ノバルティス、FDAより再発型多発性硬化症(RMS)に対し、自己注射を採用した初めてのB細胞療法であるオファツムマブの承認を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年8月20日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- オファツムマブは、良好な安全性プロファイルとともに高い有効性を有し、在宅自己注射も可能となるため、再発型多発性硬化症(RMS)の臨床上のアンメットニーズを満たすことが期待されます1。
- 今回の承認は、再発リスク、身体障害進行、Gd増強T1病変ならびに新規または拡大するT2病変の抑制を示す2つの第III相ASCLEPIOS試験に基づいています1。
- 本試験の事後解析において、投与開始から1年目(0〜12ヵ月)および2年目(12〜24ヵ月)において、それぞれ47.0%および87.8%の患者が疾患活動性を認めない状態(NEDA-3)を達成していることから、オファツムマブは、RMS患者の新規の疾患活動性を抑制することが期待されます2。
2020年8月20日、スイス・バーゼル発-ノバルティスは本日、米国食品医薬品局(FDA)より成人における再発型多発性硬化症(RMS)(将来的に多発性硬化症(MS)となりえる患者が初めて臨床症状を示した状態(CIS)、再発寛解型、および再発を伴う二次性進行型を含む)に対する皮下注射剤であるオファツムマブを承認したことを発表しました。オファツムマブは、Teriflunomideと比較して優れた有効性と同等の安全性プロファイルを有し、RMS患者の第一選択薬となることが期待されています1。また、標的に対し正確に投与および送達されるB細胞療法です1。オファツムマブは、ペン型のオートインジェクターを使用した在宅自己注射にて月1回皮下投与する初めてのB細胞療法です3。
The UCSF Weill Institute for Neurosciences Professor のディレクターであり、ASCLEPIOS IおよびII試験のsteering committeeにおけるCo-chairである Stephen L. Hauser教授は次のように述べています。「この度の承認は、再発型多発性硬化症患者さんにとって素晴らしいニュースであると考えています。主要な臨床試験結果によると、この画期的な治療薬により、新規脳MRI病変が大幅に減少するだけでなく、再発の減少や疾患進行の遅延効果も認められました1。また、良好な安全性プロファイルと月一回の在宅自己投与という簡便さにより、患者さんの通院負担の減少も可能となります。」
RMSの治療ゴールの1つは、神経機能を維持して障害の進行を遅らせることです4。 RMSにおいては複数の疾患修飾療法(DMT)が利用可能であるにもかかわらず、患者さんの多くは疾患活動を十分に抑制することができていません5。有効性の高いDMTによる早期治療介入がRMS患者の長期予後改善につながることをエビデンスは支持しています6。
「多発性硬化症(MS)は複雑な疾患であり、疾患修飾治療に対する反応は個人間で異なります。」Research at the National MS Society のExecutive Vice President であるBruce Bebo博士は述べています。 「したがって、さまざまな作用機序と投与法による治療の選択肢を得ることが大切です。この度、RMSの治療に対し、新たな選択肢が承認されたことを嬉しく思います。」
B細胞はMSの疾患活動に関連しており、それを抑制するB細胞療法は、従来、主に病院や輸液治療センターで実施されており、医療コストへの影響や、一部の患者の生活に負担をもたらす可能性がありました7,8。オファツムマブは、前治療を必要としない月1回の皮下注射による自己投与によって、患者の医療機関への通院回数の減少につながります。 また、APLIOS試験(RMS患者におけるプレフィルドシリンジとペン型のオートインジェクターによるオファツムマブの皮下送達の生物学的同等性を評価する非盲検第II相臨床試験)からの肯定的な結果とASCLEPIOS試験の結果は、オファツムマブが簡便に在宅投与できる非常に効果的なB細胞療法であることを示しています1,3。
Novartis PharmaceuticalsのPresidentであるMarie-France Tschudinは、次のように述べています。「ノバルティスは治療パラダイムに挑戦し、患者さんに最適な治療法を提供することを目指しています。オファツムマブは、RMS患者さんに対して高い有効性と安全性の両方を提供するとともに、疾患管理における自由度を向上させるという意義を持つ治療選択肢です。オファツムマブの開発は、当社のMSに対するコミットメントと知見を示すものであり、それによって患者さんの転帰と症状を大幅に改善する標的治療を見出すことができました。」
オファツムマブは、当初、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療薬で医師による投与必要な高用量静注製剤として、2009年にFDAより承認取得しました。その後、B細胞はMSを含む自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たすことが知られているため7、RMSにおいてオファツムマブの新規の臨床開発プログラムが計画されました。RMSにおけるオファツムマブの臨床開発プログラムには10年を要しましたが、世界中の2, 300人を超える患者が参加したことから、幅広い患者集団を反映した厳密な研究となりました。オファツムマブは明確な機序を介して作用することが分かっており、特にRMS用に設計された治療レジメン(投薬)は、結果に重要な役割を果たします9。これは、CLLの適応症で以前に承認された投与レジメンおよび投与経路とは異なるものです。
オファツムマブの承認は、年間再発率(ARR、主要評価項目)、3ヵ月持続する障害進行(CDP)、Gd増強T1病変ならびに新規または拡大するT2病変において、オファツムマブ投与群がTefilunomide投与群と比較して有意に減少したことを示した第Ⅲ相試験のASCLEPIOS IおよびII試験の結果に基づいています1。これら試験結果は、2020年8月6日号のNew England Journal of Medicineに掲載されました。
オファツムマブは、9月上旬に米国で発売される予定です。その他の申請については現在世界中で進行しており、ヨーロッパでのオファツムマブの承認取得は2021年第2四半期までを予定しています。
*オファツムマブの投与開始が可能となる時期については医療機関により異なる場合があります。
ASCLEPIOS IおよびII試験について
ASCLEPIOS IおよびII試験は、RMSの成人患者を対象として、オファツムマブ20 mg月1回皮下投与の安全性と有効性をteriflunomide 14mg錠1日1回経口投与との比較から評価するツイン、同一デザイン、可変投与期間(最長30ヵ月間)、二重盲検、無作為化、多施設共同、第III相試験です。 ASCLEPIOS IおよびII試験は、総合障害度評価尺度(EDSS)スコアが0~5.5であった18歳から55歳までの1, 882名のMS患者が登録されました。試験は、37ヵ国の350を超える医療機関で実施されました10。ASCLEPIOS IおよびII試験において、オファツムマブ投与群では、teriflunomide投与群(両方の試験でP <.001)と比較して、主要評価項目である年間再発率(ARR)をそれぞれ51%(0.11 vs 0.22)および59%(0.10 vs 0.25)と大幅に減少させました。また、オファツムマブはASCLEPIOS試験で示されているように、事前に決められた統合解析でteriflunomide投与群と比較して、3ヵ月間持続するCDPで34.4%(P = .002)の相対リスク低下も示しました1。
また、 オファツムマブ投与群は、teriflunomide投与群と比較してGd増強T1病変と新規または拡大T2病変の両方の有意な抑制を示しました。両試験ともに、オファツムマブ投与群は、Gd増強T1病変の平均値を減少させ(ASCLEPIOS IおよびII試験それぞれ98%と94%の相対的な減少、両方ともP <.001)新規または拡大T2病変についても同様でした(ASCLEPIOS IおよびII試験それぞれ82.0%と84.5%の相対な減少、両方ともP <.001)1。
オファツムマブ投与群とteriflunomide投与群は重篤な感染症や悪性腫瘍の発現率においても同等の安全性プロファイルを有していました。上気道感染、頭痛、注射に関連する反応、注射部位への反応は、両群で最もよくみられた有害事象でした(発現頻度≧10%)1。別の解析によると、オファツムマブがRMS患者における新たな疾患活動を抑制することも示されました。オファツムマブ投与群とteriflunomide投与群において、NEDA-3(再発なし・MRI病変なし・身体障害進行なし)を達成した患者割合は、1年目でオッズ比3倍超(47.0% vs 24.5%; p <.001)、2年目で8倍(87.8% vs 48.2%; p <.001)でした2。
概して、CD20 陽性 B細胞を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体であるオファツムマブは、優れた有効性を示し、感染症の発現率などteriflunomideと同等の安全性プロファイルを示しました。
APLIOS 試験について
APLIOS試験は、ASCLEPIOS IおよびII試験で使用されているプレフィルドシリンジとペン型のオートインジェクターを介した皮下投与によるB細胞抑制に関する生物学的同等性を明らかにするため、RMS患者を対象として実施した12週、非盲検の第II相生物学的同等性試験です。参加者は、腹部および大腿部を含む注射箇所や使用機器によって無作為化されました。B細胞の抑制は12週間にわたって9回測定され、ベースラインからのGd増強病変の値は4、8、12週目に評価されました。使用機器または注射箇所にかかわらず、オファツムマブ20 mgの皮下投与は毎月実施され、迅速かつほぼ完全な形でB細胞を持続的に抑制しました。 B細胞濃度が10細胞/μL未満の患者の割合は、初回投与後7日時点で65%を超え、4週目時点で94%となり、その後、残りの投与とともにすべて95%以上を維持しました。オファツムマブ投与により、Gd増強病変の平均値はベースライン(1.5)からそれぞれ4、8、12週までに0.8、0.3、0.1に減少しました。評価時にGd増強病変のない患者の割合は、それぞれ66.5%、86.7%、および94.1%でした4,5。
オファツムマブについて
オファツムマブは、成人のRMSにおいて、標的に対し正確に投与および送達されるB細胞療法で、自己投与によってより柔軟な疾患管理が可能となる製剤です。本剤は、完全ヒト抗CD20モノクローナル抗体(mAb)で、月1回皮下注射で自己投与するものです1,3。オファツムマブ導入時には0,1,2週目に医師の指導の下、投与されます。前臨床試験で示されているように、オファツムマブはB細胞表面のCD20分子の異なるエピトープに結合することにより作用し、強力なB細胞の溶解および減少を誘発します9。また、オファツムマブの標的選択性と皮下投与を採用したことによって、B細胞の減少を必要とするリンパ節への正確なターゲティングと、脾臓でのB細胞温存を両立することが可能となりました11。オファツムマブの月1回の投与は、B細胞の迅速な回復も可能とし、利便性の向上に寄与します12。オファツムマブはジェンマブによって開発され、グラクソ・スミスクラインにライセンス供与されました。ノバルティスは、2015年12月に、RMSを含むすべての適応症について、オファツムマブに対する権利をグラクソ・スミスクラインから取得しました13。
*オファツムマブは日本においてMSに対する治療薬として開発中です。
*オファツムマブの在宅自己注射の日本における適応については未定です。
多発性硬化症について
多発性硬化症(MS)は、ミエリンの損傷、脳、視神経および脊髄の機能障害を特徴とする中枢神経系の慢性炎症性疾患です14。世界中で約230万人が罹患している15 MSは、将来的にMSとなりえる患者が初めて臨床症状を示した状態(CIS)、再発寛解型(RRMS)、二次進行型(SPMS)および一次進行型(PPMS)の4種類の病型に分けられます16。MSのさまざまな病型は、患者が再発(明確に定義できる神経機能を悪化させる急性炎症性発作)を経験するかどうか、および/または疾患の発症から神経損傷および身体障害進行につながるかどうかに基づいて判断されます14。
ノバルティスの神経内科領域における取組みについて
ノバルティスは、神経内科領域においてアンメットニーズの高い疾患に苦しむ患者さんへの革新的な治療法をお届けすることができるよう研究開発に注力しています。私たちは、MS、片頭痛、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、てんかん、注意欠陥多動性障害など、複数にわたる疾患の患者さんと医療関係者へのサポートに努め、MS、アルツハイマー型認知症、脊髄性筋萎縮症、および特殊神経領域での有望なパイプラインを揃えています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約10万9千人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約140カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
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ノバルティス、FDAより再発型多発性硬化症(RMS)に対し、自己注射を採用した初めてのB細胞療法であるオファツムマブの承認を取得(PDF 557KB)