ノバルティス、「ジャカビ®」の慢性移植片対宿主病患者を対象とした第III相REACH3試験の良好な結果がNEJMにて公表されたとの発表
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2021年7月14日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤は「慢性移植片対宿主病」の治療薬として国内未承認です。
資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- REACH3試験データより、「ジャカビ®」はステロイド抵抗性/依存性の慢性移植片対宿主病(GVHD)患者において、現状で利用可能な最良の治療に対し、24週時の全奏効率(ORR)を有意に改善し(49.7%対25.6%)、最良総合効果(BOR)も高かったことが示された(76.4%対60.4%)1
- 今回追加した新たなサブグループ解析で、ベースライン時の各臓器病変に因らず、「ジャカビ®」投与患者の方がORRが高いことが示された1
- 慢性GVHDは、生命を脅かす疾患で、造血幹細胞移植の長期合併症でもあり、複数の臓器に影響を及ぼしうる。患者の約半数が一次治療であるステロイドに抵抗性または依存性となる2-5
- 急性および慢性GVHDを対象とし、米国以外の規制当局へ現在承認申請中
2021年7月14日、スイス・バーゼル発-ノバルティスは本日、「ジャカビ®」 (一般名:ルキソリチニブ、以下「ジャカビ」)が、ステロイド抵抗性/依存性の慢性移植片対宿主病(GVHD)患者において、現状で利用可能な最良の治療(BAT)と比較して有意にアウトカムを改善するという良好な第III相REACH3試験の結果が『The New England Journal of Medicine』誌に掲載されたことを発表しました1。本試験の主な結果は、第62回米国血液学会(ASH)年次総会で既に発表されていましたが、ベースライン時の臓器病変を含むすべての主要なサブグループにおいて、24週時点でのジャカビの良好な全奏効率(ORR)が示されることが新たなサブグループ解析とともに発表されました1。
REACH3試験はノバルティスとインサイト社が共同で実施しています。
フライブルク大学病院血液・腫瘍・幹細胞移植科(ドイツ、フライブルク)のRobert Zeiser博士は「慢性GVHDの患者さんは、全身の様々な臓器で重篤で生命を脅かすような症状を経験する可能性があり、その場合、治療がより困難となり転帰不良となるリスクが高まります」と述べ、「今回のREACH3試験における新しい結果は、一次治療であるステロイドで十分な効果が得られなかった慢性GVHD患者さんに対し、ジャカビが新たな標準治療となりうる可能性を示しています」と続けました。
本試験では、「ジャカビ」の投与により、主要評価項目である投与24週時のORRに有意な改善が認められました1(49.7%対25.6%; p<0.0001 i)。また、投与24週時までのいずれかの時点での最良総合効果(BOR)は、ジャカビ群では76.4%であったのに対し、BAT群では60.4%でした(オッズ比[OR]2.17; 95%CI 1.34 ~3.52)1。ジャカビは主な副次評価項目でも統計学的に有意で、臨床的に意味のある改善を示しています1。
- ジャカビを投与した患者では、BATによる治療を受けた患者よりも、治療成功生存期間(FFS)の有意な延長が認められました(FFS中央値 未到達 対 5.7カ月; ハザード比 0.370、95% CI 0.268~0.510; p<0.0001)。
- ジャカビを投与した患者では、BATによる治療を受けた患者よりも、患者報告による症状の改善が認められました1(24.2% 対 11.0%、p=0.0011)ii。
さらに、今回の論文に含まれた新たなサブグループ解析では、ベースライン時の各臓器病変に因らず「ジャカビ」群の患者で良好なアウトカムが示されました1。
ノバルティスオンコロジーのプレジデントであるSusanne Schaffert、PhDは「今回の「ジャカビ」の新たなデータは、造血幹細胞移植でよくみられ生命を脅かすような合併症のリスクにある患者さんが「ジャカビ」を使用することによる潜在的なベネフィットと重要性を示しています」と述べ、「私たちは、規制当局への申請を進めており、この重要な新しい治療薬を慢性GVHD患者さんに届けられるように取り組んでいきます」と続けました。
REACH3試験では、「ジャカビ」に対し新たな安全性上の懸念は認められず、治療に起因する有害事象(AE)はすでに確認されている安全性プロファイルと一致していました1。「ジャカビ」群で多く認められたグレード3以上の主な有害事象をBAT群と比較すると、血小板減少症(15.2%対10.1%)、貧血(12.7%対7.6%)、好中球減少症(8.5%対3.8%)および肺炎(8.5%対9.5%)でした。「ジャカビ」群の37.6%、BAT群の16.5%で用量調節が必要でしたが、AEを原因として投与を中止した患者は少数でした(16.4% 対 7.0%)1。死亡率は投与群間で同程度でした(18.8% 対 16.5%)1。死亡は主に慢性GVHDに起因しており、BAT群に比べ「ジャカビ」群でわずかに高いことが示されました1。
2019年、米国食品医薬品局(FDA)は、単群の第II相REACH1試験⁶の結果に基づき、成人および12歳以上の小児患者におけるステロイド抵抗性急性GVHDの治療薬としてルキソリチニブ(米国ではインサイト社がJakafi®として販売)を承認しました。
米国では、インサイト社がステロイド抵抗性慢性GVHD患者さんにおいてJakafiを承認申請し、FDA Oncology Center of Excellence ProjectであるOrbisプログラムの一環として審査中です。これにより,カナダ、オーストラリア、スイス、ブラジル及び英国の規制当局との同時申請及び審査が可能となります。
NEJMでのREACH3試験の結果は下記からご覧ください。
https://www.nejm.org/
「ジャカビ®」について
「ジャカビ」は、JAK1およびJAK2チロシンキナーゼの経口阻害剤です。「ジャカビ」は、欧州委員会により、ヒドロキシカルバミドに抵抗性または不耐容である真性多血症(PV)の成人患者の治療、原発性骨髄線維症(慢性突発性骨髄線維症)、真性多血症後の骨髄線維症または本態性血小板血症後の骨髄線維症(MF)の成人患者における脾腫または諸症状の治療薬として承認されました。「ジャカビ」は、欧州連合、スイス、カナダ、日本を含む100カ国以上でMFの治療薬として、また、欧州連合、スイス、日本、カナダを含む85カ国以上でPVの治療薬として承認されています。日本では、2011年9月に骨髄線維症、2020年12月に造血幹細胞移植後の移植片対宿主病を予定される効能又は効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けています。また、2014年7月に骨髄線維症、2015年9月に真性多血症(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る)を効能又は効果として、承認されています。「ジャカビ」の正確な適応症は各国により異なり、その他の国においても、骨髄線維症および真性多血症の治療薬として世界各国で承認申請が進められています。
ノバルティスは、ルキソリチニブについて、インサイト社から米国外での開発と商業化のライセンスを取得しています。ルキソリチニブは、米国ではJakafi®という製品名で、ヒドロキシカルバミドが効果不十分であるか、もしくはヒドロキシカルバミドに不耐容である真性多血症患者の治療薬のほか、中リスクから高リスクの骨髄線維症患者の治療薬、成人および12歳以上の小児患者におけるステロイド抵抗性急性GVHDの治療薬として、インサイト社が販売しています。
真性多血症に対する「ジャカビ」の推奨開始用量は、10 mgの1日2回経口投与です。骨髄線維症に対する推奨開始用量は、血小板数が100,000/mmから200,000/mmの患者に対しては「ジャカビ」15mgの1日2回経口投与、血小板数が200,000/mmを上回る患者に対しては20mgの1日2回投与です。用量は、安全性と有効性に基づいて調整します。血小板数が50,000/mmから100,000/mmのMF患者やPV患者に対する推奨開始用量については、ごく限られた情報しかありません。このような患者に対する最大推奨開始用量は5mgの1日2回投与であり、慎重に調整していく必要があります7。
「ジャカビ」は米国外の国ではノバルティス社の登録商標です。Jakafi®はインサイト社の登録商標です。承認されている適応症以外では、「ジャカビ」の安全性と有効性のプロファイルは確立されていません。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者に届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は145カ国に及びます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
i. 中間解析時に有意であったため、主要解析時のORRのP値としては記述的な値を示した(ORR, P=0.0003)
ii. modified Lee Symptom Score(mLSS)の合計症状スコア(TSS)がベースラインから7ポイント以上減少したことで定義されるレスポンダーの割合を指標とする
参考文献
- Zeiser R, M.D., et al. Ruxolitinib for Glucocorticoid-Refractory Chronic Graft-versus-Host Disease. New England Journal of Medicine; April 2021
- Ferrara JL., et al. Graft-versus-host disease. Lancet. 2009;373(9674):1550-1561.
- Zeiser R., et al. Pathophysiology of Chronic Graft-versus-Host Disease and Therapeutic Targets. N Engl J Med. 2017 Dec 28;377(26):2565-2579
- Jaglowski SM, et al. Graft-versus-Host Disease: Why Haven’t We Made More Progress? Curr Opin Hematol. 2014;21(2):141-147
- Jagasia MH, et al. National Institutes of Health Consensus Development Project on Criteria for Clinical Trials in Chronic Graft-versus-Host Disease: I. The 2014 Diagnosis and Staging Working Group report. Biol Blood Marrow Transplant. 2015.
- Jakafi (ruxolitinib) tablets: Prescribing Information. U.S. Food and Drug Administration; May 2019.
- Jakavi® (ruxolitinib) tablets: EU Summary of Product Characteristics. Novartis; May 2020.
ノバルティス、「ジャカビ®」の慢性移植片対宿主病患者を対象とした第III相REACH3試験の良好な結果がNEJMにて公表されたとの発表(PDF 350KB)