ノバルティス、進行性悪性黒色腫における「タフィンラー®」「メキニスト®」とスパルタリズマブ(PDR001)併用療法を検討した第III相COMBI-i試験最新データを発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年9 月19日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 「タフィンラー」と「メキニスト」併用時の前例にない無増悪生存期間に基づき、進行性BRAF遺伝子変異陽性悪性黒色腫に対する「タフィンラー」「メキニスト」併用療法の標準治療としての有効性を確認1-4
- 3剤併用療法における主要評価項目は未達も、COMBI-i臨床試験の比較対照群の「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、良好な持続的奏効と無増悪生存期間にベネフィットを示す
- スパルタリズマブの開発プログラムは継続し、本免疫療法と他の抗がん剤との併用についても研究を継続
2020年9月19日、スイス・バーゼル発- ノバルティスは本日、分子標的治療である「タフィンラー®(ダブラフェニブ)」「メキニスト®(トラメチニブ)」および試験対象の免疫療法であるスパルタリズマブ(PDR001)の3剤併用療法と「タフィンラー」「メキニスト」併用療法を比較検討した第III相COMBI-i試験の詳細結果を発表しました1。本試験の比較対照群において「タフィンラー」「メキニスト」を投与した患者から得られた有効性のデータは、複数の第III相試験において確認された無増悪生存期間(PFS)のうち、最長を示しました。主要評価項目である、3剤併用療法で治療を行った患者における無増悪生存期間(PFS)は未達でした1-4。
COMBI-i試験は、未治療のBRAF V600変異陽性の進行性悪性黒色腫患者を対象に実施したものです。本結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の2020年バーチャル年次総会1において発表されました。
英国マウントバーノンがんセンター(Mount Vernon Cancer Centre)の顧問腫瘍内科医で、COMBI-iの治験責任医師でもあるポール ナサン(Paul Nathan)博士は「治療にあたる医師と患者さんにとって、COMBI-i試験におけるダブラフェニブとトラメチニブの併用による持続性のある無増悪生存期間は、この分子標的薬の併用療法が、BRAF変異陽性の進行性悪性黒色腫患者さんに対して、標準治療であることを裏付けています」と述べています。「この試験の対照群の結果が、想定よりも良好であり、ダブラフェニブとトラメチニブの有効性が持続的に一貫して向上しているという点は朗報です。本試験は主要評価項目を達成しませんでしたが、3剤併用療法群の有効性に対して、可能性を感じる重要な傾向が認められました。免疫療法の追加によってベネフィットを得られる可能性のある患者さんについて、今後さらなる研究が必要です。」
このプラセボ対照、ランダム化、二重盲検比較試験から得られた所見は、3剤併用療法群の患者(n=267)ではPFSの中央値が16.2ヵ月であったのに対し、「タフィンラー」「メキニスト」併用群の患者(n=265)では、12.0ヵ月でした(ハザード比[HR] 0.82、95% CI 0.655~1.027、p=0.042)1。全奏効率は、3剤併用療法群で68.5%(95% CI、62.6~74.1%)に対し、「タフィンラー」「メキニスト」併用群では64.2%(95% CI、58.1~69.9%)でした1。この試験では、2年のデータカットオフの時点で、3剤併用療法群では奏効期間(DOR)の中央値には到達しませんでした。これに対し、「タフィンラー」「メキニスト」併用群では20.7ヵ月でした1。
シニアバイスプレジデント兼オンコロジー医薬品開発部門の責任者であるジェフ レゴス(Jeff Legos、Ph. D、MBA)は、「パートナーである治験責任医師の皆さんや世界中の悪性黒色腫患者さんと協力し、患者さんの予後の改善方法を探るため、私たちはCOMBI-i試験に取り組んできました。本試験が3剤併用療法の可能性について、科学的知見の進展に寄与したことを誇りに思います。本試験の結果は、『タフィンラー』『メキニスト』を投与した患者さんでは、持続性のある奏効と無増悪生存期間について引き続きベネフィットが認められることを裏付けるものであり、過去の第III相試験で報告されたデータと整合しています」と述べました。
ジェフ・レゴスはさらに、「ノバルティスは今後も、世界中の患者さんに『タフィンラー』『メキニスト』の併用療法の提供を続け、現在進められているスパルタリズマブの開発を含め、多様ながん種において、がん免疫療法に関する大胆なアプローチや研究を通じ、科学の進展に貢献していきます」と述べました。
COMBI-i試験について1
COMBI-i試験は、切除不能(ステージIIIC)または転移性(ステージIV)のBRAF V600E/K変異陽性の皮膚悪性黒色腫患者を対象に、第一選択療法として、試験対象の抗PD-1療法であるスパルタリズマブと「タフィンラー(ダブラフェニブ)」「メキニスト(トラメチニブ)」の併用を、「タフィンラー」「メキニスト」およびプラセボとの併用と比較および評価した二重盲検、第III相国際共同試験(NCT02967692)です。試験は3部構成で実施されました。安全性導入パート(パート1)の主要評価項目は用量制限毒性の発現率であり、バイオマーカーコホート(パート2)の主要評価項目は免疫微小環境とバイオマーカーの変化でした。ランダム化パート(パート3)では、主要評価項目を治験担当医の評価による無増悪生存期間としました。
COMBI-i試験の参加者はステージIIIC(切除不能)またはステージIV(転移性)のいずれかに分類され、第一選択療法として治験薬の投与を受けました。新たな副作用は認められず、対照群における安全性プロファイルは過去の試験で観察されたものと整合していました。COMBI-i試験では、分子標的治療によくみられる副作用の発熱、すなわち熱症状に対処するための新たな副作用管理プロトコールについても評価を行いました。
3剤併用療法群では治験薬との因果関係を否定できないグレード3以上の重篤な有害事象(TRAE)が患者の23.2%で発現したのに対し、「タフィンラー」「メキニスト」併用群では11%でした。3剤併用療法群および「タフィンラー」「メキニスト」併用療法において認められた、治療との関連性を問わないグレード3以上の主な有害事象は、血中クレアチンホスホキナーゼの上昇(7.9% vs.7.2%)、発熱(5.2% vs.3.0%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの上昇(3.7% vs.1.1%)、疲労(3.4% vs.1.9%)、発疹(3.4% vs.0.4%)、無力症(2.2% vs.1.1%)、頭痛(1.1% vs.1.5%)、下痢(0.7% vs.1.9%)、悪心(0.7% vs.0.4%)、関節痛(0.7% vs.1.5%)、悪寒(0 vs.0.8%)です。3種類すべての治験薬の投与中止に至ったTRAEの発現率は、それぞれ患者さんの12%と8%でした。
がん治療を再考するための大胆なアプローチを含むノバルティスの最新情報や、ノバルティスによるESMOの2020年バーチャル年次総会のシンポジウムとデータ発表へのアクセス(登録参加者向け) は、https://www.virtualcongress.novartis.com/esmo20/をご覧ください。
スパルタリズマブ(PDR001)について
スパルタリズマブは、ヒトのプログラム細胞死-1(PD-1)受容体を標的とするモノクローナル抗体(治験薬)です。 その開発プログラムは現在も継続中であり、さまざまな種類の腫瘍に対する免疫療法の研究が行われています。
「タフィンラー」「メキニスト」について2-4
BRAF/MEK阻害の世界における主導的存在である分子標的薬、「タフィンラー」「メキニスト」の併用療法は、第III相のCOMBI-dおよびCOMBI-vのピボタル試験のデータにもとづき、切除不能または転移性のBRAF変異陽性悪性黒色腫患者の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)と欧州委員会から承認されています。
COMBI-d試験において、「タフィンラー」「メキニスト」の併用は、タフィンラー単剤療法と比較して統計学的に有意な全生存期間(OS)の向上というベネフィットを達成しました(中央値は25.1ヵ月vs 18.7ヵ月、 ハザード比[HR] 0.71、[95%信頼区間(CI)は0.55~0.92]、p=0.01)。無増悪生存期間(PFS)の中央値は、併用療法群の患者211例では9.3ヵ月であったのに対し、単独療法群の患者212例では8.8ヵ月でした(HR 0.75 [95% CI、0.57~0.99]、p=0.035)。
COMBI-v試験において、「タフィンラー」「メキニスト」は、ベムラフェニブ単剤療法と比較して統計的に有意なOSの延長というベネフィットを実証しました(中央値未達 vs 17.2ヵ月)、HR 0.69 [95% CI、0.53~0.89]、p=0.005)。PFSの中央値は、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法を受けた患者352例では11.4ヵ月であったのに対し、ベムラフェニブの単剤療法群の患者352例では7.3ヵ月でした(HR 0.56 [95% CI、0.46~0.69]、p<0.001)。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は145ヵ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Nathan P, et al. Spartalizumab plus dabrafenib and trametinib in patients with previously untreated BRAF V600–mutant unresectable or metastatic melanoma: results from the randomized part 3 of the Phase III COMBI-i trial. Presentation Number LBA43. ESMO Virtual Congress 2020, September 19-21, 2020.
- Robert C, et al. Five-Year Outcomes with Dabrafenib plus Trametinib in Metastatic Melanoma. N Engl J Med. 2019 June 4. doi: 10.1056/NEJMoa1904059.
- TAFINLAR® (dabrafenib) Prescribing Information. Novartis Pharmaceuticals Corporation, April 2020. Available at: https://www.novartis.us/sites/www.novartis.us/files/tafinlar.pdf.
- MEKINIST® (trametinib) Prescribing Information. Novartis Pharmaceuticals Corporation, April 2020. Available at: https://www.novartis.us/sites/www.novartis.us/files/mekinist.pdf.
ノバルティス、進行性悪性黒色腫における「タフィンラー®」「メキニスト®」とスパルタリズマブ(PDR001)併用療法を検討した第III相COMBI-i試験最新データを発表(PDF 354KB)