その人らしく生きられるようサポート 震災の前も後も仕事のスタンスは変わらない

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その人らしく生きられるようサポート
震災の前も後も仕事のスタンスは変わらない


震災当日、家に帰った北村さんがまず行ったのは、部屋の中で怯えているであろう猫を探し出すことだった。「私たち夫婦にとって、猫は子どものような存在なので」。電気がつかないなか、携帯電話のライトをつけて、一時間近く、部屋のなかを探し回った。

今回の震災で、北村さんにとって最も気がかりだったのは、「やっぱり家族の安否だった」という。震災当日も携帯電話のメールが通じていたため、家族とは連絡が取れていた。夜には、両親と電話で話し、夫の両親の安否も確認できた。

ただ、津波で親戚を亡くした。「一番衝撃を受けたのは、『遺体が上がった』と連絡をもらった時でした。『え?』と言ったきり、固まりました」

One worldプロジェクトは、現在も継続的に行われている。これまでに1700点以上のカツラ、下着が寄せられ、事務局を経由して北村さんのもとに届き、被災地の病院に配られている。これまでに40人ほどの患者には、直接、届けた。

「カツラをかぶった瞬間、表情がぱーっと明るくなるんです。元気になって前に進む人が見たくて、私はこの仕事をやっているんですよね」

東北大学病院薬剤師 その人らしく生きられるようサポート 震災の前も後も仕事のスタンスは変わらない

「患者さんにも家族があるし、自分自身も“がん患者の家族”になったことがある」。気持ちがわかるからこそ、「みんなが普通の生活を送ることができるように、なるべく手伝いたい」と思っている。

「病気も含めて、その人」と北村さんは言う。「みんな、どこかしら壊れているし、そのすべてが個性。そのなかでその人らしく生きてほしい。薬剤師は、患者さんをサポートするのが仕事。仕事に対するスタンスは、震災の前も後も変わりません」

ただ唯一、変わったことがあるとすれば、「なるべく残業をしないで帰ること」。家で待つ臆病な猫が心配だからだ。

(2011年12月)


Source URL: https://www.novartis.com/jp-ja/supporting-people-live-like-person

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