ノバルティス、STAMP阻害剤 アシミニブ(ABL001)が、慢性骨髄性白血病の治験においてボスチニブよりも優れたMMR率を示す
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2020年12月8日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 少なくとも2剤以上のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療に抵抗性または不耐容な患者において、アシミニブはボスチニブに比べて、24週時点の分子遺伝学的大寛解(MMR)率が約2倍であった1
- 慢性骨髄性白血病(CML)治療の進歩にも関わらず、依然として多くの患者が疾患進行のリスクにさらされており、逐次的なTKI療法は抵抗性や不耐容の増加に関連している可能性がある2-7
- 今回のデータは、アシミニブがlate line治療において忍容できない副作用に苦しむCML患者の助けになる可能性をさらに強く示した1
- データは米国血液学会議(ASH)で発表され、 2021年上半期に規制当局に提出される予定である
2020年12月8日、スイス・バーゼル発- 第III相ASCEMBL試験は、ABLミリストイルポケット(STAMP)を特異的に標的とする新規の治験薬,アシミニブ(ABL001)が、投与24週時点で、2剤以上のTKI治療歴のある慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML-CP)患者において、ボスチニブに比べ、ほぼ2倍のMMR率を達成したこと示しました(それぞれ25.5% vs. 13.2%、[共通リスク差12.2%,95%信頼区間(CI), 2.19-22.3]; 両側のP値=0.029)1。これらのデータは第62回米国血液学会議(ASH)のレイトブレーキング(最新報告)セッションで発表されました。
スローン・ケタリング記念がんセンターで骨髄増殖性腫瘍プログラムのメンバー兼リーダーを務め、ワイル・コーネル医科大学院の教授でもあるマイケル・J・マウロ(Michael J. Mauro)博士*は「今回の重要な比較データは非常に印象的なものであり、承認されれば、慢性期CMLのlate line治療における課題を克服する上で、アシミニブが極めて重要な役割を果たす可能性を裏付けています」と述べ、「TKI療法の導入と拡大は、過去数十年間にわたってCMLと生きる患者さんに多大な進歩をもたらしてきました。しかしながら、late line治療にある多くの患者さんはいまだに十分な奏効が得られず、疾患の進行や忍容できない副作用に直面しています」と続けています。
CML治療の著しい進歩にもかかわらず、2剤以上のTKI治療歴を有する患者の多くは治療への不耐容を経験しています。過去に2種類のTKIで治療失敗だった患者を対象とした試験の解析では、最大55%で治療への不耐容が報告されました8-13。また、late line治療の患者で治療抵抗性を示す割合はいまだに高いままです。二次治療では、5人中少なくとも3人以上の患者がMMRを達成できず、最大で56%の患者は2年間の追跡調査期間内に細胞遺伝学的完全奏効(CCyR)にも到達していません5,13-18。この後の治療選択肢はほとんどなく、現時点では治療ガイドラインに準拠する三次治療の標準治療が確立されていない中で、2剤以上のTKI治療に抵抗性または不耐容を示す患者は高い疾患進行リスクにさらされています2-5,19-21。
ASCEMBL試験では、233名の患者が無作為化され、アシミニブ40 mgを1日2回(n=157)、またはボスチニブ500 mgを1日1回(n=76)のいずれかが投与されました1。投与24週時点で、アシミニブ群(40.8%)ではボスチニブ群(24.2%)と比べてCCyRを達成した患者が多く、深い分子学的奏効(DMR)に到達した割合もアシミニブ群がボスチニブ群よりも高く、MR4とMR4.5に到達した患者は、アシミニブ群で10.8%と8.9%であったのに対し、ボスチニブ群では5.3%と1.3%でした1。
グレード3以上の有害事象(AE)の発現率は、アシミニブ群とボスチニブ群で、それぞれ50.6%と60.5%でした1。AEによる投与中止率は、アシミニブ群で5.8%だったのに対して、ボスチニブ群では21.1%でした1。同様に、休薬や用量調節、あるいはその両方を必要としたAEの報告頻度は、ボスチニブ群と比べてアシミニブ群で低いとの結果が得られました(それぞれ37.8% vs. 60.5%)1。データカットオフ時点で、アシミニブ群では、ボスチニブ群よりも多くの患者が投与を継続していました(それぞれ61.8% vs. 30.3%)1。
最も多く認められた(> 10%)グレード3以上のAEは、アシミニブ群では血小板減少症(17.3%)と好中球減少症(14.7%)であったのに対し、ボスチニブ群ではアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加(14.5%)、好中球減少症(11.8%)、下痢(10.5%)でした1。投与中の死亡は、アシミニブ群で2例(1.3%)(虚血性脳卒中および動脈塞栓)、ボスチニブ群で1例(1.3%)(敗血症性ショック)でした1。最も頻度が高かったAE(すべてのグレード;≥20%)は、アシミニブ群では血小板減少症(28.8%)と好中球減少症(21.8%)であったのに対し、ボスチニブ群では下痢(71.1%)、悪心(46.1%)、ALT増加(27.6%)、嘔吐(26.3%)、発疹(23.7%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加(21.1%)、好中球減少症(21.1%)、血小板減少症(18.4%)でした1。
米国CML学会のエグゼクティブ・ディレクター兼創設者であるグレッグ・スティーブンス(Greg Stephens)氏は、「CML患者さんの中には、CMLには長年をかけて実現されてきた素晴らしい治療がすでに存在することから『深刻ながんではない』と周囲から言われることがあります。しかし、これは、この病気を患うすべての患者さんに言えることではありません。」と述べ、「ASCEMBL試験の結果はCMLコミュニティにとって非常に心強いものであり、患者さんが直面する課題に対する新たな治療選択肢への強いニーズがあることを強調しています」と続けました。
非臨床データは、アシミニブのBCR-ABLに対する特異性を示唆しています22。オンライン発表にアクセプト済の追加データは、STAMP阻害剤の治験薬であるアシミニブが、BCR-ABL1のATP結合部位の変異克服を企図して設計されていることを強調するものであり、CMLのlate line治療における抵抗性の課題だけでなく、オフターゲット効果の課題にも対処できる可能性があります22。
ノバルティスのグローバル医薬品開発責任者でありチーフメディカルオフィサーのジョン・ツァイ(John Tsai)は、「これまでノバルティスはCMLの最前線で研究開発に取り組んできており、患者さんの予後に大きな変化をもたらしてきました。現時点で利用可能なTKIでは十分に奏効しない、あるいは不耐容の患者さんのために、革新的な医薬品となり得る新規STAMP阻害剤の可能性を前進させることができ誇りに思います」と述べ、「late line治療にニーズがあることは明らかであり、今回の結果をふまえ、私たちはアシミニブが患者さんにとって重要な進歩となると確信しています。規制当局とデータを共有し、世界各国での承認申請を進めて参ります」と続けました。
米国食品医薬品局(FDA)は、アシミニブに対し、ファストトラック指定をしています。米国およびEUの規制当局への承認申請は2021年上半期を予定しています。
ノバルティスでは、血液領域における治療に未来を描くため、大胆なアプローチを続けています。ノバルティスの取り組みや、ASH 2020のバーチャル学会、データ発表へのアクセス(登録参加者向け)を含め、最新情報はhttps://www.virtualcongress.novartis.com/ash20をご覧ください。
アシミニブ(ABL001)について
アシミニブ(ABL001)はABLミリストイルポケット(STAMP)を特異的に標的とする治験薬です。STAMP阻害剤として、慢性骨髄性白血病(CML)のlate line治療におけるTKIへの抵抗性や不耐容に対処できる可能性があることから、CMLの多様な治療ラインにある患者さんへの有効性が期待され、複数の治験で検討されています23-30。
ASCEMBLについて
ASCEMBLは、2剤以上のTKI治療歴を有するPh+CML-CP患者を対象に、経口投与の治験薬であるアシミニブ(ABL001)をボスチニブと比較する、第III相、多施設共同、非盲検無作為化試験です1。試験には、直近のTKI治療に抵抗性または不耐容であった患者が組み入れられています1。
CMLに対するノバルティスの取り組みについて
ノバルティスが進めているフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+CML)の研究は、この疾患を多くの患者で致命的な白血病から慢性疾患にするために役立ってきました。ノバルティスは現在も、世界中の患者さんのための科学的イノベーションと治療へのアクセスに揺らぐことのない決意で取り組みを続けています。
ノバルティスは今後も、グローバルなCMLコミュニティへの献身的な努力を怠らず、患者さんのために勇気と情熱をもって意欲的な目標を追求し、CML治療の革新に取り組んでいきます。
*開示情報:ノバルティスはマウロ博士からコンサルティング業務の提供を受けています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は145カ国に及びます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
参考文献
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