気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
用法及び用量*
通常、成人にはアテキュラ吸入用カプセル低用量1 回1 カプセル(インダカテロールとして150μg 及びモメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1 日1 回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。
なお、症状に応じて以下用量の 1 回1 カプセルを1 日1 回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。
- アテキュラ吸入用カプセル中用量(インダカテロールとして150μg 及びモメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)
- アテキュラ吸入用カプセル高用量(インダカテロールとして150μg 及びモメタゾンフランカルボン酸エステルとして320μg)
承認取得日:
2020年6月29日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する使用上の注意並びに用法及び用量に関連する使用上の注意は、添付文書をご覧下さい。
ノバルティス、本邦において世界初のLABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤「エナジアTM」、およびLABA/ICS配合喘息治療剤「アテキュラ®」の製造販売承認を取得(PDF 477KB)