ノバルティス、IRIDIUM試験の事後解析により「エナジア® ブリーズヘラー®」の高用量は、中用量に対し喘息増悪を減少させたと発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年9月7日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 1日1回投与「エナジア® ブリーズヘラー®」の高用量は、「エナジア® ブリーズヘラー®」の中用量と比較して、 52週間にわたり喘息増悪頻度が21%(中等度または重度)および31%(重度)低下1
- オプションのデジタルデバイス(センサーとアプリ)を含む「エナジア® ブリーズヘラー®」は、LABA/ICS2でコントロール不十分の喘息患者を対象に承認された世界初のLABA/LAMA/ICS固定用量配合剤
- 事後解析結果は、最近Lancet Respiratory Medicine3に発表された主要な第III相IRIDIUM試験の結果を補完するもの
2020年9月7日、スイス・バーゼル発 –ノバルティスは、本日、第III相IRIDIUM試験から長時間作用性β2刺激剤(以下、LABA)/吸入ステロイド(以下、ICS)の中用量または高用量で喘息がコントロール不十分な患者において、「エナジア® ブリーズヘラー®」(インダカテロール酢酸塩、グリコピロニウム臭化物およびモメタゾンフランカルボン酸エステル[IND/GLY/MF]、以下「エナジア」)高用量の1日1回投与が、「エナジア」中用量の1日1回投与と比較して、中等度から重度の喘息増悪頻度を有意に減少させたと発表しました。欧州呼吸器学会(ERS)2020で発表された第III相IRIDIUM試験の事後解析では、「エナジア」高用量の安全性プロファイルは第III/IIIb相PLATINUM臨床開発プログラムでこれまで実施された試験と一致していることも示されました。
トロント大学医学部教授のケネス チャップマン氏(Kenneth Chapman)は、次のように述べています。「この事後解析は、コントロール不十分な喘息患者における喘息増悪をさらに減少させる効果的なステップアップ治療の選択肢として、IND/GLY/MF高用量の可能性を示しています。また今回の結果は、LABA/ICS標準治療であるサルメテロールキシナホ酸塩/フルチカゾンプロピオン酸エステル(Sal/Flu)に対して、IND/GLY/MF高用量が呼吸機能を改善し、増悪を減少させる可能性が示されたIRIDIUM試験の主要な有効性および安全性データを補完するものです。」
事後解析の結果、既存吸入療法で十分にコントロールできなかった喘息患者において、「エナジア」高用量(150/50/160μg群)は、中用量(150/50/80μg群)と比較して、52週にわたり中等度から重度の喘息増悪頻度を21%(p=0.026)、重度の喘息増悪頻度を31%(p=0.003)有意に減少させました。
また、「エナジア」高用量群は、中用量群と比較して全ての喘息増悪頻度(軽度、中等度、重度)を14%(p=0.132)低下させましたが、統計的に有意ではありませんでした。比較検討した両用量群において、良好な安全性および忍容性プロファイルが認められました。
コントロール不十分の喘息について
喘息は世界中で3億5,800万人が罹患していると推定され、症状がコントロール不十分な場合、個人的、健康的、経済的負担の点から重大な問題を引き起こしかねません4,5。既存治療を受けているにも関わらず、GINA(Global Initiative for Asthma)ステップ3の40%以上、GINAステップ4および5の45%以上の患者は、症状のコントロールが不十分であるといわれています6,7。症状のコントロールが不十分な喘息患者は、疾患の重症度を軽視または過小評価する傾向があり、増悪、入院または死亡のリスクが高くなるという報告もあります8-10。治療法が合わない、経口ステロイド剤の安全性、生物学的製剤の不適応など未解決の課題はまだ多く、喘息に対するアンメット・メディカル・ニーズが明らかになっています11-14。
欧州における「エナジア」について
2020年7月7日、欧州委員会(EC)は、長時間作用性β2刺激剤(以下、LABA)と高用量の吸入ステロイド剤(以下、ICS)の併用による維持療下において過去1年に1回以上の喘息増悪を経験したコントロールが不十分な成人の喘息患者に対する維持療法として高用量QVM149(IND/GLY/MF)150/50/160μg 1日1回吸入を承認しました2。この製剤は、気管支拡張作用を持つインダカテロール酢酸塩(LABA)、抗ムスカリン作用を持つグリコピロニウム臭化物(LAMA)、そしてモメタゾンフランカルボン酸エステル(高用量ICS)の1日1回吸入の配合剤であり、用量確認が可能な吸入器「ブリーズヘラー®」を使用します。グリコピロニウムの特定の用途と製剤の知的財産権は、2005年4月にSosei HeptaresおよびVecturaにより、ノバルティスに独占的に許諾されました。モメタゾンは、QVM149(米国を除く世界各国)での使用が米国ニュージャージー州ケニルワースにあるメルク・アンド・カンパニーの子会社からノバルティスに独占的に許諾されています。
IND/GLY/MFは、吸入確認が可能な単容量型ドライパウダー吸入器「ブリーズヘラー®」を用いて1日1回吸入します。IND/GLY/MFは、デジタルデバイスと一緒に処方されるEUで最初の喘息治療剤となります。デジタルデバイスとは「ブリーズヘラー®」用に開発されたプロペラ・ヘルス社のセンサーとアプリで構成されます。このデジタルデバイスは、吸入確認、服薬リマインダー、及び治療上の決定をより良くサポートするため、患者に主治医とも共有できる客観的データへのアクセスを提供するものです。
プロペラ・ヘルス社が「ブリーズヘラー®」用に開発したセンサーは、海外ではCEマークを取得している医療機器で、ノバルティスに全世界でライセンス許諾されています。センサーには、マイクロチップ、マイク、Bluetooth機能、アンテナ、およびバッテリーが搭載されています。センサーは、吸入器「ブリーズヘラー®」の薬物送達特性に影響を与えず、それぞれの吸入を記録します。記録された患者の薬剤使用状況に基づいて、患者が喘息の症状をよりよく自己管理できるようにアプリ内にユーザー毎にカスタマイズされた内容が提示されます。
ノバルティスは、喘息の配合吸入剤による環境への影響を軽減するために、ハイドロフルオロアルカン/クロロフルオロカーボン(HFA/CFC)を使わない「ブリーズヘラー®」でIND/GLY/MFを吸入します。ノバルティスは、サステナビリティを推進することを目指しており、気候、廃棄物、水への影響を最小限に抑えるという意欲的な目標を設定しており、これには2025年までに企業活動においてカーボンニュートラルになるという目標も含まれています。
IRIDIUM試験について1
IRIDIUM試験は、喘息患者を対象にIND/GLY/MFとIND/MFの有効性および安全性を比較するためにデザインされた、第III相、多施設共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較試験でした。
本試験の目的は、呼吸機能検査および喘息コントロールを指標とし、コントロール不十分の喘息患者において、2種類の異なる用量のIND/GLY/MF(高用量:150/50/160μgおよび中用量:150/50/80μg)と、対応する2種類のIND/MF用量(高用量:150/320μgおよび中用量:150/160μg)の有効性および安全性を評価することでした。
一定した用量すなわちLABA/ICS中用量または高用量による治療を受けているにもかかわらず、全患者がスクリーニング時に症候性であり、前年に増悪を1回以上経験していることが求められました。成人男女の喘息患者約3,092例が1:1:1:1:1(各投与群約618例)で以下いずれかの群に無作為に割り付けられました。
- IND/GLY/MF150/50/80μg(1日1回)
- IND/GLY/MF150/50/160μg(1日1回)
- IND/MF150/160μg(1日1回)
- IND/MF150/320μg(1日1回)
- Sal/Flu50/500μg(1日2回、Accuhaler®経由)
本試験の主要な目的は、投与開始26週間後のトラフFEV1(治験薬投与から約24時間後において、最大の努力により最初の1秒間に吐き出せる呼気の容量)の改善に関し、喘息患者において1日1回投与による高用量IND/GLY/MFの高用量IND/MFに対する、中用量IND/GLY/MFの中用量IND/MFに対する優越性を検証することでした。
主要な副次的評価の目的は、投与26週後の喘息管理質問票(ACQ-7)スコアの改善に関し、喘息患者においてそれぞれの用量でIND/GLY/MFのIND/MFに対する優越性を検証することでした。
その他の副次的評価の解析として、高用量IND/GLY/MFと高用量IND/MF、および中用量IND/GLY/MFと中用量IND/MFの増悪頻度の低下の比較、Sal/Flu(50/500μg)と比較したIND/GLY/MFの両用量の有効性の比較も含みました。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約145カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
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- Kerstjens HAM, Maspero J, Chapman KR, et al. Once-daily, single-inhaler mometasone-indacaterol-glycopyrronium-mometasone versus indacaterol-mometasone or twice-daily fluticasone-salmeterol in patients with inadequately controlled asthma (IRIDIUM): a randomised, double-blind, controlled Phase III study. Lancet Resp Med 2020. doi: 10.1016/S2213-2600(20)30190-9.
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ノバルティス、IRIDIUM試験の事後解析により「エナジア® ブリーズヘラー®」の高用量は、中用量に対し喘息増悪を減少させたと発表(PDF 393KB)