社会に出られない1割の子

社会に出られない1割の子

社会に出られない1割の子


がんの子どもを守る会に寄せられる相談は、以前は「治療中」「治療終了後」「お子さんを亡くした方」がちょうど3分の1ずつという内訳だった。ところが最近では、治療終了後の相談が増えている。

「誤解をまねく言い方かもしれませんが、ご家族にとって治療中はある意味恵まれているんです。同じ病気のお子さんを持つ親が身近にいますし、看護師さんや先生にもすぐに相談できます。ところが、いざ退院すると、病気のことを何も知らない人たちの輪の中に入って生活しなければなりません。たとえば、復学すると、学校の先生も小児がんのお子さんを生徒に持つのが初めてで心配しすぎたり、逆に『えこひいきになるので、他の生徒と同じようにするしかできません』と頑なな態度を取られたり。一からというよりゼロから説明してもわかってもらえないかもしれない相手とコミュニケーションを取っていかなければならないわけです」

また、晩期合併症という問題もある。
「治療成績が向上するにつれて、命は救われたけれど、晩期合併症による生活のしづらさを抱えながら暮らしている方もいます。気圧の変化で倦怠感を生じたり、体温調節が利かなかったり、体調が悪いにもかかわらず傍から見ればサボっているようにしか見えないということも。薬を飲み続けなければいけないのに身体障害者手帳の給付を受ける枠に入りませんから、経済的な負担も少なくありません」

一方で、身体的には問題なくても、入院生活が長く、学校生活をほとんど経験していないために、社会性が身につきにくく、コミュニケーションが不得意で社会になじめない、という小児がん経験者もいるという。
「幼少期に小児がんに罹患した子が皆、そうなるわけではありません。むしろごく少数派なのですが、どうしても社会に一歩踏み出せないという子たちがいます。仕方のないことですが、痛いこと、辛いこと、悲しいこと、寂しいことをさせないように周りの大人たちが先回りしてしまうので、お子さん自身が『してくれて当たり前。言わないでもわかってくれる、気遣ってくれる』という状態に慣れてしまうんですよね。そうすると、ちょっとしたことで傷つきやすかったり、怒られることに慣れていなかったり、自分で物事を決めることが不得意になったりと、社会に出ることが億劫になってしまうのです」

社会に出られない1割の子

 がんの子どもを守る会では、「自立・自律」をキーワードの一つとして支援を行っている。そのなかで大切にしているのは、「自分自身の言葉で考える力をつけていく」こと。日記をつけたり、今日の自分の点数をつけたり、今日あった良いことを毎日書いたりしながら、自分のことを自分で考える習慣を身につけてもらっている。


Source URL: https://www.novartis.com/jp-ja/10-children-who-cannot-appear-society

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