Apr 13, 2022

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年3月23日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤について日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。

第53条LRに基づく臨時発表

  • 米国食品医薬品局は、[177Lu]Lu-PSMA-617と共に、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性病変同定のための68Gaによる放射標識後の補完的画像診断薬[68Ga]Ga-PSMA-11注射液調製キットも承認2
  • 転移性前立腺がんの5年生存率は30%未満3であり、複数ラインの治療後に進行が認められた転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の治療選択肢は限定的
  • 今回の承認は第III相VISION試験に基づいており、[177Lu]Lu-PSMA-617および標準治療での治療歴のあるPSMA陽性mCRPC患者において、死亡リスクが統計学的有意に低下したことを確認1。主要評価項目である全生存期間および画像診断に基づく無増悪生存期間のいずれも達成1
  • ノバルティスは、標的化合物(リガンド)と治療用放射性同位元素(放射性粒子)を組み合わせた、プレシジョン・メディスンの一種である、標的放射性リガンド療法による、前立腺がんの治療薬の新たな創薬に注力
  • 転移性前立腺がんの早期治療ラインにおいても、[177Lu]Lu-PSMA-617を評価する2つの第III相臨床試験が進行中

2022年3月23日、スイス・バーゼル発 ― ノバルティスは、本日、米国食品医薬品局(FDA)が、体の他の部位に転移した前立腺特異的膜抗原陽性転移性去勢抵抗性前立腺がん(以下、PSMA陽性mCRPC)と呼ばれる進行がんを有する成人患者の治療のためのlutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan(以下、[177Lu]Lu-PSMA-617)を承認したことを発表しました1。これらの患者は、既存の抗がん剤治療(アンドロゲン受容体経路阻害剤およびタキサン系化学療法)を受けています1

Tulane Cancer CenterのメディカルディレクターであるOliver Sartor医師は次のように述べています。 「[177Lu]Lu-PSMA-617の承認は、治療選択肢が限られている患者さんの生存率を有意に改善できるという意味で、進行mCRPC患者さんにとって重要な臨床的意義を持ちます。[177Lu]Lu-PSMA-617は、前立腺がんのプレシジョン・メディスンの進展において、一歩前進したことを意味します」

177Lu]Lu-PSMA-617は、mCRPC患者を対象として標的化合物(リガンド)と治療用放射性同位元素(放射性粒子)を組み合わせた、FDAが初めて承認した標的放射性リガンド療法(RLT)です1。今後数週間以内に医師および患者が[177Lu]Lu-PSMA-617を利用できるようになる予定です。

また、FDAは今回、[68Ga]GA-PSMA-11 注射液調製キットも承認しました2。放射標識後、この薬剤を投与し陽電子放出断層撮影(PET)スキャンすることでmCRPCの成人患者のPSMA陽性病変を同定することができます2。[68Ga]Ga-PSMA-11注射液調製キットは、PSMAを発現する腫瘍病変を特定し、身体の腫瘍がどこで拡散しているか(軟組織、リンパ節、骨など)を特定し、[177Lu]Lu-PSMA-617による標的治療に適格な患者を特定することができます1,2。PSMAは前立腺がん患者の80%以上で高発現しているため、転移性前立腺がんの進行を評価する際の重要な表現型バイオマーカーとなります4-10。今後数週間以内に医師および患者が[68Ga]Ga-PSMA-11注射液調製キットについても利用可能になる予定です。

ノバルティス オンコロジーのプレジデントであるSusanne Schaffert, Ph.D.は次のように述べています。「4つの治療プラットフォームを活用してがんに取り組む当社独自の戦略において、[177Lu]Lu-PSMA-617が、mCRPC患者さんの治療に向けて、標的化RLTプラットフォームを提供出来ることを喜ばしく思います。本日の承認は、前立腺がんにおけるノバルティスのこれまでの取り組みに基づくもので、深刻な疾患である前立腺がんについては、ノバルティスのイノベーションが患者さんに意味のある違いをもたらし得ると確信しています。」

177Lu]Lu-PSMA-617のFDA承認は、第III相VISION試験の結果に基づいています。本試験では、アンドロゲン受容体(AR)経路の阻害剤とタキサン系化学療法を含む抗がん治療による前治療歴があり、[177Lu]Lu-PSMA-617と標準治療(以下、SOC)を受けたPSMA陽性mCRPC患者において、SOCのみの場合と比較して全生存期間の改善が見られました1。[177Lu]Lu-PSMA-617とSOCを投与した参加者では、SOC単独群と比較して死亡リスクが38%低下し、画像診断による疾患進行又は死亡(rPFS)リスクが統計学的に有意に低下しました1。対照群の早期脱落による打ち切り率が高いためにrPFS効果の大きさの解釈には限界がありました1

さらに、ベースライン時に疾患評価が可能であった患者の約3分の1(30%)が、[177Lu]Lu-PSMA-617およびSOC群で奏効(RECIST 1.1による)を示したのに対し、SOC単独群では2%でした1。本試験の[177Lu]Lu-PSMA-617でもっともよく見られた有害事象(全グレード)は、疲労(43%)、口内乾燥(39%)、悪心(35%)、貧血(赤血球数の減少)(32%)、食欲減退(21%)、便秘(20%)でした1

ZERO – The End of Prostate CancerのCEO兼社長であるJamie Bearse氏は次のように述べています。「前立腺がんは、前立腺を有する米国人のがん関連死の原因として2番目に多い疾患です11。mCRPCの治療状況は進化し続けていますが、このような患者さんの転帰を改善するための追加のプレシジョン・メディシンの治療選択肢に対する高いアンメットニーズがあります。[177Lu]Lu-PSMA-617の承認はmCRPCコミュニティに新たな希望をもたらすものです。」

177Lu]Lu-PSMA-617と[68Ga]GA-PSMA-11注射液調製キットは、ノバルティスの放射性リガンド事業部門である、Advanced Accelerator Applicationsの登録製品であり、医師が該当の患者に適切に処方するために米国で承認されています。[177Lu]Lu-PSMA-617および[68Ga]GA-PSMA-11注射液調製キットに関する安全性の詳細および全処方情報は、ノバルティスのウェブサイトをご覧ください。

177Lu]Lu-PSMA-617について

177Lu]Lu-PSMA-617は、他の抗がん剤治療(アンドロゲン受容体経路阻害剤(ARPI)およびタキサンを含む化学療法)を既に受けている前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の成人患者の治療を適応とします1。これは標的化合物(リガンド)と治療用放射性同位元素(放射性粒子)を組み合わせた、プレシジョン・メディスンの一種です1。血中に投与された[177Lu]Lu-PSMA-617は、膜貫通タンパク質であるPSMAを発現する前立腺がん細胞などの標的細胞に結合します1。結合すると、放射性同位元素からのエネルギー放出によって標的細胞や近傍の細胞が損傷し、細胞の複製能力を阻害および/又は細胞死を誘発します1

ノバルティスは、[177Lu]Lu-PSMA-617の販売承認を欧州医薬品庁およびその他保健当局に提出しています。

68Ga]Ga-PSMA-11注射液調製キットについて

68Ga]Ga-PSMA-11 放射性医薬品注射剤診断キットは、転移が疑われ初回根治療法の対象である前立腺がんの成人患者および血清前立腺特異抗原(PSA)値の上昇に基づき再発が疑われる患者のPSMA陽性病変の陽電子放射断層撮影(PET)に適応されます。さらに、[177Lu]Lu-PSMA-617によるPSMA標的療法が適応となる転移性前立腺がん患者の選択にも使用可能です2

ノバルティスは、[68Ga]Ga-PSMA-11注射液調製キットの販売承認を欧州医薬品庁およびその他保健当局に提出しています。

VISION試験について

VISION試験は、治験薬投与群における[177Lu]Lu-PSMA-617(7.4 GBqを6週ごとに最大6サイクル静脈内投与)+治験責任医師が選択した標準的治療(SOC)の有効性および安全性を、対照群におけるSOCと比較評価した、第III相国際前向き無作為化非盲検多施設共同試験です1。PSMA PETスキャン陽性のmCRPCで、アンドロゲン受容体(AR)経路阻害およびタキサン系薬剤を含む化学療法を受けた患者を治験薬投与群に2:1の割合で無作為に割り付けました1。主要評価項目はrPFSおよび全生存期間(OS)でした1。本試験には患者831例が組み入れられました1

進行前立腺がんにおける表現型プレシジョン・メディスンについて

前立腺がん治療の進歩にもかかわらず、mCRPC患者の転帰を改善するための新たな標的治療選択肢に対する高いアンメットニーズが存在します。前立腺がん患者の80%以上は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)と呼ばれる表現型バイオマーカー9を高発現しており4-6,8,9、放射性リガンド療法の有望な診断(陽電子放出断層撮影[PET]スキャンによる画像診断)および治療の標的となっています10。これは、がん細胞における特定の遺伝子変異を標的とする 「遺伝子型」 のプレシジョン・メディスンとは異なります7

ノバルティスの前立腺がんへの取り組み

前立腺がんは、2020年だけで140万を超える新規症例が認められ、375,000人が死亡しています。前立腺がんは世界の半数を超える112カ国で最も多く診断されているがん疾患です12

ノバルティスは、世界トップレベルの科学者、戦略的パートナーシップ、また業界内で最も競争力のあるパイプラインを通してイノベーションを起こし、前立腺がんにおける最大のアンメットニーズに対応するために、新たな標的化治療およびプレシジョン・メディスンのプラットフォームの可能性を探索しています。標的療法という大胆な科学を通じて、私たちの目標は世界におけるこの疾病の負荷を軽減し、前立腺がん患者さんの寿命を延ばし、現在の標準治療を向上させることです。

Advanced Accelerator Applicationsについて

ノバルティスのグループ会社であるAdvanced Accelerator Applications(AAA)は、腫瘍を適応とした標的放射性リガンド療法および精密画像放射性リガンドを専門としています。当社は、核医学における革新をリードすることにより、患者さんの生活を一変させることに尽力しています。AAAは、陽電子放出断層撮影(PET)および単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)画像診断用の放射性医薬品のリーダーとしてのレガシーを有しています。詳細については、https://www.adacap.comをご覧ください。

ノバルティスについて

ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者に届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com

以上

ノバルティスの[177Lu]Lu-PSMA-617、進行性PSMA陽性転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療のための初の標的放射性リガンド療法としてFDA承認取得(PDF 0.3 MB)

参考文献

  1. Pluvicto [prescribing information]. Millburn, NJ: Advanced Accelerator Applications USA, Inc.; 2022.
  2. Locametz [prescribing information]. Millburn, NJ: Advanced Accelerator Applications USA, Inc.; 2022.
  3. SEER. Cancer stat facts: prostate cancer April 2021. [https://seer.cancer.gov/statfacts/html/prost.html]
  4. Hupe MC, Philippi C, Roth D, et al. Expression of prostate-specific membrane antigen (PSMA) on biopsies is an independent risk stratifier of prostate cancer patients at time of initial diagnosis. Front Oncol 2018;8:623.
  5. Bostwick DG, Pacelli A, Blute M, et al. Prostate specific membrane antigen expression in prostatic intraepithelial neoplasia and adenocarcinoma: a study of 184 cases. Cancer 1998;82(11):2256–61
  6. Pomykala KL, Czernin J, Grogan TR, et al. Total-body 68Ga-PSMA-11 PET/CT for bone metastasis detection in prostate cancer patients: potential impact on bone scan guidelines. J Nucl Med 2020;61(3):405–11
  7. Sant GR, Knopf KB, Albala DM. Live-single-cell phenotypic cancer biomarkers-future role in precision oncology? NPJ Precision Oncology 2017;1(1):21
  8. Minner S, Wittmer C, Graefen M, et al. High level PSMA expression is associated with early PSA recurrence in surgically treated prostate cancer. Prostate 2011;71(3):281–8
  9. Hope TA, Aggarwal R, Chee B, et al. Impact of 68Ga-PSMA-11 PET on management in patients with biochemically recurrent prostate cancer. J Nucl Med 2017;58(12):1956–61
  10. Hofman MS, Violet J, Hicks RJ et al. [177Lu]-PSMA-617 radionuclide treatment in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer (LuPSMA trial): a single-centre, single-arm, phase 2.
  11. American Cancer Society. Deaths from prostate cancer. ACS website. Available online: https://www.cancer.org/cancer/prostate-cancer/about/key-statistics.html. Last accessed November 2021.
  12. Sung H, Ferlay J, Siegel RL, Sung H, et al. Global cancer statistics 2020: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-249. doi:10.3322/caac.21660.

免責事項

本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。