ノバルティスのアシミニブ、新規作用機序を有する慢性骨髄性白血病治療薬としてFDA承認を取得
プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2021年10月29日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤について日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- アシミニブは、少なくとも2剤以上のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病(CML)患者にとって待望の新たな治療選択肢となる1
- 第III相ASCEMBL試験において、アシミニブはボスチニブと比較して、24週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある優越性を示し(アシミニブ群 25% vs. ボスチニブ群 13%)、副作用による投与中止の割合は3分の1未満であった(アシミニブ群 7% vs. ボスチニブ群 25%)2,3
- T315I変異を有するCML患者に関する第I相臨床試験の追加データは、2つ目の適応症に対するFDA承認を裏付けるものであった4
- 学術論文で新規作用機序であるSTAMP阻害剤として知られ、治療ライン横断的(一次治療を含む)な臨床試験を実施しているアシミニブは、CMLとともに生きる患者に革新的な治療法を届けるというノバルティスの20年間にわたる取り組みをさらに前進させるものである2-18
2021年10月29日、スイス・バーゼル発 — ノバルティスは、本日、アシミニブについて、米国食品医薬品局(FDA)が慢性骨髄性白血病 (CML)の2つの異なる適応症に対する治療薬として承認したことを発表しました。FDAは、アシミニブを、24週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率に基づき、2剤以上のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療歴のある慢性期のフィラデルフィア染色体陽性CML(Ph+ CML-CP)の成人患者の治療薬として迅速承認(Accelerated Approval)し、T315I変異を有するPh+ CML-CPの成人患者の治療薬として完全承認しました1。FDAの迅速承認プログラムによると、1つ目の適応症に対する承認は、検証的な臨床的ベネフィットの確認および説明により維持され得ます1。アシミニブは、FDAによって承認されたABLミリストイルポケットと結合して作用する初めてのCML治療薬です。これは、現時点で利用可能なTKI治療に抵抗性および/または不耐容の患者にとって重要な意味を持ちます1-3。学術論文でSTAMP阻害剤としても知られるアシミニブは、現在、アシミニブを一次治療として評価する第III相試験であるASC4FIRST試験を含む、CML-CPの複数の治療ラインでの試験で検討されています2-18。
Leukemia & Lymphoma SocietyのChief Scientific OfficerであるLee Greenberger氏は、次のように述べています。「20年前のTKIの登場は、CMLの治療に革新をもたらしました。しかし、現在もなお、多くの患者さんは、少なくとも2剤以上の治療では十分な奏効が得られず、日々の生活に負担のかかる困難な副作用を経験することも少なくありません。この度のアシミニブの承認は、CML治療の課題を解決し、患者さんの希望となる可能性があります」
多くの患者において、現在のCML治療は不耐容や抵抗性による限界があり、既存のTKIの逐次的な使用は治療不成功率の上昇と関連しています19-26。2剤のTKIによる治療歴のあるCML患者での報告によれば、約55%で治療への不耐容が認められました27。また、二次治療に関する併合解析の報告では、約70%の患者が2年間の追跡期間内にMMRを達成できていないことが示されました28-30。さらに、T315I変異が認められた患者では既存TKIのほとんどに抵抗性を示し、高い疾患進行リスクにさらされています4。
Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK)の Hematologistであり Myeloproliferative Neoplasms Program LeaderであるMichael J. Mauro博士*は、次のように述べています。「CMLは、既存治療が治療不成功の場合や、治療による副作用が不耐容な場合、もしくは度々みられるようにその双方の場合、治療が困難となります。このような状況にあるCMLの治療選択肢にアシミニブを追加することで、この血液がんと闘うための新たなアプローチが得られ、二次治療に切り替えた後も苦しい思いをしている患者さんや、T315I変異が出現し予後の大幅な悪化に直面している患者さんの課題に対処することができます」
FDAによるアシミニブの承認は、第III相ASCEMBL試験およびT315I変異を有するPh+ CML-CP患者を対象として含む第I相(NCT02081378)試験の結果に基づいています。
2剤以上のTKIに抵抗性または不耐容であったPh+ CML-CP患者を対象としたASCEMBL試験の結果、以下が示されました1-3。
- 24週時点のMMR率が、アシミニブはボスチニブと比較してほぼ2倍でした(アシミニブ群25% vs. ボスチニブ群13%[P値=0.029])。
- 副作用により治療を中止した患者の割合が、アシミニブ群(n=156)はボスチニブ群(n=76)の3分の1未満でした(アシミニブ7% vs. ボスチニブ群25%)。
- アシミニブ群で最も多く認められた(発現率20%以上の)有害事象および臨床検査値異常は、上気道感染症、筋骨格痛、血小板数および好中球数の減少、ヘモグロビンの減少、トリグリセリド、クレアチンキナーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加でした。
ノバルティス オンコロジーのプレジデントであるSusanne Schaffert(PhD)は、次のように述べています。「これまで20年以上にわたってCML治療の変革に取り組んできた私たちは、引き続き標準治療に変化をもたらすイノベーションに大胆に取り組み、この疾患とともに生きる患者さんを支えてまいります。今回の承認にあたり、私たちの新たなる重要な一歩を支えてくださった皆さまに感謝を申し上げます。」
アシミニブは現在、米国で医師が適切な患者に処方することで利用が可能となっています。日本国内では、現時点で本剤は未承認です。
T315I変異を有する患者に関するデータを含む、アシミニブの有効性および安全性に関する詳細な追加情報、および適応症を含む処方情報については、
https://www.novartis.us/sites/www.novartis.us/files/scemblix.pdf をご覧ください。
アシミニブについて
アシミニブは、2剤以上のTKIによる治療歴のあるPh+ CML-CPの成人患者、およびT315I変異を有するPh+ CML-CPの成人患者の治療を適応症としています1。1つ目の適応症は、24週時点のMMR率に基づき、米国FDAの迅速承認プログラムのもとで承認されており、この適応症に対する承認は、検証的な臨床的ベネフィットの確認および説明により維持され得ます。
アシミニブは、FDAによって承認されたABLミリストイルポケットと結合して作用する初めてのCML治療薬です1。この新規作用機序は、学術論文ではSTAMP阻害剤としても知られ、2剤以上のTKI治療歴のあるCML患者の抵抗性に対処し、白血病細胞の過剰産生とも関連するBCR-ABL1遺伝子の変異を克服できる可能性があります2-11。アシミニブは、オフターゲット効果は限定的であったことも前臨床試験から示されています31。
ノバルティスは、複数の国や地域の規制当局に対して、アシミニブの申請を行っています。
アシミニブは、現時点で利用可能なTKI治療に抵抗性および/または不耐容である患者にとって重要な前進の一つであり、現在、CML-CPの複数の治療ラインで検討されています2-18。特に、第III相ASC4FIRST試験(NCT04971226)はアシミニブを一次治療として評価するもので、現在は被験者募集段階にあります13。
CMLに対するノバルティスの取り組みについて
ノバルティスは、CMLで苦しむ患者さんに対して長年にわたって科学的な取り組みを行っています。ノバルティスの20年以上にわたる研究開発により、多くの患者さんにとって、この疾患は致命的な白血病から慢性疾患へと変化しました。このような進歩のなかで、ノバルティスは現在も歩み続けています。今後も、この疾患に対する治療法を追求し、多くの患者さんが直面しうる治療抵抗性や不耐容という課題に取り組みます。また、ノバルティスは今後も、患者さんにとって持続可能な医療へアクセスできるよう尽力し、グローバルなCMLコミュニティと連携しながら、CML治療の未来を描いてまいります。
*開示情報:ノバルティスはMauro博士よりコンサルティング業務の提供を受けています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は約140カ国に及びます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
以上
参考文献
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