"美味しい"を個々に調整

"美味しい"を個々に調整

"美味しい"を個々に調整


味覚は一人ひとり異なる。さらに、抗がん剤の副作用で生じる味覚障害の内容、度合いも「百人いれば百通りある」と、桑原さんは言う。メタリックな味がしてほとんどの味がわからなくなる人もいれば、甘みを感じない人、甘みと塩味のバランスが微妙にずれている人など、さまざまだ。
そのため、「食事が美味しくない」「味覚が変」などと訴えた入院患者さんの食事は、その人にとって「美味しい」と感じられる味にするために、こまめに病棟を訪問し、患者さんに聞きながら個々に調整していく。

美味しいを個々に調整

「特定の味が強く感じられる場合、『2分の1にカットしましょう』というマニュアルはあります。それでもまだ食べられない場合、その先は、『薄いのか、強いのか、なぜ食べづらいのか』など聞き続けて、調整を積み重ねるしかないんです。統計を取れば『この薬を使えば、こういう味覚障害が生じる』というものがあるだろうと思っていましたが、調べていくと、個々に対応することが最も適切であることがわかりました」

最近では「うま味が感じられなくなる」人が多いという傾向はわかってきた。
「美味しいおすましでも、出汁の味を一切感じられず、塩と醤油の味だけでは美味しくありませんよね。そういう感覚で食事をされている人が、がん患者さんのなかには結構いらっしゃるのです。ですから、うま味をどう強化したら、美味しく感じられるようになるのか、研究しているところです。それがわかると、患者さんは以前よりも楽に美味しく食べられるようになると思います」

とはいえ、必ずしも「口から食べ続けるべき」というわけではない。水を飲んでも嘔吐するほど気持ちが悪い時期に無理して口から食べる必要はなく、静脈栄養も必要な治療だ。
「少し気分が良くなったときに負担にならないものを食べておくことは有益ですし、2週間ほど静脈栄養だけという状態だと腸管免疫は下がりますが、1食、あるいは1日食事を摂れなかっただけで一気に下がることはありません。『食べねばならない』とあまりに思いつめるとストレスになり、かえって免疫を下げるので、自然体で考えてほしいですね」


Source URL: https://www.novartis.com/jp-ja/individually-adjust-delicious

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