ノバルティス、非小細胞肺がんにおける化学療法との併用による2次または3次治療としてのカナキヌマブ(ACZ885)の第III相試験結果を発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2021年3月9日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。非小細胞肺がんに対し本剤は日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 前治療中または治療後にがんが進行した進行性または転移性非小細胞肺がん患者を対象に実施された第III相CANOPY-2試験の結果、主要評価項目である全生存期間は未達成1
- カナキヌマブ開発プログラムは継続しており、非小細胞肺がんの1次治療および術後補助療法における2件の第III相臨床試験が進行2-3
- CANOPY臨床試験プログラムでは、肺がんのpro-tumor inflammation*におけるインターロイキン-1β(IL-1β)の役割について検討するようデザインされており、それぞれの病期において、カナキヌマブと病期ごとの併用療法を複数の臨床試験において評価。2-5
2021年3月9日、スイス・バーゼル発 – ノバルティスは本日、インターロイキン-1β(IL-1β)阻害薬であるカナキヌマブ(ACZ885)と化学療法薬ドセタキセルの併用療法を評価した第III相CANOPY-2試験において主要評価項目である全生存期間(OS)を達成しなかったと発表しました1。本試験は、白金製剤をベースとした化学療法およびPD-(L)1阻害免疫療法の治療中または治療後に病勢が進行した局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者237例を対象に実施されました4。引き続き2つの第III相CANOPY試験は進行中であり、1次治療および術後補助療法におけるカナキヌマブの評価が行われています2-3。ノバルティスおよびCANOPY-2試験の治験責任医師は試験データを解析し、近日開催される学術会議で結果を発表する予定です。
ノバルティスのグローバル医薬品開発責任者でありチーフメディカルオフィサーであるジョン・ツァイ(John Tsai, MD)は次のように述べています。「CANOPY-2試験の結果は、他の治療ラインで治療を受けた進行性または転移性非小細胞肺がん患者さんにおいて私たちが期待したものではありませんでしたが、これらのデータはIL-1β阻害についての貴重な示唆をもたらしています。非小細胞肺がんを対象とした第III相試験は継続しており、引き続き、早期治療におけるカナキヌマブを評価していきます。CANOPY-2試験に参加いただいた患者さんと治験担当医師の皆様のご協力に心より感謝申し上げます」
免疫療法及び化学療法との併用でカナキヌマブを評価する第III相CANOPY-1試験は、年内に最終結果を報告する予定です2。また、もう一つの第III相試験であるCANOPY-A試験では、術後補助療法としてのカナキヌマブを検証しています。現在までに950人以上の患者登録をしており、合計1,500人の参加となる予定です3。
カナキヌマブ(ACZ885)について
カナキヌマブは、ヒトインターロイキン-1β(IL-1β)に高い親和性および選択性で結合し6,7、その受容体との相互作用を阻害することにより、IL-1β活性を中和するヒトモノクローナル抗体です8。予備的エビデンスによれば、IL-1βを中和することにより、カナキヌマブはpro-tumor inflammation(以下、PTI)*を阻害することで、1)抗腫瘍免疫応答を増強し、2)腫瘍細胞の増殖、生存、浸潤性を抑制し、3)血管新生を阻害することが示唆されます8。PTIは、発がん過程を推進し、抗腫瘍免疫応答を抑制することにより、腫瘍の発生を可能にします9,10。カナキヌマブは、非小細胞肺がんにおけるPTIのファーストインクラスのインターロイキン-1β(IL-1β)阻害薬です10。
* PTI (pro-tumor inflammation): がん細胞の増殖、転移や血管新生を推進し、又癌免疫反応の抑制を引き起こす炎症
CANOPYプログラムについて
ノバルティスでは、心血管系患者さんを対象とした第III相CANTOS試験において肺がん死亡率が有意に低いことが分かったため、CANOPY試験プログラムを開始しました。CANTOS試験では、心臓発作後の患者さん(CRPが2 mg/L以上)を対象に心血管イベントの二次予防策としてのカナキヌマブを評価しました8,9。CANTOS試験の患者さんは、高齢、喫煙歴、その他の臨床的リスクファクターにより、肺がんなどの炎症性がんのリスクも高くなっていました8,9。これらの知見に基づき、ノバルティスは非小細胞肺がん(NSCLC)における治療選択肢の候補としてカナキヌマブを検討する3つの大規模、無作為化、第III相臨床試験および第II相臨床試験を開始しました。
- CANOPY-1試験(NCT03631199)は、局所進行または転移性NSCLCに対する1次治療としてカナキヌマブと、ペムブロリズマブおよび白金製剤をベースとした2剤併用化学療法との併用を評価する第III相試験です2。
- CANOPY-2試験(NCT03626545)は、NSCLCの2次または3次治療において化学療法薬ドセタキセルとの併用でカナキヌマブをドセタキセル単剤と比較する第III相試験です。CANOPY-2試験のパート1は適切な投与量を決定するための安全性導入試験であり、既にASCO 2019で発表されています。今日報告された試験のパート2では、全生存期間(OS)を評価しました4。
- CANOPY-A試験(NCT03447769)は、外科的切除およびシスプラチンベースの化学療法を施行後に術後補助療法としてカナキヌマブを評価する第III相試験です。術後補助療法の試験は、カナキヌマブの投与ががんの再発を予防できるかどうかを判定するためにデザインされています3。
- CANOPY-N試験(NCT03968419)は、予定手術前の切除可能NSCLC患者さんを対象に、ペムブロリズマブとの併用でカナキヌマブを評価する非登録的な第II相術前補助療法試験です5。
肺がんに対するノバルティスのコミットメント
肺がんは世界的に最も多くみられるがんであり、毎年200万人以上の人々が新たに肺がんの診断を受けています11。肺がんには、大きく分けて小細胞肺がん(SCLC)と非小細胞肺がん(NSCLC)の2種類があります12。NSCLCは肺がんの診断の約85%を占めており、毎年約170万人が新たに診断を受けています11,13。現在、肺がんの5年生存率は20%未満であり14、後期に診断されるとこの生存率はさらに低下します15。NSCLC患者さんの大多数は進行性またはステージIIIもしくはIVの疾患と診断されており16、標準治療を受けている間にがんの増殖や進行が認められる肺がん患者さんに対する治療選択肢は限られています17-19。毎年、肺がんで死亡する患者さんは他のがん種よりも多くなります11。
ノバルティスは、世界中の肺がん患者さんのためのクラス最高の治療薬の開発に取り組んでおり、標的を絞った個別化医療と、新たながん免疫療法の両方に焦点を当てたノバルティスの肺がん治療薬開発プログラムは、業界をリードするものです。肺がんに関する業界、患者支援団体との長期的な協力関係をもとに、ノバルティスは肺がん治療において新たな未来を描きます。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は145カ国に及びます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Novartis Data on File
- ClinicalTrials.gov. Study of Efficacy and Safety of Pembrolizumab Plus Platinum-based Doublet
Chemotherapy With or Without Canakinumab in Previously Untreated Locally Advanced or
Metastatic Non-squamous and Squamous NSCLC Subjects (CANOPY-1). Available at:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03631199. Accessed on February 9, 2021. - ClinicalTrials.gov. Brief Title: Study of Efficacy and Safety of Canakinumab as Adjuvant Therapy in
Adult Subjects With Stages AJCC/UICC v. 8 II-IIIA and IIIB (T>5cm N2) Completely Resected Nonsmall
Cell Lung Cancer Acronym: CANOPY-A (Canopy-A). Available at: https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03447769. Accessed on February 9, 2021. - ClinicalTrials.gov. Phase III Study Evaluating Efficacy and Safety of Canakinumab in Combination With Docetaxel in Adult Subjects With Non-small Cell Lung Cancers as a Second or Third Line Therapy (CANOPY-2). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03626545. Accessed on February 9, 2021.
- ClinicalTrials.gov. A Randomized, Open-label, Phase II Study of Canakinumab or Pembrolizumab as Monotherapy or in Combination as Neoadjuvant Therapy in Subjects With Resectable Non-small Cell Lung Cancer (CANOPY-N). Available at: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03968419. Accessed on February 9, 2021.
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ノバルティス、非小細胞肺がんにおける化学療法との併用による2次または3次治療としてのカナキヌマブ(ACZ885)の第III相試験結果を発表(PDF 369KB)