ノバルティス、「キムリア®」ピボタル試験で再発または難治性の濾胞性リンパ腫における高い奏効率と優れた安全性プロファイルを示す
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2021年6 月2日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- ELARA試験の主解析において、 「キムリア®」の単回投与による完全奏効率は66%、全奏効率は86%を示す1
- 複数の前治療歴があり、根治の可能性をもたらす治療選択肢が極めて重要な患者において優れた奏効を示す1,2
- ELARA試験の参加患者において、グレード3/4のサイトカイン放出症候群(CAR-T療法に関連する主な副作用)は認めず 1
- 世界各地でELARA試験に基づき規制当局への申請を今年後半に予定している
2021年6月2日、スイス・バーゼル発-ノバルティスは本日、再発または難治性(r/r)の濾胞性リンパ腫(FL)患者を対象とした「キムリア®」(一般名:チサゲンレクルユーセル、以下「キムリア」)のピボタル第II相ELARA試験の主解析から得られた有望なデータを発表しました1。データは2021年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次バーチャル科学会議(抄録#7508;発表:6月7日月曜日、10:30 AM CDT)で発表される予定です。
ペンシルベニア大学 ペレルマン医学大学院の教授(慢性リンパ球性白血病・リンパ腫臨床ケア研究/ロバート&マルガリータ・ルイス・ドレイファス)かつ、アブラムソンがんセンターのリンパ腫プログラム責任者であり、ASCOでも発表を行う予定のStephen J Schuster氏(MD)は「既存の治療で十分に奏効せず、早期に再発する濾胞性リンパ腫の患者さんは、複数の治療を経験することも多く、その結果、臨床転帰が低下する可能性もあります」と述べました。「研究者としての我々の目標はCAR-T療法の可能性を探求し続けることであり、優れたELARAの安全性および有効性の知見は、「キムリア」が再発または難治性の濾胞性リンパ腫の三次治療において重要な役割を果たす可能性があることを示唆しています」と続けました。
ELARA試験の主解析では、投与を受けた97例が安全性評価の対象、そのうち94例が有効性評価の対象とされ、追跡調査期間の中央値は11ヵ月でした。重要な点としてCAR-T療法に関連する主な副作用であるサイトカイン放出症候群(CRS)のグレード3/4を発現した患者は認められませんでした。患者の49%でLeeスコアで定義されているグレード 1または2のCRSが発現しました。患者の9%でグレード1または2の神経系事象(CTCAE v 4.03に基づく)を発現し、グレード4の神経系事象が1例に発現しましたが、その後回復しました。患者の65%で投与後8週間以内にグレード3以上の有害事象を発現し、主なものは好中球減少症(28%)および貧血(13%)でした。3例が疾患進行により死亡しましたが、治験製品と関連のある死亡は認められませんでした。ELARA試験では、患者の18%が外来診療にて「キムリア」の投与を受けました1,3。
「キムリア」の投与を受けた患者の大多数で、奏効が確認され、 66%が完全奏効(95%信頼区間:56 - 75)でした。全奏効率は86%(95%信頼区間:78 - 92)でした。奏効率は、高リスク患者のサブグループ間で一貫していました。
全奏効例における奏効期間(DOR)の中央値(95%信頼区間:推定不能(NE)- NE)、無増悪生存期間(PFS)の中央値(95%信頼区間:12.1 - NE)、並びに全生存期間(OS)の中央値(95%信頼区間:NE - NE)はまだ推定できていません。6ヵ月時点の完全奏効例における奏効維持率は94%(95%信頼区間:82 - 98)で、6ヵ月時点のPFS率は76%(95%信頼区間:65 - 84)でした。
今回の有効性の結果には、中間解析時に報告された約2倍の患者数から得られたデータを含み、前治療歴が多数あり、複数の前治療を受けたにもかかわらず再発を繰り返すか難治性となった高リスクの患者が含まれています。前治療数の中央値は4(範囲 2 - 13)であり、患者の78%は直近の治療に難治性であり(76%は2レジメン以上の前治療に抵抗性)、 60%は抗CD 20抗体を含む初回治療1~2年以内に進行していました1,3。
ノバルティス オンコロジー細胞・遺伝子治療事業部のグローバルヘッドのStefan Hendriksは、「ELARA試験から得られたこれらの極めて重要な結果は、再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者さんの治療において『キムリア』が有望である可能性を明確に示しています」と述べ、「CAR-T細胞療法での豊富な経験と世界最大の製造拠点を有するノバルティスは、より多くの進行血液がん患者さんに『キムリア』のベネフィットをもたらすことに取り組んでおり、この適応症で世界的な規制当局への申請を可能な限り早急に進めたいと考えています」と続けています。
参考情報:ペンシルバニア大学(Penn)はノバルティスが試験関連技術を使用することを許可しており、Pennと技術の発明者はノバルティスから対価を得ています。
ASCO21バーチャル科学プログラムデータプレゼンテーション(登録者向け)やオンコロジー領域への取り組みを含むノバルティスの最新情報はこちらからご確認ください。[https://www.hcp.novartis.com/virtual-congress/a-2021/ ]
濾胞性リンパ腫(FL)について
非ホジキンリンパ腫(NHL)の中でも2番目に多い疾患である濾胞性リンパ腫は低悪性度のリンパ腫であり、NHL症例の約22%を占めています2,4。全生存率を改善する新たな治療法が出現しているにもかかわらず、FLは再発を繰り返す治癒不能の悪性腫瘍と考えられています5,6。再発性FL患者は生涯の間に中央値で5ラインの前治療を受ける可能性があり、多い場合には12ラインという例もあります7,8。FLの3次以降の治療を受ける患者でも利用可能な全身療法は複数存在していますが、後方のラインではこれらのレジメンの有効性が急激に低下します2。さらに、再発を繰り返すため、治療抵抗性の患者や早期再発の患者では利用できる治療選択肢が尽きてしまう場合があります6。
ELARA 試験について
ELARAは、 r/r FLの成人患者を対象とした「キムリア」の有効性および安全性を検討する第II相、単一群、多施設共同、非盲検臨床試験であり、本国際共同試験には、世界12ヵ国の30を超える施設から患者が登録されています。主要評価項目は、中央判定による最良総合効果に基づく完全奏効率(CRR)です。(Lugano 2014 基準)有効性評価可能例は、投与時に測定可能病変があり、投与後6ヵ月以上の追跡調査を受けているか、もしくは早期に中止している患者としました。投与後、3ヵ月ごとに疾患の評価を実施しました。副次評価項目は、全奏効率、奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間および安全性です。
2020年の第2四半期、米国食品医薬品局(FDA)は、ELARA試験の予備的な結果に基づき、「キムリア」をr/r FLにおける再生医療先端治療(RMAT)に指定しました。RMATの指定は、この十分な医療が提供できていない患者集団に対する再生医療等製品として、「キムリア」の開発と審査を迅速化できるよう意図したものです。また、「キムリア」は、この適応症に対し、FDAから希少疾病用医薬品の指定も受けています。
「キムリア®」について
「キムリア」はCAR-T細胞療法として米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得した初めての治療製品であり、またCAR-T細胞療法としては初めて2つの異なる適応症で承認された治療製品でもあります。患者さん自身の細胞を用いて、1回の投与で治療を可能にする画期的な免疫細胞療法です。「キムリア」は現在、r/rの小児および若年成人(25歳まで)の急性リンパ芽球性白血病(ALL)と、r/rの成人びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療製品として承認されています⁹。
日本でも、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性ALLと再発又は難治性のDLBCLを適応として承認を取得しております。
細胞・遺伝子治療に対するノバルティスの取り組みについて
ノバルティスは、世界中の患者さんに、治癒の可能性のある細胞・遺伝子治療を届けることで、医療の新しい未来を切り拓くというミッションを掲げています。ノバルティスは充実したCAR-Tのパイプラインを持ち、製造とサプライチェーンのプロセス改善に継続的に投資をしています。ノバルティスは細胞・遺伝子治療のさらなる活用を目標に積極的に研究を進めており、造血器腫瘍への研究を加速すると共に他のタイプのがん患者さんも視野に入れ、新しい技術や標的も注目し、次世代CAR-T細胞療法に取り組んでいます。
ノバルティスは世界で最初にCAR-Tの研究に大規模な投資を行い、世界規模でCAR-T治験を行った製薬会社です。ペンシルベニア大学と共同で開発し、世界で初めて承認されたCAR-T細胞療法である「キムリア」はノバルティスのCAR-T細胞療法への取り組みの土台です。
キムリアは現在、28ヵ国で承認されており、治療実施可能施設は300以上です。今後も、ノバルティスは、CAR-T技術の先駆者として蓄積された知見を強みに、キムリアを必要とする患者さんに治療を提供するために取り組んでいきます。
ノバルティスのグローバルなCAR-T製造拠点は、世界4大陸の7つの施設に及んでおり、ノバルティス自社施設と委託製造施設が含まれます。ノバルティスではこの広範囲かつ統合的な製造体制により、製造とサプライチェーンの柔軟性と安定性、持続可能性を強化しています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者に届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は145カ国におよびます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Schuster, S. et.al. Efficacy and Safety of Tisagenlecleucel (Tisa-cel) in Adult Patients (Pts) With Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma (r/r FL): Primary Analysis of the Phase 2 ELARA Trial. Abstract #7508. 2021 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting, June 4-8, Chicago, IL.
- The Non-Hodgkin’s Lymphoma Classification Project. Blood. 1997;89:3909–3918.
- Schuster, S. et.al. Efficacy and Safety of Tisagenlecleucel in Adult Patients With Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma: Primary Analysis of the Phase 2 ELARA Trial. Oral Presentation #7508. 2021 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting, June 4-8, Chicago, IL.
- Anderson J., et al. Epidemiology of the non-Hodgkin’s lymphomas: distributions of the major subtypes differ by geographic locations. Non-Hodgkin’s Lymphoma Classification Project. Ann Oncol. 1998;9(7):7;17–720.
- Wudhikarn, K., et al. Comparative effectiveness research in follicular lymphoma: current and future perspectives and challenges. J Comp Eff Res. 2014.
- Sutamtewagul, G. & Link, B.K. Novel treatment approaches and future perspectives in follicular lymphoma. Ther Adv Hematol. 2019; 10:1–20.
- Data on File, Novartis, 2020.
- Schuster, S., et al. Chimeric antigen receptor T cells in refractory B-cell lymphomas. NEJM. 2017;377(26):2545–2554.
- Kymriah Prescribing Information.
ノバルティス、「キムリア®」ピボタル試験で再発または難治性の濾胞性リンパ腫における高い奏効率と優れた安全性プロファイルを示す(PDF 448KB)