ノバルティス、第III相IRIDIUM試験からファースト・イン・クラスの吸入用LABA/LAMA/ICS配合剤「エナジア®ブリーズヘラー®」(QVM149)のコントロール不十分な喘息患者に対する有用性をLANCET Respiratory Medicineに発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年7月10日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- LABA/ICSの標準治療でコントロール不十分な喘息患者に対し、1日1回吸入の「エナジア®ブリーズヘラー®」(QVM149; IND/GLY/MF)は、 1日1回吸入のIND/MF(QMF149)と比較して、呼吸機能の改善について優れた結果を示した1
- 副次的解析では、高用量および中用量のIND/GLY/MFは、高用量のSal/Fluと比較して、呼吸機能の改善が認められた1
- その他の副次解析では、中等度から重度及び重度の喘息増悪頻度について、高用量のIND/GLY/MF投与群は、高用量のSal/Flu投与群と比較して、臨床的に意味のある低下(それぞれ36%、42%)が認められた1
- IND/GLY/MFはEU、日本およびカナダで承認されており、その他の国では現在承認申請中
2020年7月10日、スイス・バーゼル発 –ノバルティスは、本日、第III相IRIDIUM試験の全結果が、The Lancet Respiratory Medicineに掲載されたことを発表しました。1日1回吸入の高用量および中用量の「エナジア®ブリーズヘラー®」(QVM149;インダカテロール酢酸塩、グリコピロニウム臭化物、モメタゾンフランカルボン酸エステル[以下、IND/GLY/MF])が、1日1回吸入のQMF149(インダカテロール酢酸塩、モメタゾンフランカルボン酸エステル[以下、IND/MF])と比較して、呼吸機能において統計学的に有意な改善を示し、主要評価項目を達成しました1。主要な副次的評価項目は、 IND/GLY/MFのIND/MFに対する喘息管理質問票(以下、ACQ-7)スコアの改善でした。何れの治療法も臨床的に意味のある改善を示しましたが、主要な副次的評価項目は達成しませんでした1。副次的解析では、高用量IND/GLY/MF群は、高用量サルメテロールキシナホ酸塩/フルチカゾンプロピオン酸エステル(以下、Sal/Flu)群と比較して、呼吸機能の改善と、中等度から重度および重度の喘息増悪頻度の臨床的に意味のある低下が認められました1。
フローニンゲン大学医療センター呼吸器内科部長のハイブ ケルスティエンス(Huib Kerstjens)教授は、次のように述べました。
「IRIDIUM試験結果から、標準治療であるLABA/ICSを投与されているにも関わらず症状が持続している患者において、1日1回吸入のIND/GLY/MF配合剤は、呼吸機能を改善し、増悪頻度を低下させる可能性があることが示されています。喘息において、最適な症状コントロールを達成することは依然として困難であり、これらは有望です。既存治療を受けているGINAステップ4および5の45%以上の喘息患者がコントロール不十分であり、これはQOLの低下、仕事の生産性の低下、および救急を含め病院への受診増加につながる可能性があります。」
高用量および中用量のIND/GLY/MFは、対応する用量のIND/MFと比較して、投与開始26週後のトラフFEV1において統計学的有意な改善を示し(それぞれ、0.065 L、p<0.001、0.076 L、p<0.001)、主要評価項目を達成しました1。
主要な副次的評価項目は、IND/GLY/MFに対するIND/MFの喘息管理質問票(以下、ACQ-7)スコアの改善でした。何れの治療も、投与26週時にベースラインと比較して臨床的に意味のあるACQ-7スコアの改善をもたらしましたが、主要な副次的評価項目は達成しませんでした1。
ノバルティスの呼吸器領域グローバル開発責任者のドミニク ブリタイン(Dominic Brittain)は次のように述べました。
「ノバルティスでは、革新的な医薬品とデジタルデバイスを患者さんにお届けすることで、呼吸器領域における医薬の未来を塗りかえるよう努力して参りました。この10年間、新たな吸入喘息治療剤は登場しませんでした。この主要な臨床試験において、1日1回の3成分配合剤であるIND/GLY/MFがコントロール不十分な喘息治療において、その潜在的能力を示すことが出来たのは、とても喜ばしいことです。」
副次的解析では、両用量のIND/GLY/MF群では、高用量のSal/Flu群と比較して、投与26週時における呼吸機能(FEV1)の改善が認められました[高用量(0.119 L、p<0.001)、中用量(0.099 L、p<0.001)]。投与52週時のすべての比較で同様のFEV1の改善が認められ、この喘息管理薬が長期間にわたってベネフィットをもたらす可能性が示唆されました。
また、投与開始1日目の投与5分後のFEV1について、IND/GLY/MFの両用量は、対応する用量のIND/MFおよび高用量Sal/Fluに比べ投与後早期からFEV1 が改善しました(p<0.001)1。
さらなる副次的解析において、高用量IND/GLY/MFは、高用量Sal/Fluと比較して、中等度から重度および重度の喘息増悪頻度の低下が見られました(それぞれ、36%、p<0.001、42%、p<0.001)1。また、中用量IND/GLY/MFは、高用量Sal/Fluと比較して中等度から重度および重度の喘息増悪頻度の低下も見られました(それぞれ、19%、p=0.041、16%、p=0.117)1。
IRIDIUM試験では、既存吸入療法で十分にコントロールできない喘息患者を対象に、長時間作用性β2刺激剤(LABA)、長時間作用性ムスカリン拮抗剤(LAMA)および吸入ステロイド(ICS)の1日1回の固定用量配合剤であるIND/GLY/MFの高用量(150/50/160μg)および中用量(150/50/80μg)と、それに対応する用量のIND/MF(LABA/ICS)の高用量(150/320μg)および中用量(150/160μ群)を52週間の実薬投与により評価検討した1。
IRIDIUM試験におけるIND/GLY/MFおよびIND/MFの有害事象および重篤な有害事象の全体的な発現率は概して低く、投与群間で同程度でした。最も多く報告された有害事象および重篤な有害事象は喘息増悪でした1。
現在までに、日本では中用量および高用量のIND/GLY/MFが承認されており、 EUおよびカナダでは高用量のIND/GLY/MFが承認されています。これらはIRIDIUM試験に基づき承認申請されました1, 2。さらに、IND/MFは、日本、EUおよびカナダで承認を取得しています。これらの承認申請はPALLADIUM試験(Lancet Respiratory Medicine誌)に基づき申請されました3。現在、両製品について複数の国で承認申請中です。
ノバルティスは、喘息治療配合剤による環境への影響を低減するというコミットを守るため、ヒドロフルオロアルカン/クロロフルオロカーボン(HFA/CFC)を使用しない吸入器「ブリーズヘラー®」をIND/GLY/MFとIND/MFとともに提供いたします。
コントロール不十分の喘息について
喘息は世界中で3億5,800万人が罹患していると推定され、症状がコントロール不十分な場合、個人的、健康的、経済的負担の点から重大な問題を引き起こしかねません4,5。既存治療を受けているにも関わらず、GINA(Global Initiative for Asthma)ステップ3の40%以上、GINAステップ4および5の45%以上の患者は、症状のコントロールが不十分であるといわれています6,7。症状のコントロールが不十分な喘息患者は、疾患の重症度を軽視または過小評価する傾向があり、増悪、入院または死亡のリスクが高くなるという報告もあります8-10。治療法が合わない、経口ステロイド薬の安全性、生物学的製剤の不適応など未解決の課題はまだ多く、喘息に対するアンメット・メディカル・ニーズが明らかになっています11-14。
欧州における「エナジア ブリーズヘラー」について
2020年7月7日、欧州委員会(EC)は、長時間作用性β2刺激薬(以下、LABA)と高用量の吸入ステロイド薬(以下、ICS)の併用による維持療下において過去1年に1回以上の喘息増悪を経験したコントロールが不十分な成人の喘息患者に対する維持療法として高用量QVM149(IND/GLY/MF)150/50/160μg1日1回吸入を承認しました。
この製剤は、気管支拡張作用を持つインダカテロール酢酸塩(LABA)、抗ムスカリン作用を持つグリコピロニウム臭化物(LAMA)、そしてモメタゾンフランカルボン酸エステル(高用量ICS)の1日1回吸入の配合剤であり、用量確認が可能な吸入器「ブリーズヘラー®」を使用します。
グリコピロニウムの特定の用途と製剤の知的財産権は、2005年4月にSosei HeptaresおよびVecturaにより、ノバルティスに独占的に許諾されました。モメタゾンは、QVM149(米国を除く世界各国)での使用が米国ニュージャージー州ケニルワースにあるメルク・アンド・カンパニーの子会社からノバルティスに独占的に許諾されています。
IND/GLY/MFは、吸入確認が可能な単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー®」を用いて1日1回吸入します。承認された場合、IND/GLY/MFは、デジタルデバイスと一緒に処方されるEUで最初の喘息治療薬となります。デジタルデバイスとは「ブリーズヘラー®」用に開発されたプロペラ・ヘルス社のセンサーとアプリで構成されます。このデジタルデバイスは、吸入確認、服薬リマインダー、及び治療上の決定をより良くサポートするため、患者に主治医とも共有できる客観的データへのアクセスを提供するものです。
プロペラ・ヘルス社が「ブリーズヘラー®」用に開発したセンサーは、海外ではCEマークを取得している医療機器で、ノバルティスに全世界でライセンス許諾されています*。センサーには、マイクロチップ、マイク、Bluetooth機能、アンテナ、およびバッテリーが搭載されています。センサーは、吸入器「ブリーズヘラー®」の薬物送達特性に影響を与えず、それぞれの吸入を記録します。記録された患者の薬剤使用状況に基づいて、患者が喘息の症状をよりよく自己管理できるようにアプリ内にユーザー毎にカスタマイズされた内容が提示されます。
欧州における「アテキュラ ブリーズヘラー」について
2020年5月30日、1日1回吸入の「アテキュラ ブリーズヘラー」(QMF149、IND/MF)150/80 μg、150/160μgおよび150/320μgは、ICSおよび吸入短時間作用性β刺激剤で適切にコントロール出来ない12歳以上の未成年、および成人喘息の維持療法として、欧州委員会(EC)から承認を取得いたしました15。IND/MFは、気管支拡張作用を持つインダカテロール酢酸塩(LABA)と抗炎症作用を持つモメタゾンフランカルボン酸エステル(ICS)の1日1回投与の配合剤であり、用量確認が可能な吸入器「ブリーズヘラー®」を使用します。モメタゾンは、QVM149(米国を除く世界各国)での使用が米国ニュージャージー州ケニルワースにあるメルク・アンド・カンパニーの子会社からノバルティスに独占的に許諾されています。
PLATINUM臨床開発プログラムについて
世界中で7,500人以上の患者を対象としたPLATINUMプログラムは、IND/GLY/MFおよびIND/MFの開発のためのノバルティスの第III相臨床開発プログラムです。これには、低用量のIND/MFをMF単剤と比較したQUARTZ試験、IND/MFをMFおよびサルメテロールキシナホ酸/フルチカゾンプロピオン酸エステル(Sal/Flu)と比較したPALLADIUM試験、IND/GLY/MFをIND/MFおよびSal/Fluと比較したIRIDIUM試験、IND/GLY/MFをSal/Fluとチオトロピウムの併用と比較したARGON試験の4試験が含まれます。
IRIDIUM試験について1
IRIDIUM試験は、喘息患者を対象にIND/GLY/MFとIND/MFの有効性および安全性を比較するためにデザインされた、第III相、多施設共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験でした。
本試験の目的は、呼吸機能検査および喘息コントロールを指標とし、コントロール不十分の喘息患者において、2種類の異なる用量のIND/GLY/MF(高用量:150/50/160μgおよび中用量:150/50/80μg)と、対応する2種類のIND/MF用量(高用量:150/320μgおよび中用量:150/160μg)の有効性および安全性を評価することでした。
一定した用量すなわちLABA/ICS中用量または高用量による治療を受けているにもかかわらず、全患者がスクリーニング時に症候性であり、前年に増悪を1回以上経験していることが求められました。成人男女の喘息患者約3,092例が1:1:1:1:1(各投与群約618例)で以下いずれかの群に無作為に割り付けられました。
- IND/GLY/MF150/50/80μg(1日1回)
- IND/GLY/MF150/50/160μg(1日1回)
- IND/MF150/160μg(1日1回)
- IND/MF150/320μg(1日1回)
- Sal/Flu50/500μg(1日2回、Accuhaler®経由)
本試験の主要な目的は、投与開始26週間後のトラフFEV1(治験薬投与から約24時間後において、最大の努力により最初の1秒間に吐き出せる呼気の容量)の改善に関し、喘息患者において1日1回投与による高用量IND/GLY/MFの高用量IND/MFに対する、中用量IND/GLY/MFの中用量IND/MFに対する優越性を検証することでした。
主要な副次的評価の目的は、投与26週後の喘息管理質問票(ACQ-7)スコアの改善に関し、喘息患者においてそれぞれの用量でIND/GLY/MFのIND/MFに対する優越性を検証することでした。
その他の副次的評価の解析として、高用量IND/GLY/MFと高用量IND/MF、および中用量IND/GLY/MFと中用量IND/MFの増悪頻度の低下の比較、Sal/Flu(50/500μg)と比較したIND/GLY/MFの両用量の有効性の比較も含みました。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万9千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約145カ国におよびます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
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