Jun 17, 2022

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年6月6日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。本適応症は日本では未承認です。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。

  • 分子標的療法である「タフィンラー®」「メキニスト®」併用療法は、化学療法(11%)と比較して47%の奏効率(ORR)を示し、進行または死亡リスクを69%低減。これは、初回の全身治療を必要とするBRAF V600変異陽性低悪性度神経膠腫(LGG)の1~17歳の患者において統計学的に有意な有効性の改善1
  • 「タフィンラー®」「メキニスト®」併用療法は、経口投与することができ、また生活の質を改善できる利点を有するため、有効性と利便性のより高い選択肢を必要とする小児脳腫瘍患者に対する新たな標準治療となる可能性を示唆1
  • 今回の結果は、複数のBRAF V600変異陽性固形腫瘍に対して示されている「タフィンラー®」「メキニスト®」併用療法の有効性と安全性データに新たなエビデンスを追加
  • 米国臨床腫瘍学会(ASCO)の公式記者会見で紹介された本データは、今後の規制当局への申請基盤に

2022年6月6日、スイス・バーゼル発—ノバルティスは本日、「タフィンラー®」(一般名称:ダブラフェニブ、以下「タフィンラー」)、「メキニスト®」(一般名称:トラメチニブ、以下「メキニスト」)の併用療法が初回の全身治療を必要とする1~17歳のBRAF V600変異陽性低悪性度小児神経膠腫(pLGG)患者において、現在の標準化学療法と比較して統計学的に有意に有効性を改善したことを発表しました1。この試験での奏効率(ORR)は化学療法群の患者で11%(信頼区間(CI):3-25%)であったのに対し、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法群の患者で47%(CI:35-59%)と統計学的に有意な結果となりました (p<0.001)。この試験では、化学療法よりも投与が簡便な「タフィンラー」「メキニスト」併用療法の新しい液剤が使用されました。このデータは、2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会での公式記者会見および口頭発表の演題の一つとして取り上げられる予定です(抄録#LBA2002)。

カナダのトロント、 The Hospital for Sick Children (SickKids)名誉シニア・アソシエート・サイエンティストであるEric Bouffet氏(MD,FRCPC)は「これらの結果は、ダブラフェニブとトラメチニブの併用がBRAF V600変異陽性低悪性度神経膠腫の小児並びに青年患者において化学療法を上回る結果を示しています。」と述べ、「この研究は、低悪性度神経膠腫患者に対してBRAFのような遺伝子変異の検査を実施することの重要性を示しています。」と続けました。

LGGは小児脳腫瘍の中で発生頻度が最も高く、pLGGの15%~20%にBRAF V600変異が認められます2,5。現在、標準化学療法による転帰は不良で、治療に関して大きな負担が伴います6

第II/III相臨床試験の結果から、追跡調査期間中央値18.9カ月の時点で、無増悪生存期間(PFS)の中央値は、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法群で20.1カ月(CI:12.8カ月~推定不能)、化学療法群で7.4カ月(CI:3.6~11.8カ月)であることが示されました(ハザード比=0.31[CI:0.17~0.55][p<0.001])1。また、腫瘍の縮小または安定を維持した患者の割合は、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法群の患者で86%(n=73;CI:76%~93%)、化学療法群の患者で46%(n=37;CI:30%~63%)でした。1年間の追跡調査後、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法群のほぼすべての患者(89%)で、ベースラインに比べて腫瘍サイズが縮小したのに対し、化学療法群では70%でした。生活の質の解析結果は、すべての時点で化学療法より「タフィンラー」「メキニスト」併用療法の方が良好でした1

ノバルティスのExecutive Vice Presidentであり、Oncology & Hematology Development のGlobal Head であるJeff Legosは次のように述べています。「これらの若年患者さんとそのご家族におかれては、BRAF V600変異陽性低悪性度神経膠腫には神経障害のリスクがあること、また現在の標準治療は静脈内投与であり、がん治療施設や病院へ高い頻度で受診を必要とするため、治療の負担が非常に大きくなります。この状況下で、『タフィンラー』『メキニスト』併用療法は、良好な有効性を示しました。これらの小児患者に、より有効かつ、より簡便に投与できる経口液剤の治療選択肢をできるだけ早く届けられるよう、保健当局と協力して取り組んでいきます。」 

「タフィンラー」「メキニスト」併用療法の安全性プロファイルは、これまでの試験で観察された安全性プロファイルと概ね一致しました。安全性の評価では、「タフィンラー」「メキニスト」併用療法群の患者(n=73)において、化学療法群の患者(n=33)よりも、グレード3以上の有害事象(AE;94%に対して47%)、並びにAEによる中止(18%に対して4%)が低く1、最も発現頻度の高かったAEは、発熱、頭痛および嘔吐でした1

この試験の別の単群コホートでは再発または難治性のBRAF V600変異陽性高悪性度神経膠腫(HGG)の小児患者に対する「タフィンラー」「メキニスト」併用療法の有効性並びに安全性が評価されました。その結果、独立評価による有効性は、ORR 56.1%[CI:39.7%-71.5%]であり、また安全性は概ねこれまでと一貫した結果が示されました4。これらのデータは、2022年ASCO年次総会でのポスターディスカッションで発表されました(抄録#2009)。

「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、全身治療を必要とするBRAF V600E変異を有する1歳以上のLGG小児患者の治療薬として、米国食品医薬品局から画期的治療薬に指定されました。

TADPOLE試験について

この国際共同第II/III相、多施設共同、非盲検臨床試験では、1~17歳のBRAF V600変異陽性 LGG(n=110)または再発または難治性のHGG(n=41)の患者を評価しています1。「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、新規の液剤として、またはカプセル剤および錠剤として、それぞれ経口投与します。両コホートの主要評価項目は奏効率です。副次評価項目は、奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間およびその他の評価項目でした1

小児神経膠腫について

神経膠腫は、最も多い小児中枢神経系腫瘍で、小児脳腫瘍全体の約半分を占めています5,7,8。神経膠腫は、低悪性度(グレード1および2)または高悪性度(グレード3および4)いずれかに分類されます7

BRAF V600E変異陽性の小児低悪性度神経膠腫は、生存転帰(OS/PFS)の不良と関連し、pLGGの約15%~20%に認められます2,3。BRAF変異はすべての年齢のHGG患者の約3%~7%に認められます9,10

BRAF変異は、様々な固形腫瘍においてがん増殖を促す因子として同定されていて、多くの場合に治療選択肢が限られています11,12

「タフィンラー」「メキニスト」併用療法について

BRAF/MEK阻害研究における世界的な分子標的療法の先駆的治療薬として患者さんに届けられた「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、様々な種類のがんの増殖に関与するBRAFおよびMEKキナーゼに関連するシグナルを阻害して腫瘍の増殖を抑制する可能性があります11-15。「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は、実施中および完了した20以上の試験で6,000例以上のBRAF陽性患者を対象に検討され、世界中で20万例以上の患者に処方されています15

「タフィンラー」「メキニスト」併用療法は現在、LGGまたはHGGの小児患者に対する治療法として承認されていません。これらの結果をもとに、世界各国の保健当局と薬事に関する議論が進行する予定です。

ノバルティスについて

ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者に届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com

以上

ノバルティス、「タフィンラー®」と「メキニスト®」の併用療法がBRAF V600変異陽性低悪性度神経膠腫の小児患者における第II/III相臨床試験で良好な有効性を示す(PDF 405KB) 

参考文献

  1. Bouffet, E MD. Primary analysis of a phase II trial of dabrafenib plus trametinib (dab + tram) in BRAF V600–mutant pediatric low-grade glioma (pLGG). 2022 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting. Abstract #LBA2002.
  2. Lassaletta A, et al. J Clin Oncol. 2017;35:2934-2941
  3. Mistry M, et al. J Clin Oncol. 2015;33:1015-1022
  4. Hargrave, D MD. Dabrafenib + trametinib (dab + tram) in relapsed/refractory (r/r) BRAF V600–mutant pediatric high-grade glioma (pHGG): Primary analysis of a phase II trial. 2022 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting. Abstract #2009.
  5. Ostrom QT, et al. Neuro Oncol. 2021;23(12 suppl 2):iii1-iii105
  6. Oberheim Bush NA, Chang S. Treatment Strategies for Low-Grade Glioma in Adults. J Oncol Pract. 2016 Dec;12(12):1235-1241. doi: 10.1200/JOP.2016.018622. PMID: 27943684.
  7. ESMO/Anticancer Fund. Glioma Guide for Patients
  8. Louis DN, et al. Acta Neuropathol. 2016;131:803-82
  9. Ballester LY, Fuller GN, Powell SZ, Sulman EP, Patel KP, Luthra R, et al. Retrospective analysis of molecular and immunohistochemical characterization of 381 primary brain tumors. J Neuropathol Exp Neurol. 2017 Mar 1;76(3):179-88
  10. Schindler G, Capper D, Meyer J, Janzarik W, Omran H, Herold-Mende C, et al. Analysis of BRAF V600E mutation 
    in 1,320 nervous system tumors reveals high mutation frequencies in pleomorphic xanthoastrocytoma, 
    ganglioglioma and extra-cerebellar pilocytic astrocytoma. Acta Neuropathol. 2011 Mar;121(3):397-405
  11. Turski ML, et al. Mol Cancer Ther. 2016;15:533-547
  12. Pratilas C, et al. Curr Top Microbiol Immunol. 2012;355:82-98
  13. Tafinlar [prescribing information]. East Hanover, NJ: Novartis Pharmaceuticals Corp; 2022.
  14. Mekinist [prescribing information]. East Hanover, NJ: Novartis Pharmaceuticals Corp; 2022.
  15. Data on file.

免責事項

本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。