ノバルティス、特定の進行性リンパ腫患者における臨床的意義のある完全奏効率によりキムリア®のべネフィットを確認
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年12月5日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- ELARA試験の中間解析結果では、再発または難治性(r/r)の濾胞性リンパ腫患者における完全奏効率65%、全奏効率83%1を達成
- JULIET試験の長期追跡調査結果(追跡調査期間中央値40カ月)では、r/rの びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の2年無増悪生存率は33%2
- ELARAおよびJULIETの両試験において、キムリアの安全性プロファイルを再確認し、短期または長期の安全性への新たな懸念は示されず
2020年12月5日、スイス・バーゼル発-ノバルティスは、特定の進行性リンパ腫患者を対象としたキムリア®(一般名:チサゲンレクルユーセル、以下「キムリア」)の2つの試験結果を発表しました。第II相ELARA試験の中間解析結果では、少なくとも3カ月以上の追跡調査時において、キムリアにより、再発または難治性(r/r)の濾胞性リンパ腫(FL)患者の65%が完全奏効(CR)を達成し、全奏効率(ORR)は83%でした。これらの患者は、キムリア投与前に多くのラインの前治療を受けたものの(中央値で4ラインの前治療[範囲は2~13])、同疾患の再発もしくは難治性の病態が継続していました1。2つ目の結果、第II相JULIET試験の長期追跡調査結果(追跡調査期間中央値40カ月)では、r/rの びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の2年無増悪生存率は33%であり、治療選択肢が限られる本疾患において、持続的奏効が得られるという非常に重要な所見が得られました2。JULIET試験では、本疾患の患者に対するキムリアの有効性と、十分に特徴づけられた安全性プロファイルが引き続き確認されました。これらの結果は、第62回米国血液学会議(ASH)で発表されました。
MDアンダーソンがんセンターがん医学部門、リンパ腫・骨髄腫科のネイサン・H・ファウラー(Nathan H. Fowler)医師は、「多数の治療を行っても、再発を繰り返したり奏効しない濾胞性リンパ腫の患者さんでは、追加治療を行うごとに、治療に反応しなくなっていきます」と述べ、「根治につながる治療や造血幹細胞移植に代わる選択肢が大いに求められる中、ELARA試験から得られた中間結果は、我々を勇気づけるものです。今後も、キムリアがこれらの患者さんにどのような形でベネフィットをもたらすのかについて、さらに詳しい知見が得られるのを心待ちにしています」と続けました。
ELARA試験の中間解析結果では、有効性評価可能例52例における追跡調査期間中央値は9.9カ月であり、キムリアを投与された患者の大部分が奏効に至りました。具体的には、少なくとも3カ月以上の追跡調査後、患者の65%(99.5%信頼区間(CI)、45.1~82.4)が完全奏効となり、主要評価項目が達成されました。全奏効率は83%(95% CI、69.7~91.8)でした。完全奏効が得られた患者のうち、大多数(90%)が6カ月以上にわたって奏効を維持しました。
ELARA試験の安全性評価結果では、安全性評価可能例97例において、キムリアによる新たな安全性シグナルの出現は認められませんでした。Leeスケールの定義でグレード3/4のサイトカイン放出症候群(CRS)を発現した患者は認められず、全グレードのCRS発現率は49%でした(29%がグレード1、20%がグレード2)。CRSの治療にトシリズマブを要した患者は15%、ステロイドを要した患者は3%でした。患者の1%にグレード3/4の神経系事象が発現し、グレードを問わない神経系事象が患者の9%に発現しました。CRSおよび重度の神経系事象発現までの期間の中央値はそれぞれ4日および8.5日であり、回復までの期間の中央値はそれぞれ4日と2日でした。すべての神経系事象とCRSは、適切な処置によって回復しました。3例の患者が疾患進行により死亡しましたが、治験治療に関連のある死亡例はありませんでした。ELARA試験では、患者の18%が外来診療にてキムリアの投与を受けました1。
ELARA試験の主要解析結果は、少なくとも6カ月以上にわたって追跡調査を実施した90例の患者のデータとともに、今後の医学学会にて発表する予定です。
ノバルティスのグローバル医薬品開発責任者であり、チーフメディカルオフィサーのジョン・ツァイ(John Tsai)は「ノバルティスは、多くの前治療を受けたにもかかわらず長期的な奏効に達しない進行性血液腫瘍の患者さんのため、キムリアの安全性と有効性を引き続き調査していきます」と述べ、「CAR-T細胞療法の研究が深まるにつれて、こうした新たな解析結果により、特定の進行性リンパ腫患者さんのがん生存率が書き換えられる可能性が示されています」 と続けました。
JULIETピボタル試験から得られた有効性についての最新結果
長期追跡調査(追跡調査期間中央値40カ月)から得られた有効性に関する最新の結果から、JULIET試験でキムリアを投与したr/r DLBCL患者(n=115)において持続的奏効が継続していることが示されました。治療が奏効した61例の患者における24カ月および36カ月時点の無再発率は60%であり、奏効期間(DOR)の中央値は推定できませんでした(95% CI、10~推定不能)3。2年無増悪生存率は33%でした2。24カ月および36カ月時点の生存率は、それぞれ40%および36%でした。重要な点として、3年を超える長期の追跡調査期間を経ても、新たな安全性シグナルは認められませんでした3。
ウィーン医科大学(オーストリア、ウィーン)のウルリッヒ・イエーガー(Ulrich Jaeger)医師は「キムリアが使用できるようになる以前は、再発または難治性DLBCLとともに生きる患者さんの治療に対する長期的奏効はごく稀でした」と述べ、CAR-T細胞治療から最大のベネフィットを得る可能性のある患者のサブグループをさらに的確に定義できるバイオマーカーの解析を含め、今回のJULIET試験の結果は、キムリアが一部の患者さんにとって根治的選択肢になりうることを示すさらなるエビデンスを示しました。また、新たな安全性シグナルが認められなかったことで、医師は今後も自信を持って、キムリア治療の認定施設に患者さんを紹介することができます」 と続けました。
この解析では、ベースラインにおける腫瘍内のMycの過剰発現や腫瘍微小環境(TME)特性などといったバイオマーカーと、キムリアに対する反応の関連性についても評価が行われました。Mycの発現が陰性の患者では、望ましくない免疫抑制型のTMEに至りT細胞の応答が制限されてしまうMyc過剰発現の患者に比べ、転帰が良好であることが確認されました。これらの結果は、Mycの発現が陰性と陽性の患者から得られた過去の転帰とも一致しています4。現在、CAR-T細胞療法への反応を示すバイオマーカーをさらに詳しく特定するための解析を進めているところです。
ASHでのノバルティスの活動に関する情報は、2020 ASH年次総会バーチャルポータルでご覧いただけます。
濾胞性リンパ腫(FL)について
非ホジキンリンパ腫(NHL)の中でも2番目に多い形態である濾胞性リンパ腫は低悪性度のリンパ腫であり、NHL症例の約22%を占めています5,6。全生存率を改善する新たな治療法が出現しているにもかかわらず、FLは再発を繰り返す治癒不能の悪性腫瘍と考えられています7,8。再発性FL患者は生涯の間に中央値で5ラインの前治療にさらされる可能性があり、最大で12ラインという例もあります9,10。FLの3次以降の治療を受ける患者でも利用可能な全身的療法は複数存在していますが、後方のラインではこれらのレジメンの有効性が急激に低下します5。さらに、この再発を繰り返すため、治療抵抗性の患者や早期再発の患者では利用できる治療選択肢が尽きてしまう場合があります8。
ELARA試験について
ELARAはr/r FLの成人患者を対象にキムリアの有効性と安全性を検討する第II相、単群、多施設共同、非盲検の試験であり、本国際共同試験には世界12カ国の30を超える医療機関の患者が登録されています。主要評価項目は、中央判定による最良効果に基づく完全奏効率(CRR)です(Luganoの2014年基準)。有効性評価可能例は、投与時に測定可能病変があり、投与後6カ月を超える追跡調査を受けたか、もしくは早期に中止した患者としました。投与後、3カ月ごとに疾患の評価を実施しました。副次評価項目は、全奏効率、奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間および安全性です。
2020年の第2四半期、米国食品医薬品局(FDA)は、ELARA試験の予備的な結果に基づき、キムリアをr/r FLにおける再生医療先端治療(RMAT)に指定しました。RMATの指定は、この十分な医療が提供できていない患者集団に対する再生医療等製品として、キムリアの開発と審査を迅速化できるよう意図したものです。また、キムリアは、この適応症に対し、FDAから希少疾病用医薬品の指定も受けています。
JULIET試験について
JULIETは、r/r DLBCLの成人患者を対象とした、キムリアの初の多施設国際共同試験です。ペンシルベニア大学の研究者らが主導したJULIETでは、米国、カナダ、オーストラリア、日本、さらにオーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、オランダを含む欧州の10カ国、27施設から患者が登録されました。
キムリアについて
キムリアはCAR-T細胞療法としてFDAの承認を取得した初めての治療製品であり、またCAR-T細胞療法としては初めて2つの異なる適応症で承認された治療製品でもあります。患者さん自身の細胞を用いて、1回の投与で治療を可能にする画期的な免疫細胞療法です。キムリアは現在、r/rの小児および若年成人(25歳まで)の急性リンパ芽球性白血病(ALL)と、r/rの成人DLBCLの治療製品として承認されています11。
細胞・遺伝子治療に対するノバルティスの取り組みについて
ノバルティスは、世界中の患者さんに、治癒の可能性のある細胞・遺伝子治療を届けることで、医療の新しい未来を切り拓くというミッションを掲げています。ノバルティスは充実したCAR-Tのパイプラインを持ち、製造とサプライチェーンのプロセス改善に継続的に投資をしています。ノバルティスは細胞・遺伝子治療のさらなる活用を目標に積極的に研究を進めており、造血器腫瘍への研究を加速すると共に他のタイプのがん患者さんも視野に入れ、新しい技術や標的も注目し、次世代CAR-T細胞療法に取り組んでいます。
ノバルティスは世界で最初にCAR-Tの研究に大規模な投資を行い、世界規模でCAR-T治験を行った製薬会社です。ペンシルベニア大学と共同で開発し、世界で初めて承認されたCAR-T細胞療法であるキムリアはノバルティスのCAR-T細胞療法への取り組みの土台です。
キムリアは現在、27カ国で承認されており、治療実施可能施設は270以上です。今後も、ノバルティスは、CAR-T技術の先駆者として蓄積された知見を強みに、キムリアを必要とする患者さんに治療を提供するために取り組んでいきます。
ノバルティスのグローバルなCAR-T製造拠点は、世界4大陸の7つの施設に及んでいます。ノバルティスではこの広範囲かつ統合的な製造体制により、製造とサプライチェーンの柔軟性と安定性、持続可能性を強化しています。市販製品と治験製品の製造は、現在、ノバルティスの自社施設として製造を行う米国/モリスプレーンズ、スイス/シュタイン、フランス/レジュリスの他、ドイツ/フラウンホーファーインスティテュート、日本/FBRIで行われています。今後、オーストラリア/セル・セラピーズと中国/セルラー・バイオメディシン・グループ(CBMG)での生産も予定しています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は145カ国に及びます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Fowler, N., et al. Efficacy and Safety of Tisagenlecleucel in Adult Patients with Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma: Interim Analysis of the Phase 2 ELARA Trial. 62nd American Society of Hematology Annual Meeting and Exposition. Abstract #1149.
- Jaeger U., et al. Myc Expression and Tumor-Infiltrating T Cells Are Associated With Response in Patients With Relapsed/Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma (r/r DLBCL) Treated With Tisagenlecleucel in the JULIET Trial. 62nd American Society of Hematology Annual Meeting and Exposition. Poster #1194
- Jaeger, U., et al. Myc Expression and Tumor-Infiltrating T Cells Are Associated with Response in Patients (Pts) with Relapsed/Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma (r/r DLBCL) Treated with Tisagenlecleucel in the JULIET Trial. 62nd American Society of Hematology Annual Meeting and Exposition. Abstract #1194.
- Li, L., Li, Y., Que, X. et al. Prognostic significances of overexpression MYC and/or BCL2 in R-CHOP-treated diffuse large B-cell lymphoma: A Systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2018; 8: 6267.
- The Non-Hodgkin’s Lymphoma Classification Project. Blood. 1997;89:3909–3918.
- Anderson J., et al. Epidemiology of the non-Hodgkin’s lymphomas: distributions of the major subtypes differ by geographic locations. Non-Hodgkin’s Lymphoma Classification Project. Ann Oncol. 1998;9(7):7;17–720.
- Wudhikarn, K., et al. Comparative effectiveness research in follicular lymphoma: current and future perspectives and challenges. J Comp Eff Res. 2014.
- Sutamtewagul, G. & Link, B.K. Novel treatment approaches and future perspectives in follicular lymphoma. Ther Adv Hematol. 2019; 10:1–20.
- Data on File, Novartis, 2020.
- Schuster, S., et al. Chimeric antigen receptor T cells in refractory B-cell lymphomas. NEJM. 2017;377(26):2545–2554.
- Kymriah Prescribing Information.
ノバルティス、特定の進行性リンパ腫患者における臨床的意義のある完全奏効率によりキムリア®のべネフィットを確認(PDF 487KB)